◯『きゝのまに/\』〔未刊随筆〕⑥67(喜多村信節記・天明元年~嘉永六年記事)
〝寛政十年戊午、二月末より、品川海晏寺山内銀杏の大木を中にこめて、色々の桐油紙を覆ひ、盧遮那仏
の像を作りて観せ物とす【白毫は大銅だらひ、螺髪は蜜柑籠をならべ、指爪はすげ笠なり、合羽細工な
れば雨にぬるゝともいとはず、大さ知るべし】
戯作者芝全交、合羽大仏略縁起を作りて印行す、全交は山本藤十郎と云能狂言師なり、戯作に長し、流
行たる作多し、喜三二春町に続きて、京伝らより先輩也、此縁起抱腹すべきもの也、此人芝瓦器町に住
せり、享和のはじめ身まかる、扨この見せ物大いに評判ありて貴賤群集したり、開帳は寺の本尊にや、
忘れたり、此大仏海上よりも見えて、深川洲先より遠目鏡にて見せたり〟