◯『神事行燈』二編(歌川国芳画・文政十二年(1829)刊)
(花笠文京序)
〝安永のむかし/\、狂句の種を蒔しより、以来川柳(かはやなぎ)の一株、世々の風になびき、年々に
繁茂する事夥し、前に浪華のあし国それが図を造りて狂画とよぶ、今また江戸の国よし句意を採て筆
を揮ふ、故(ふる)くは鳥羽僧正の写意を和げて色を含ませ、近くは九徳斎が草画に准(なら)ひて、当
世ぶりを穿つもの也、読むにあく事なく、笑はずといふ事なし、所謂戯場(しばゐ)の道化師の類にし
て、無声の物真似、有声の滑稽、句中の可笑(をかしみ)、筆意の働き、人情世態を尽すに至りては、
腹筋を不◎(よらざる)はなかるべし、噫狂句の手強(てづよき)に余情を画くあは、龍に翼を添へたる
に斉(ひと)し、予其席に在て速に蛇足の緒言を加ふ〟