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☆ ほくさい しょうぞう 北斎 肖像浮世絵事典
 ◯「浮世絵漫録(一)」桑原羊次郎(『浮世絵』第十八号 大正五年(1916)十一月刊)   (国立国会図書館デジタルコレクション)   〝 北斎は酒を嗜んだ歟    確か亡友飯島半十郎氏の話にも北斎は至つて下戸の様に謂つて居たし、其著北斎伝にも然う書いてあつ    た様に思ふが、先年(明治四十二年十月十七日)正木直彦君と、小石川関口町の今は故人となつた本間耕    曹君を訪問して其所蔵幅(ふく)を拝見せし際、北斎画像と称するものがあつた。其肖像は稍(やや)丸顔    の肥(こひ)ふとつた面貌(かほ)で、結髪して羽織袴の扮装であつた、羽織の紋は丸に三つ柏である、そ    して其上の賛に曰く、      飜然不憚 少時之愆 生業不怠 性質之賢      平素愛酒 義気益堅 嗚呼叔父 流芳遐年        画賛従子北斎並書之(荷萩園主人の印あり)    ドーモ所謂北斎の肖像と此画賛と、似ても似つかぬ者であるのみならず、生業不怠とか平素愛酒と云ふ    辺も、大に北斎とは違つて居る、左すれば是は北斎の雅号を受継ぎたる橋本庄兵衛の画像を、其従子が    また北斎と云ふ事になれば、其従子は何んと云ふ男か、更に疑問が生ずる事となる、兎に角前北斎為一    老人と、此画賛の北斎とは慥かに別人であつて矢張り北斎は下戸であつたとしてよいと思ふ。    此外に一時大坂で鳴らした犬北斎も、堂々と北斎と署名したれば、北斎同名は四五名ある事になる〟    〈北斎が酒を嗜んだか否かという点からいえば、この画賛のある北斎が初代北斎の伝わる容姿(坊主頭)と異なることか     ら、「平素愛酒」とは初代北斎に対する賛とは思えない。またこの画賛者「従子北斎」については、画像の北斎の甥でこ     れまた北斎と称したらしく思われるが、よく分からない。「荷萩園主人」は「従子北斎」の別号らしいがこれまた不明〉