◯『嬉遊笑覧』巻三「書画」(喜多村筠庭信節著・文政十三年(1830)自序)
〝笑ひゑ、古くはおそくづの絵といひたり。〔著聞集〕に鳥羽僧正の許に絵かく侍法師あり。それが絵の
失を難陳する処、僧正は法師が絵かたはらいたしといはれけるを、少も事とせず、さも候はず、ふるき
上手どものかきて候おそくづの絵などを御覧候へ、その物の寸法は分に過て大に書て候事、いかでか実
にはさは候べき云々、おそはたはれたる事、くづは屑なるべし、陽物をいふに似たり。古き絵の伝はれ
る物は〔小柴垣〕〔ふくろ法師〕などの外には、いまだ見及ばず。十二枚あるもの往々あるは、鎧櫃に
収めたる物とへいり、又衣櫃に納ることもあり。