◯『絵そらごと』〔燕石〕⑥269(石野広通著・寛政十二年以前稿成る)
〝私は吉田の少将の妾はな子と申ものなるが、かたみの扇を持まして物くるはしかりしおり、れいのはん
女の扇は候といはれたばかり、はん女といふ名になりました、はん女といふは、もろこしの班婕妤(ハ
ンセウヂヨ)といへる女衆の、寵愛をとろへたるを、秋の扇のすてらるゝにたとへたる事を、私名はおはん
ともいはぬに、いな事にて名となり、梅若のおふくろは、是も吉田の少将といへるよりの事歟、何やら
わりかせぬ〟
〈狂女物の能「班女」に取材した絵。扇は笹と並んで物狂い(狂女)に必須の見立て道具か〉