◯『稗史提要藁本』(漣水散人編・天保年間成立)
(延享元年(1744)刊の草双紙の時評)
〝赤表紙一変して黒表紙となる。黒表紙に蘇木(スオフ)、或は黄色の張外題にて、其としの甲乙十二支杯、
画・年号なし。此黒表紙の起りは、戯場の画本より出たり。黒表紙芝居絵本は、延享元甲子、中村座
(石+面(サザレイシ)ルビ)末広源氏と云、市村座にて七種(生+若)曽我、両座共々是迄の絵本より大方
に出せし也。然共わづかに一両年にしてやみぬ。是狂言本廃たれて、如斯なりしものと見ゆ〟
〈中村座の「(石+面(サザレイシ)ルビ)末広源氏」および市村座の「七種(生+若(ワカヤギ))曽我」は、ともに寛保四年
(1744)正月の興行。黒本の黒表紙は芝居絵本の黒表紙を踏襲したというのである〉
◯『稗史億説年代記』(式亭三馬作・享和二年(1802))〔「日本名著全集」『黄表紙二十五種』所収〕
〝黒本 黒表紙に青赤の外題をはりて黒本と称す。外題標題の紙を俗に色紙短冊といひはじむ〟