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『藤岡屋日記』【ま】
☆ まちびけし 町火消し
◯『藤岡屋日記 第二巻』p179(藤岡屋由蔵・天保十二年(1841)記)
◇よ組・わ組仲直り
〝三月廿五日、神田明神境内伊勢嘉にて、よ組・わ組中直り〟
☆ まつい きくじろう 松井 菊次郎
◯『藤岡屋日記 第十四巻』p208(藤岡屋由蔵・慶応二年(1866)記)
◇独楽廻し・松井菊次郎
〝慶応二丙寅年九月
亜墨利加国持渡之道具芸名
松井菊次郎、独楽番組
一 大独楽一ッ 但、一尺八寸、目方五〆五百目
一 麻之紐 但、目方一〆七百目
一 羽子板曲独楽 天満宮当物独楽
一 万灯四方開之之中より(鶴牡丹)罷出申候 但、竪二尺、横一尺五寸
一 石橋渡り階子 但、丈四尺二寸四方
一 富突入形独楽 但、ぜんまい仕懸、丈七尺、横三尺四方
一 大独楽 此独楽二ッニ割候へば、此内より壱尺五寸娘つね罷出、所作仕候、此度新工夫
一 浦嶋太郎人形独楽 但、丈ノ(ママ)五尺、横四尺
一 閑子鳥四方ひらき 但、丈七尺、横巾二尺五寸四方
一 駕籠抜独楽 横四間半、竪一尺
一 時計独楽 丈七尺、横二尺五寸
一 刀刃渡之独楽・提灯独楽壱尺
一 後段独楽五ッ 大サ六寸五分
右芸名荒増之分、如此五坐候〟
〈次項に松井の給金が出ている〉
〝独楽廻し、浅草龍宝寺門前、茂兵衛店 松井菊次郎 三十才 七百両(一年)〟
☆ まつい げんすい 松井 源水
◯『藤岡屋日記 第二巻』p522(藤岡屋由蔵・弘化二年(1845)記)
◇上覧
〝五月二日、右大将様、橋場筋御成也 浅草観音にて、松井源水こま上覧也〟
〈「右大将様」とは徳川十二代将軍家慶〉
☆ まつもと きさぶろう 松本 喜三郎
◯『藤岡屋日記 第七巻』(藤岡屋由蔵・安政三年(1856)記)
◇浅草奥山生人形 p139
〝肥後国熊本、生人形細工人 松本喜三郎 同平十郎 太夫元 小島万兵衛
入口招き人形近江のおかね、夫より浅茅原一ツ家、水滸伝、為朝島巡り、水湖伝、粂の仙人、吉原仮宅
黛の部屋、忠臣蔵夜討、夫より仕廻が鏡山御殿場、仕合之処、都合人形七十二番、木戸銭三十二文、中
銭十六文づゝ、二ヶ所にて取、都合六十四文、中にて番付十六文、目鏡を見せ四文〟
(二月二十五日、水戸家の中間、奥山の生き人形を見物しようとして、客止めに遭い、腹立ち紛れに乱
暴して、人形を打ち壊すという騒動あり。翌日は休業、翌々二十七日より再興行)
〝(三月二十六、七日、人形を預かった家で、一ツ家姥の娘を責める声が、夜中もの凄く、張り番の若者
がうなされて肝を潰すという怪異あり)右に付、翌廿八日念仏堂和尚を相頼み人形ぇ読経上げ、一ツ家
姥娘の人形は焼捨、灰を大川へ流し候よし。是は見物の諸人、一ツ家の人形は能出来た/\と評判致し、
人の気の寄所、古狸付込み右之怪をなせし事なるべし。
右人形は向島水茶やの姥、一ッ家の姥に能似て居候とて人形之図に取度由、松本喜三郎義、姥に咄し候
処に、姥承知致し、我年寄て此世に何の望もなし、勝手次第に被致よと申に付、
喜三郎悦び早速写しに図を取、人形出来致し候処に、右姥は間もなく死し候由、右に付、一ツ家姥人形
には水茶や姥の魂入候とて大評判大入也。
右人形出来は正月十五日、初日にて百両取上げ、翌十六日も同断取上げ、其後にても七拾両ならしには
取上げ候由、尤小屋を懸候には千両も懸り候との評判、二三百両 も懸りしなるべし。
右喧嘩に付、水戸家来国許に差送られ候、落首
だんまりで口をふさいで済しても生人形がものを云たか〟
「当世見立人形」「風流人形」等 一勇斎国芳画(1856年のものが安政三年の生人形)
(「KuniyoshiProject.com」「Comic and Miscellaneous Prints Modern Select Dolls」)
◯『藤岡屋日記 第七巻』(藤岡屋由蔵・安政四年(1857)記)
◇生人形 p499
〝(四月十六日より両国回向院にて、上総国芝山観音寺の十一面観世音菩薩・仁王尊并霊宝開帳)
境内見世物之分
殺生石 膃肭臍 大眼鏡 大江忠兵衛作生人形 招天神・猿田彦其外
百面相人形 招官女子日遊小松引 花鳥亭 招うさぎ数疋有之
肥後松本喜三郎作 怪談招清玄
蒸気車 隅田小きん軽業〟
☆ まねきねこ 招き猫
◯『藤岡屋日記 第五巻』p65(藤岡屋由蔵・嘉永五年(1852)記)
◇まねき猫
〝嘉永五子年春 浅草観音猫の由来
浅草随神門内三社権現鳥居際へ老女出て、今戸焼の猫をならべて商ふ、是を丸〆猫共、招き猫共いふな
り、是は娼家・茶屋・其外音曲の席等は余多の客を招き寄候とて、是を求め信心致す也、又頼母子・取
退無尽等は壱人にて丸〆に致候とて是を信じ、又公事出入・貸借等も此猫を信ずる時は勝利となりて丸
〆に致し、又々難病の者、此猫を求め信心致し候説時は、膝行は腰が立て親の敵を討、盲人は眼が開き
目明しと致し、又は脚気症等よい/\にて歩行自由ならざる者も、此猫を信ずるがさいご忽ち両足ぴん
/\と致し、余り退屈だから昼飯に小田原迄初鰹を喰に参り候との評判にて、飛脚屋より京都へ三日限
の早飛脚を頼まれ、余多の貸銀を丸〆としたるとの風聞より、欲情の世界なれば、我も/\と福を招き
て丸〆/\。
丸〆に客も宝も招き猫浅草内でこれ矢大臣〟