◯『絵そらごと』〔燕石〕⑥271(石野広通著・寛政十二年以前稿成る)
〝(西行法師曰く)拙僧も諸国修行いたした故、絵には、尻引からげ、ふろしきづゝみをせおひて、今時
の願人坊主、鉢たゝきの有様、かやうにかゝねば諸国修行の体も見へず、歌よむとても其心ばせ也、道
のべの清水ながるゝ柳陰しばしとてこそ立どまりつれ、とよめるも、遁世者の物に着せず、桑下(サウカ)
にも三宿せずとて、木の下にもさのみ夜をかさねてはとまらぬを、此柳陰の流水の優艶なるに、しばし
立どまりたる風流の雅情こそおもしろけれ、誠に西行の歌なるべし〟
〈いわゆる「遊行柳」。西行は木陰にたたずんで「道のべの清水ながるゝ柳陰しばしとてこそ立どまりつれ」と詠んだ。
他に、西行の絵としては、笠などの旅装をわきに置いて富士を眺める「富士見西行」が有名〉