◯『江戸名物百題狂歌集』文々舎蟹子丸撰 岳亭画(江戸後期刊)
(ARC古典籍ポータルデータベース画像)〈刊年未詳。選者葛飾蟹子丸は天保八年(1837)没〉
〝蔵前通
いく棟も立つゞきたる蔵まへにあらうち団子ひさぐ商人
札さしの秋は世話しく新米の入るも三五の月のくらまへ
山のなきむさし野も今くら前に俵の峯のつゞくきみが代
米俵算木につみし辻むかふ易者も出るくら前通り
ほとゝぎす待人多きくら前におとしてうれし玉の一声
口上につれてあふむの言(こと)さやく唐渡りみよと呼花鳥茶や
陸奥の名もなつかしき塩かまを御所おこしにもそへてうりぬる
にえ立し釜にあられの音をそへて時雨の色も立松の尾
祇園会のもゆるあつさの蔵前に淡雪茶やのあるはいぶかし
よし原へみこしをすゆる客人も天王橋をわたるはや駕
浅草のこゝが目貫と大太刀をぬく手も長井兵介の店
もとめんと寄来る人のさゞ波や志賀の都の御所おこしをば
極らくのぼさつの多き蔵まへになどゑん王のまして名たかき(画賛)
〈米俵算木積 易者 ほとゝぎす 花鳥茶屋 御所おこし 淡雪茶屋 長井兵助(居合い抜き・歯磨き) 天王橋
早駕籠(茅町江戸勘) 閻魔堂〉