浮世絵事典・い
◯『絵本風俗往来』下編 菊池貴一郎(四世広重)著 東陽堂 明治三十八年(1905)十二月刊
(国立国会図書館デジタルコレクション)(91/133コマ)
〝岩見銀山鼠取受合
岩見銀山鼠取受合と黒地に白く染めぬきし木綿、幅一尺竪五尺ばかりの幟をかつぎ、鼠が皿に盛りたる
毒薬入の食物を喰らひし所の画模様を染め出せる袢天(はんてん)を着し、小箱の内に鼠取りの薬を納め
て脇にかけて、猫の眼に変化はあれど、年中日々変はることなく市中を売り歩く者、幾人かあり、猫の
鼻と同じく己れが口を潤(しめ)さんとて、大音に「いたづら者は居ないか、居ないかな/\、いたづら
者は居ないか」など呼ばはる声にそこらに遊び居たる五、六歳なる小児は、偖(さて)は己れが悪戯を知
られて捕らはれんかと、膽を消して逃げ隠れる様は、恰も猫に出遭ひし鼠の如くなりし〟