大歳 | アジェンダ21では、化学物質のトータルな総合管理を進めることが決められた。PRTRはリスクをみるためのマクロデータをとるシステムだ。 |
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角田 | アジェンダ21でもOECDの理事会勧告でも、市民の知る権利を促進するものとしてPRTRを位置づけている。日本でのパートナーシップのいい実験になると思ったが、ほんとうに市民参加が実現したかは疑問だ。 |
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浦野 | 私が必要だとずっと言ってきたのに、OECD勧告が出てあわてて動き出したというのは、外国から言われないと動かないという典型。何度も国際会議の場で話されていたのに情報がまったく出なかった。民主主義が未熟な段階なのに、市民合意とか透明性ということが入ってきたので環境庁もあわてた。環境庁はそれでもよくやったと思うが、通産省にリードされてしまった。
有害化学物質の総合的な基本法をつくってその中に位置づけるのが望ましかった。こまかな議論だけで全体がどうあるべきということが見えなくなっている。企業や自治体でもレベルに差がある。全体がレベルアップするようなシステムでなければいけない。 |
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立川 | 日本の役人はセミプロだが、アメリカなどでは長年取り組んでいる専門家がいるし、国際会議に民間の専門家をつれていく。政府間協議というのは、科学的というより政治的妥協の産物だ。 |
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角田 | PRTR制度は各国で一様ではないので、日本に合った制度はなにかという議論が必要。NGOとして、望むことを盛りこんだ法案を作成した。市民の知る権利、市民参加が実現してほしい。個別事業所情報は開示請求となるが、使いづらい制度なので、アメリカなどのようにインターネットでパッととれるようにして欲しい。 |
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大歳 | 個別情報の公開は業界でも担当者レベルでは抵抗はないが、自主的にやらせて欲しい。企業間競争があるので出さないと不利になる。 |
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浦野 | アメリカでは最初に大枠を決める時にNGOが入っている。日本では通産省と環境庁の間だけの話で進められている。スタートとしてはしかたがないが、フレキシブルで見直しができる制度、地域によって柔軟に変えられる制度がのぞましい。 |
浦野 | 役人は2年ぐらいで変わるし、人数が少ない。一人がたくさんかかえて夜中までやっている。勉強会をつくったり、個々人はよくやっているが、長期的視野にたって政策を行う組織になっていない。
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角田 | 環境庁のPRTR担当3人のうちふたりはからだをこわし、ひとりで寝不足で法案作成をしている。環境庁自体が弱すぎる。 |
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浦野 | リスクは地域固有のもの、自治体経由で情報を集めれば、自治体のレベルもあがるし、制度が住民密着になる。情報も集めやすい。 |
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角田 | 情報公開法は行政情報が対象で、企業情報公開は別の議論が必要。イギリスの例だと、特定の企業では国の制度よりも先進的な情報公開が行われている。企業の自主性は必要だが、相互比較できる情報でないと困るので、全体の枠組みは必要だ。
アメリカでは、PRTRのデータを使って、NGOが環境情報として株主や消費者に提供、社会的責任投資や消費行動にいかすようにしている。 |
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立川 | 情報公開が必要なのは、多元的価値社会になって、役人がすべてを管理できなくなったということ。企業の自主性も、ルールの透明性やチェック機能がなくてはいけない。組織に不都合なことも出して、緊張感をもって組織運営をしていくことがいい。 |
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大歳 | 今のPRTRの法制化だと、行政だけで決めてしまい、欲しい情報が出ないし、企業もかけたコストが生かされない。自主的取り組みというのは、行政をあいてにするのではなく、国民に直接話をするということ。
リスクコミュニケーションは今までの日本にはない制度。今までは文句を言う人には飲ませてだまらせるということでやってきた。住民も勉強してレベルアップしていって欲しい。PRTRがうまく回れば、業界ではなく、個別工場と住民との話になっていく。
企業からは、一般市民が何がわからないのかがわからない。ただ情報が欲しいといっているだけで、行動に出ない。製品にはお客様相談窓口が書いてあり、そこに聞けば答えるのにそれすらしない。工場に窓口をつくることも必要。オープンシップデーで住民を招いても、だれも来ないということではがっかりする。積極的に言ってきて欲しい。
レスポンシブルケアは始めたばかりで、もっと輪がひろがっていけばいい。自治体に情報を配布するということも必要。 |
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浦野 | レスポンシブルケアは、化学工業界以外には広がっていない。広げるには自主性だけでなく、社会的枠組みが必要。
PRTRでは製品に入っている有害物質は対象外なので、それは消費者がゴミにするところで排出される。非点源とされるそれを推計するにも、行政情報が出てこない。情報がないこともあるし、ある情報も公開されない。 |