◯『江戸名物百題狂歌集』文々舎蟹子丸撰 岳亭画(江戸後期刊)
(ARC古典籍ポータルデータベース画像)〈選者葛飾蟹子丸は天保八年(1837)没〉
〝五百羅漢
作りなす工みが智恵の海よりも生れ出たる栄螺堂かな(画賛)
似た顔にあふとおもえば先に見し人がまはりて出る羅漢堂
親に似た顔と噂の耳こすりすれば羅かんの嚔(くさめ)するなり
生くさき僧は住ねどらかん寺の庭にさゞえの堂の名だかき
すゞしさは羅かん詣のかへさ道秋によく似た月のおもかげ
さゞえ堂立る羅漢のつむじ風見るまにうづを巻てのぼれり
えんま王酔ひたる顔のみゆれども酒は門よりいれぬ羅かん寺
御仏のはくもひかりて羅漢寺にものいはぬ色も耳こすりしつ
竪川へのぼる茶ふねの乗合も五百らかんにゆくあたま数
葛飾や五百らかんのさゞえ堂尊きそこの深さしられず
〈羅漢寺 栄螺(さゞえ)堂 茶ふね(うろうろ舟)〉