◯「草絵考」(『此花』第二号 大正元年(1912)十一月刊)
(国立国会図書館デジタルコレクション)(10/15コマ)
〝草絵とは草黄の二彩色にて摺りたる浮世絵にしえ、紅絵の一種に属し、所謂彩色中の異品なり、『日本
絵類考』に
緑青絵は緑青の彩色一遍摺の浮世絵をいふ、宝暦の頃行はれたものにて 今世に存する甚だ稀なり
とある。緑青絵は即ち草絵の事なるべく、緑青の彩色一遍摺とあるは、黄色の褪めたるものを見てしか
誤解せしものなるべし、かく草絵は所謂異品なるが故か頗る世に稀にして、其価も紅絵の上に出づ、画
工は殆ど鳥居の一家に限られ、稀に奥村のものありと聞けど未だ見ず、茲に載する所は鳥居二代清倍の
筆にして、市村亀蔵が猪早太に扮せる図を模刻せしものなり〟
◯『浮世絵の諸派』上下(原栄 弘学館書店 大正五年(1916)刊)
(国立国会図書館デジタルコレクション)(上105/110コマ)
〝草絵
これは草、紅の二色摺版画であるけれども、やはり草色が人の目を引くから、この名が出来たらしい。
画工は殆んど鳥居一家に限られて居るあが、偶には奥村派のものもあるとのことである。『此花』誌上
島居二代清倍筆で市村亀蔵が猪早太に扮した図を載せて居る〟