ピコ通信/第7号
発行日1999年3月22日
発行化学物質問題市民研究会
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廃棄物問題市民活動センター内
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目次

  1. 所沢産のダイオキシン汚染問題をきっかけに
  2. 後期連続講座第5回・シンポジウム「どうする!日本の化学物質法制度」パネルディスカッションから
  3. 【PRTR法】政府案の問題点
  4. 連続講座第2期スケジュール
  5. 化学物質問題の動き(99年2月)
  6. 編集後記

2.後期連続講座 第5回−シンポジウム「どうなる!日本の化学物質法制度」
  パネルディスカッションから

第1期後期第5回講座(99年1月30日)のパネルディスカッションを研究会でまとめました。
パネリスト

  • 立川 涼さん(高知大学学長)
  • 浦野絋平さん(横浜国立大学工学部)
  • 大歳幸男さん(日本化学工業会)
  • 角田季美枝さん(バルディーズ研究会)
化学物質汚染の現状をどう捉えるか
浦野今までは被害が出て因果関係がはっきりしたものを規制してきた。それではモグラ叩きでおわる。化学物質の有害性を総合的にみて、トータルに減らしていくという時代になっている。潜在的に危険なものは予防的に管理する新しい法制度が必要。PRTRがそれに生かされることを期待する。
大歳皆さんの間に企業性悪説が根強い。化学工業界はあまり人前に出てこなかったが、化学物質の問題が大きくなったのでほってはおけなくなった。マスコミも問題があるデータだけをとりあげる。企業が依頼した研究結果も、企業側というレッテルを貼られる。
業界ではレスポンシブルケアという環境を考えた自主管理活動で、PRTRに自主的に取り組んでいる。目標をたてて実行し、社会に公表し、対話をはかるというシステムだ。
化学物質のハザード(有害性)データはインターネットで公開している。PRTRは曝露の情報を出す制度。両者でリスク評価をやり、リスクマネージメントをしていく。削減にも金がかかるので、効果的に減らせる方からやっていき、全体的にリスクを減らす。国際的に共同で実験をしているが、企業データだからといって信用されないのでは金をかけた意味がない。
角田バルディーズ研究会は、株主・企業人・消費者の側から企業の環境的活動を向上させようという目的でつくられた。PRTR制度は情報公開制度だとして、環境庁の委員会にも参加してきたが、やればやるほどわからないことだらけ。

日本の化学物質法制度の現状はこれでよいのか
角田様々な化学物質関連法があるが、全体としてどう機能しているのかわからない。予防原則にもとづいた法律が必要で、PRTRの一段上の化学物質安全基本法が必要と思う。企業の自発性を誘導する政策も必要。
大歳物質名をいちいちあげる方式なので、被害が出ないとひっかからない。法律はミニマム、自主的はマキシマムで上がない。法規制よりも自主的取り組みのほうがいい。化審法も世界的には、ずれた法律となっている。
浦野日本の環境行政は公害からスタートしたので、被害が出てからどう始末するかという法律。明確な被害がないと規制できないし、後追いになる。規制より事業者の自主的な排出抑制を促すのがいい。業界がちゃんとやっているとは思えないので社会的に促進する仕組みも必要だ。提言や指導、経済的誘導策で自主的活動を促進し、情報公開と、コミュニケーションを深めることが行政の役割だ。
立川満点の答えはいつまでたっても出ないが、一定の見識と姿勢があれば必要な行動はとれる。企業も政治家もいい方向へ変わってきている。一番遅れているのは学会だ。

「アジェンダ21」の課題とPRTRをどう実現するのか
大歳アジェンダ21では、化学物質のトータルな総合管理を進めることが決められた。PRTRはリスクをみるためのマクロデータをとるシステムだ。
角田アジェンダ21でもOECDの理事会勧告でも、市民の知る権利を促進するものとしてPRTRを位置づけている。日本でのパートナーシップのいい実験になると思ったが、ほんとうに市民参加が実現したかは疑問だ。
浦野私が必要だとずっと言ってきたのに、OECD勧告が出てあわてて動き出したというのは、外国から言われないと動かないという典型。何度も国際会議の場で話されていたのに情報がまったく出なかった。民主主義が未熟な段階なのに、市民合意とか透明性ということが入ってきたので環境庁もあわてた。環境庁はそれでもよくやったと思うが、通産省にリードされてしまった。
有害化学物質の総合的な基本法をつくってその中に位置づけるのが望ましかった。こまかな議論だけで全体がどうあるべきということが見えなくなっている。企業や自治体でもレベルに差がある。全体がレベルアップするようなシステムでなければいけない。
立川日本の役人はセミプロだが、アメリカなどでは長年取り組んでいる専門家がいるし、国際会議に民間の専門家をつれていく。政府間協議というのは、科学的というより政治的妥協の産物だ。
角田PRTR制度は各国で一様ではないので、日本に合った制度はなにかという議論が必要。NGOとして、望むことを盛りこんだ法案を作成した。市民の知る権利、市民参加が実現してほしい。個別事業所情報は開示請求となるが、使いづらい制度なので、アメリカなどのようにインターネットでパッととれるようにして欲しい。
大歳個別情報の公開は業界でも担当者レベルでは抵抗はないが、自主的にやらせて欲しい。企業間競争があるので出さないと不利になる。
浦野アメリカでは最初に大枠を決める時にNGOが入っている。日本では通産省と環境庁の間だけの話で進められている。スタートとしてはしかたがないが、フレキシブルで見直しができる制度、地域によって柔軟に変えられる制度がのぞましい。

市民の知る権利と参画をどう保証するのか
浦野役人は2年ぐらいで変わるし、人数が少ない。一人がたくさんかかえて夜中までやっている。勉強会をつくったり、個々人はよくやっているが、長期的視野にたって政策を行う組織になっていない。
角田環境庁のPRTR担当3人のうちふたりはからだをこわし、ひとりで寝不足で法案作成をしている。環境庁自体が弱すぎる。
浦野リスクは地域固有のもの、自治体経由で情報を集めれば、自治体のレベルもあがるし、制度が住民密着になる。情報も集めやすい。
角田情報公開法は行政情報が対象で、企業情報公開は別の議論が必要。イギリスの例だと、特定の企業では国の制度よりも先進的な情報公開が行われている。企業の自主性は必要だが、相互比較できる情報でないと困るので、全体の枠組みは必要だ。
アメリカでは、PRTRのデータを使って、NGOが環境情報として株主や消費者に提供、社会的責任投資や消費行動にいかすようにしている。
立川情報公開が必要なのは、多元的価値社会になって、役人がすべてを管理できなくなったということ。企業の自主性も、ルールの透明性やチェック機能がなくてはいけない。組織に不都合なことも出して、緊張感をもって組織運営をしていくことがいい。
大歳今のPRTRの法制化だと、行政だけで決めてしまい、欲しい情報が出ないし、企業もかけたコストが生かされない。自主的取り組みというのは、行政をあいてにするのではなく、国民に直接話をするということ。
リスクコミュニケーションは今までの日本にはない制度。今までは文句を言う人には飲ませてだまらせるということでやってきた。住民も勉強してレベルアップしていって欲しい。PRTRがうまく回れば、業界ではなく、個別工場と住民との話になっていく。
企業からは、一般市民が何がわからないのかがわからない。ただ情報が欲しいといっているだけで、行動に出ない。製品にはお客様相談窓口が書いてあり、そこに聞けば答えるのにそれすらしない。工場に窓口をつくることも必要。オープンシップデーで住民を招いても、だれも来ないということではがっかりする。積極的に言ってきて欲しい。
レスポンシブルケアは始めたばかりで、もっと輪がひろがっていけばいい。自治体に情報を配布するということも必要。
浦野レスポンシブルケアは、化学工業界以外には広がっていない。広げるには自主性だけでなく、社会的枠組みが必要。
PRTRでは製品に入っている有害物質は対象外なので、それは消費者がゴミにするところで排出される。非点源とされるそれを推計するにも、行政情報が出てこない。情報がないこともあるし、ある情報も公開されない。

最後に
立川大人は頭が固いから、子供に期待したい。
浦野学者が一番頭が固い。研究室をあげてオープンに情報交換できるような試みをしている。最後は人、いいリーダーが、役所、企業、NGOに育つかどうかで決まる。
大歳NGOを強化するには、企業でリタイアした専門知識のある人を利用すればいい。
角田話し合いの場をつくれば垣根は意外と低くなる。行政、企業の人も地域住民、消費者なのだからそれを大事にして、NGOを育てることに積極的にかかわって欲しい。

化学物質問題市民研究会
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