◯『絵本風俗往来』下編 菊池貴一郎(四世広重)著 東陽堂 明治三十八年(1905)十二月刊
(国立国会図書館デジタルコレクション)(127/133コマ)
〝唐人飴ホニホロ
唐人笠といふを被り、被服も同じく此の頃唐人といふに拵へ、紙張りの馬を造り、四本の足をぶらりと
つり、馬の背に穴ありて己の両足を其の穴に入れて、馬をば己が腰に縊(くゝ)り付けて吾足にて歩くや、
馬のつりし足はぶら/\として、恰も馬の足を運べる様見へたり、己は唐人笛を吹きながら駈ける、又
笛を振りて躍るなり、偖(さて)路上程よき所を見斗(みはから)ひて立ち、唐人笛を音高く吹き鳴らす、
孩子等(こどもら)は笛の音を聞きて、ホニホロを行きて見んとて走り集まる、飴を買ふものには眼鏡を
貸して見せしむ、眼鏡は玻璃(がらす)を八ッに角を磨りて、糸を引く時は玉の廻る様作りたり、眼に当
てて見る時は八ッ乃(すなは)ち八人に見へ、玉を廻せば八人同じく廻る、飴売りは眼鏡を貸し切ると、
暫時が間、笛を吹きならし、眼鏡を見し所より二三間隔たりて、身振り可笑しく「ハッホニホロホニホ
ロ/\/\、雷(いかづち)眼(まなこ)でハッホニホロ/\/\/\、ハッ上(のぼ)るはホニホロ、ハッ
下(くだ)るはホニホロ/\/\」孩子等余念なく面白がりて飴を買ひ、見んとせざるなし〟