◯「京阪の錦絵」久保田世音著(『錦絵』第五号 大正六年(1917)八月刊)
(国立国会図書館デジタルコレクション) (刊年)は本HPの注記
「刷り込み彩色法」による表紙を有する上方絵本〈「刷り込み彩色法」は合羽摺のこと〉
『絵本美奈能川』 西川祐信画 (享保18年(1733)刊)
『絵本都草紙』 西川祐信画 (延享3年(1746)刊)
『絵本十寸鏡』 西川祐信画 (延享5年(1748)刊)
『絵本筆津花』 西川祐信画 (延享3年(1746)刊)
『絵本勇者鑑』 西川祐信画 (元文3年(1738)刊)
『絵本池の心』(清水の池後編)画工 西川祐信画(元文4年(1739)刊)
『判字物智恵袋絵尽』 西川氏筆 〈未詳〉
『浮連大尽七福遊』 西川氏筆 〈未詳〉
『道化麁相づくし』 西川氏筆 〈〔国書DB〕『粗想尽』西川某画か〉
『判字物慰草絵』 西川氏筆 〈未詳〉
『余所絵かゞ見』 西川氏筆 〈『絵本余所絵鑑』西川氏筆 刊年未詳。謎かけ本〉
『瓢軽綟理草』 西川祐尹筆 〈未詳〉
『絵本氷面鏡』 西川祐尹筆 (宝暦5年(1755)刊)
『綟謎龍田山絵尽』 西川祐肖画 〈〔国書DB〕『綟謎竜田山』西川祐肖画 刊年未詳〉
『稚子曽我双紙鏡』 石川清信筆 〈未詳〉
『怪談薄化粧』 岡山繁信筆 〈未詳〉
『鵺出生花軍ゑづくし』岡山繁信筆 〈未詳〉
『達磨比翼争』 岡山氏 京都草紙所 みのや平兵衛板〈〔国書DB〕岡山繁信『諸鳥比翼争』か〉
『絵本淀之流』 長谷川光信筆 〈未詳〉
『富貴鼠嫁入屋絵尽』 長谷川光信筆 〈未詳〉
『ねずみのよみ入絵尽』長谷川筆 〈未詳〉
『画本国見山』 画工寺井重房 (宝暦7年(1757)刊)
『妖物恋敵神輿原』 寺井氏筆 〈未詳〉
『風流御傘軍絵尽』 中沢氏作 〈未詳〉
『琉球仁東入絵尽』 中沢氏作 〈未詳〉
『源平箙短冊絵づくし』中沢氏図 〈未詳〉
『四時花合戦』 中沢氏作 大坂天神橋筋のふ人橋 正本屋平兵衛板
その他、祐信風のものや無署名のもので「刷り込み彩色法」の表紙付絵本を出版した版元
大坂ふしみ両がへ町天神橋筋 糸屋市兵衛板
大阪みだう筋米屋町 正本や茂吉板
大阪船町 天満屋 玉水源二郎
大阪かごや町筋三丁目 京屋清右衛門
祇園新地すへよし町 福居平右衛門板(京都)
八文字屋八左衛門板(京都)
〝以上列挙したものは何れも黄、緑、赤、或いは朱土、藍などを刷込んでゐるが、所々につり糸のあとが
見えるものがあるので型紙を用ひた事が判明するのである。前記の光信の「ねずみのよめ入」と、中沢
氏の「琉球仁東入」の二つには珍らしく雲母(きら)が用ひられてゐる 当時琉球人の来聘したのは享保
二年十一月と、寛延元年十二月であるが、此草紙の出来たのは後者の後と考えれられる。此に由り手法
は別問題として色刷りのものが早く京阪地方にあつたことは争はれない事実である。但しそれが一枚絵
で無いのは聊か物足りない感がする、聞く処によると大阪の永田有翠氏は祐信の一枚絵を珍蔵せられゐ
るそうである。宝永八年の作であるそうな、機会があつたら一見を請ひたいと思つてゐる〟
△『増訂浮世絵』p198(藤懸静也著・雄山閣・昭和二十一年(1946)刊)
〝京阪の合羽摺
合羽摺とは厚い渋紙に描線や文様を切り抜いて、刷毛で上から絵具を刷いたのでのである。この方法で
墨摺版画に色彩を加へたのである。この法は江戸には商売としては行はれないのであつて、長崎や上方
で行はれたのである。木版色摺と異る一種の味がある。恐らく支那からの影響によつて、その手法を実
用に使ふに至つたのであらう。大岡春卜の有名なる明朝生動画園には、この合羽摺を用ひてゐる。その
出版が延享三年であるから、当時既にこの法の行はれたことが知られる。而してこの書は支那の書によ
つて翻刻されたものであらうと思はれるから、合羽摺の法も、それによつたのであらうか。
合羽摺はもと/\型紙によつて、絵画の上に色彩を表はすのであるから、織物に於ける染色の法と同様
である。されば京都のやうに、早く染色法の発達して所では、版刻画に色彩を施す型紙を用ゆることを
工夫するに至るべきことはあり得ることであらうと思はれる。一度この法が用ひられると、次々に工夫
を凝らして発達すべきである。合羽摺が京都に発展して、江戸に行はれなかつたことも、大いにその土
地の文化に関することが大きいのであらう。
上方の合羽摺は、細絵、大判、間判、小判等の一枚絵から、芝居番附、絵本類、節用集、上袋、おもち
や絵、双六、地図等に広く用ひられた。然し合羽摺の一枚絵としては、細絵が最も多く、次いで間判で
ある。
合羽摺の作者は少くない。その内有名なものは、岡本昌房、寺沢昌次、堀田行長、長秀、清谷等で、そ
の他、括嚢、春蝶、春貞、日本斎、長国、清安、青柳、保一、秋亭、一醉斎、春好、春友、春始、重春、
文輝、芳水、国美、芦郷、不韻斎、国花堂その他がある〟