◯『巷街贅説』〔続大成・別巻〕⑨139(塵哉翁著・文政十二年(1829)自序)
(文政九年・1826)
〝流行歌、巽の里の時花也【辰巳の里は深川を云】
春 〽花の盛りにむかふ嶋、不二と筑波をかざしぐさ、すだの渡しのゆふげしき、烏もねぐらをいそぐ
頃、かねがにくひじやないかいな
夏 〽夏のゆふべは両国の、橋問につなぐすゞみ舟、きよきながれの水調子、うたいとほして三味線の、
おもしろい手じやないかいな
秋 〽あきの夜風は身にしみて、誰を松虫ねもほそく、きぬたにむすぶ小男鹿の、妻をしたふて呼子鳥、
いとしらしいじやないかいな
冬 〽雪のふる夜のすみた川、舟のさむさをこらへつゝ、しんにふたりがおきこたつ、つがひはなれぬ
都鳥、うれしいえんではないかいな〟