◯『宝暦現来集』〔続大成・別巻〕⑥36(山田桂翁著・天保二年(1832)自序)
〝女の鬢さし迚、安永年中竹にて拵へ、髭へさす事始る、其後竹にてそげなどするとて、鯨にて拵へける、
是より次第に大者となり、銀又は鼈甲などにて作りしが、寛政比より鬢を出す髪の風止みて、いま有る
所のぐるり落しとやら、扨々たぢやくの風俗流行せり、何事も皆かくのごとく、女は常の帯〆るも、唯
ひとへ結んで前もろくに合ざるやう、見苦敷事也〟
◯『世のすがた』〔未刊随筆〕⑥37(百拙老人・天保四年(1833)記)
〝女の鬢さしといふもの、安永年中は竹にて作り、其後鯨にて製し、次第に奢に長じて銀或は鼈甲にて作
りしが、其後又はりがねにて製したるもあり、それもいつとはなしにやみ、有の儘の髪にて鬢も出さず、
賤しき風俗とはなりぬ、又女子の髪の飾にかけし五色の縮緬紙は廿年前に流行せしが今は絶て見ず、又
びいとろの瓢箪かんざしも廿年前初て製し出、流行せしが、今はぎやまんのかんざし笄細密の彫あるも
の専に行はる〟