◯『絵本風俗往来』上編 菊池貴一郎(四世広重)著 東陽堂 明治三十八年(1905)十二月刊
(国立国会図書館デジタルコレクション)(36/98コマ)
〝苗売り
蜜柑箱の如き箱を糸立莚にて四方を包み、三ッ重ね、大中小を天秤に前後して肩にかき、田舎めきたる
声して「朝顔の苗や、夕顔の苗のヲない、蜀黍(とうもろこし)の苗(ない)やア、へちまの苗、茄子の苗
や唐辛の苗、お白いの苗や黄瓜(へちま)の苗、瓢箪の苗や冬瓜の苗」と、看板に偽りあらぬ手拭ひのと
うなすかぶりは、此の頃より日々売りあるく、日本橋近傍は全く畑といふものを知らざる男女の児童な
るまゝ、代の貴賤をいはず買い得て、植木鉢に植え付けて、水道の水の肥やし、末は塵溜(はきだめ)へ
年貢を納むるを常とす〟