◯『絵本風俗往来』中編 菊池貴一郎(四世広重)著 東陽堂 明治三十八年(1905)十二月刊
(国立国会図書館デジタルコレクション)
〝六月 笹団子(32/133コマ)
笹団子といふものは天王祭りに製するものなり、浅草御蔵なる天王祭りの笹団子有名なり、御蔵前なる
天王宮のことを団子天王と呼びしは、天王宮御仮屋にまします間、御仮屋に多くの笹団子を供へられ笹
団子にて、御輿の埋むる程なるより、団子天王と唱へたり、扨(さて)笹団子は清き青竹の葉繁りし枝に、
白紅黄色なる新粉餅を、恰も花の開きし如くに練り付けたるなり、此を天王宮へ備へ奉り、其の下りた
るを戴き、諸病あるものに煎じて湯を呑ましむる時は、病に勝つの力を添へるとて、氏子に外なる人々
までも拝戴(いただく)なり、是笹団子をいと多く供ふる所なり、此の他中橋南伝馬町なる牛頭天王宮に
も笹団子の神供あり、是は氏子毎戸より各自手製にして、天王宮御仮屋にまします御前(みまへ)へ捧げ
奉り、其の下りたるを戴くなり、笹団子は尤もうつくしき物なり〟