◯『真佐喜のかつら』〔未刊随筆〕⑧310(青葱堂冬圃著・嘉永~安政頃成立)
〝すべて絵の具の調合は、すり師の工夫にあれども、あらましは左に記す、
墨 狂歌、俳諧の摺物の墨は格別なれど、にしき絵などには、墨の折を水にひたし、是をよく摺り
こなし、ちり砂を去り、布にしめし刷へ付けてもちゆ
艶墨 漬けたる墨をよく摺り、布にて越し、水膠またはひめ糊を交へ、二度も三度も摺るなり
紅 生紅、朱紅、猶色々あるべし、生紅は真の紅ばかりなり、朱丹は是を少し交へる、また品々に
至りては紅がらを交へる
黄 摺物には雌黄、並絵にはウコンまたキハダの粉を紅をしぼりし水に合せて用ゆ
柿 タイシヤへほかの品加へ用ゆ、または紅へキヲウを交へるもあれど、大かたは紅がらへ墨をす
こし加ふなり
草 紅へ藍紙をしぼり交へしが、近頃唐藍といふ物を用るなり〟
〈唐蘭が藍摺りにつかわれたヘロリン〉