◯『絵本風俗往来』上編 菊池貴一郎(四世広重)著 東陽堂 明治三十八年(1905)十二月刊
(国立国会図書館デジタルコレクション)(62/98コマ)
〝六月 蟋蟀(きりぎりす)売
江戸の虫売は荷の作りも涼し気に、虫籠も品よく美しき種々をつるし、虫もすずむし・まつ虫・轡虫・
かんたん・草し(ひ)ばり・かじか・蛍などの種々を商ふ、また蟋蟀売は近在の者、己と虫を捕へて江戸
に持ち出て売りあるく者にて、虫籠等も粗末の出来のみにして、荷なふ所の籠も極めて粗製なり、虫も
種類少なく、蟋蟀及びくつはむし位なり、然るに代価は江戸の虫売りよりは余程安価なるより、よくう
れるなり、虫の出初(でぞめ)は六月上旬より七月盆前迄は盛んに売れしが、江戸の風俗にて、盆には皆
飼ひ置きし虫を放つ、よりて盆以後売れ口少なし〟