Top浮世絵文献資料館浮世絵師総覧
 
☆えどみやげ 江戸土産浮世絵事典
 ☆ 宝暦三年(1753)  ◯『絵本江戸みやげ』正編(西村重長画 宝暦三年刊)   (国書データベース)   〝絵本江戸みやげ序    武蔵野の月も家より家に入る風情 繁花日々に盛(さかん)なり 四季折々の壮観 中にも春は上野飛鳥    の花盛 三囲隅田のつみな野遊び 夏は両国橋に暑を凌ぎ 秋は愛宕の木々の月 冬は遊里の温酒に寒    さを忘れ 折にふれ時によき 其風景を絵に写して 寔(まこと)に他の国へ遣はすには能き家づと 題    して 画本江戸土産としかいふ而已(のみ)                        玉芝散人題      画工 重長 /彫工 又市〟     〝絵本江戸みやげ    むらさきの名におふ東都の壮観はいふもさらなり 中にも春は上野飛鳥の花盛り 三囲(みめぐり)隅田    の野遊び 夏は両国橋に九夏三伏の暑を忘れ 秋は愛宕の月に嘯き 冬は遊里の温酒(あたゝめざけ)に    うかれつゝ 喜見城の楽しみをなし 四季折々の栄花つくる事なし 是を絵にうつし 桜にきざみ 他    国人に見せむにはよき家づとならんと 題して絵本江戸土産としかいふ      めでたき初春    画工 重長〟    両国橋の納涼   三囲春色    隅田川の青柳  橋場の舟渡し    金龍山      聖天の景    山谷の土手   二本堤の春草    新吉原夜見せの景 浅草観音風景  浅草晩景    下谷三枚橋・上野花見のてい    上野春景    清水稲荷    不忍池      不忍池蓮      芝切通し豆蔵   芝愛宕     愛宕秋月    行人坂(奈良茶・なめし)     目黒不動    目黒瀑布    神田壁堂     日暮らしの里  飛鳥山花見の体 お装束榎の木(王子狐火)    王子岩屋     王子初午    浅茅が原総泉寺  鏡が池  ☆ 明和二年(1865)  ◯『絵本江戸土産』続編(鈴木春信画 明和二年刊)   (国書データベース)   〝絵本続江戸土産序    武蔵野の月とは往昔(むかし)の名にして 今や人家建ちつゞきて めでたき土地の賑ひ わきて上野浅    草の春の景色より吉原の雪のあしたまでを画にうつして さきに西村重長なるもの江戸みやげとなん題    し三つの巻となし 人のめをよここばしぬ 今はた是にもれたるを つたなき筆につゞりて 続江戸土    産と号(なづけ) 童児の翫びにせむと思ふ事しかり       目出たきはるの旦  画工 鈴木春信〟    (古歌や地誌を引く)    日本橋風景  萱場町薬師   鎧の渡し  永代橋  仙台河岸  新大橋  佃島風景    深川八幡・二軒茶屋 五百羅漢・本所五つ目 本所塩浜 本所木場川の筋  深川三十三間堂    亀戸天満宮  梅屋敷(臥龍梅)     浅草川風景(駒形堂・首尾の松)蔵前閻魔堂 浅草橋  見附    神田上水御茶の水  小石川伝通院     関口村    渋谷金王桜  芝高輪      堺町芝居   浅茅が原秋色       ☆ 享和元年(1801)  ◯『名歌徳三升玉垣』桜田治助作(河原崎座 顔見世狂言 享和元年十一月興行)   (一番目 市川団蔵扮する順礼の台詞)   〝江戸の名物 役者の似顔絵、知辺の方へ土産と思ひ、買ふて来た一枚絵〟   〈『歌舞伎脚本集下』(日本古典文学大系54)所収〉  ☆ 嘉永三年(1850)    ◯『絵本江戸土産』初編(一立斎広重画 松亭金水序 菊屋幸三郞板 嘉永三年刊)    (国書データベース)   〝(松亭金水の序)    絵本江戸土産の原板は 今を去ること一百年 宝暦のそのむかし 当時名高き画工にて 西村重長なる    ものゝ 手に成りし跡を逐ひて 次編は鈴木春信てふ画工の是を嗣げりとなむ その頃大に流行して     絵本の鼻祖と仰がれしも 一年祝融の災に罹り。彫板(えりいた)尽して烏有となれり 嗚呼惜哉 此書    の如き東都の繁華はかはらねど 中古の風俗を見るに足れり 然るに名所古跡といへども 多々(おほ)    星霜を経るに及びて沿革することなきにあらず 這回(こたび)頻りに思ひ起こして広重子に需め 現存    の在さまを画(ゑがゝ)せつ 再刻の時至るも 書肆金幸堂が丹誠にて 遠国他郷の褁(つと)に宜しく     新古を並べ視る時は時勢を知るの一助に庶(ちか)し 再刻なるの日余に序を請ふ 余(よ)速やかに筆を    採り その来歴を述べてもて 端書に換ゆるといふ〟〈「祝融(シュクユウ)」は火事〉       ◯『青砥物かたり』合巻(一陽斎豊国画 藤本吐蚊作 菊屋幸三郎板 嘉永年間刊 改印-村松・吉村)   (国書データベース)(3/27コマ)    (見返し 広告)   〝絵本江戸土産 初編 一立斎広重筆    這(こ)は東都に名高かかる 名勝の地を何くれとなく掲げ出して真図に写し まだ見ぬ遠国他郷の人に    その地理及び風光を見せんとてのわざなれば 江戸土産とは題しつ 去ぬる宝暦のむかし 梓に彫(え)    り つゞいて二編三編も物しにけれど 星移り 竟に祝融の災に罹りて彫板遺らず烏有となる 然るを    這般(こたび)金幸堂再び故人の意をつぎて 復興の功やうやくなりぬ 凡そ初編は大江都の東西を専ら    として 八ッ見橋の景に始まり 両国より上(か)ミ 隅田川 東西両岸の名所古跡 あるひは萩寺柳嶋    宰府の宮居梅やしき 日本(やまと)童男(をぐな)の故事による橘姫をまつりたる吾妻の森の古跡は元よ    り 五百羅漢の三匝(さゞい)堂 中川木下川坂東太郎 国府の台の風景まで漏らすことなく こゝに図    してまづ初編とはなすもの也〟    〈『絵本江戸土産』(一立斎広重筆 菊屋幸三郎(金幸堂)板)の初編は嘉永三年刊〉