2013年4月28日−5月10日/バーゼル、ロッテルダム、ストックホルム条約
締約国会議及び拡大合同締約国会議/概要
(3)ロッテルダム及びストックホルム条約締約国会議
本年4月28日(日)〜5月10日(金)、スイスのジュネーブで、有害な化学物質及び廃棄物に関わる重要な3つの国際条約である▼ストックホルム条約締約国会議(SC COP6)、▼バーゼル条約締約国会議(BC COP11)及び▼ロッテルダム条約締約国会議(RC COP6)、並びに▼3条約拡大合同締約国会議(ExCOPs2)が開催されたこと、及びこれら3つの条約の今までの経緯をピコ通信178号(2013年6月)で、また第2回3条約拡大合同締約国会議(ExCOPs2)と第11回バーゼル条約締約国会議(BC COP11)についてピコ通信179号(2013年7月)で紹介しました。
本稿は最終回として、IISD(*)の会議報告、会議に参加した様々なNGOsの報告、及び政府やUNEP等の発表資料を基に、第6回ロッテルダム条約締約国会議(RC COP6)及び第6回ストックホルム条約締約国会議(SC COP6)の概要を紹介します。
■第6回ロッテルダム条約締約国会議
ロッテルダム条約は正式名称を、「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約」といい、Prior Informed Consent(事前通報同意)の頭文字をとってPIC条約とも呼ばれます。その概要についてはピコ通信178号で紹介しました。
ロッテルダム条約の対象となる化学物質は附属書Vに示され、現在約40種の化学物質がリストされています。本稿ではRC COP6で付属書Vに含めることを検討された化学物質とアスベストについての議論を紹介します。
◆付属書Vに含める化学物質の検討
▼アジンホスメチル(Azinphos methyl)
- 農薬アジンホスメチル(CAS No. 86-50-0)を付属書Vにリストすることが採択された。
- 2013年8月10日に発効する。
▼ペンタBDE
- 多くの国がペンタBDEと商業混合物中のペンタBDEのリスト化を支持した。
- 議長は付属書Vにリストされるべき特定の混合物を定義する追加的なテーブルに言及しつつ、テトラBDE及びペンタBDEを含む商業的ペンタBDEに関するドラフト決議を提案し、採択された。
- 2013年8月10日に発効する。
▼オクタBDE(オクタ臭化ジフェニルエーテル商業用混合物)
- ヘクサ臭化ジフェニル・エーテル及びヘプタ臭化ジフェニル・エーテルを含んで商業的オクタ臭化ジフェニル・エーテル(BDE)を付属書Vに加えることを採択した。
- 2013年8月10日に発効する。
▼PFOS及びその関連する化学物質
- 多くの国は、このリスティングを支持したが、インドは、PFOSとその関連化学物質はインドでは多くの分野で使用されており、支持しないと述べた。
- IPENは、PFOSと関連物質は広範に使用され、貿易が行われているとして、PIC手続きの重要性を強調した。
- 2013年8月10日に発効する。
▼パラコート
- 多くの国がこのリスティングを支持したが、インド、グアテマラ、ホンジュラスは、このリスティングに強く反対した。
- ジャマイカとEUは、リスティングの目的は輸入者の知識を増大し、より安全な使用を可能にすることであり、この物質を禁止することではないと強調した。
- ノルウェーとIPENは、素性を隠して締約国の代表として発言したある人物により討議はかき乱されていると非難した(注)。
- 結局、付属書Vにリストする合意に足せず、次回COP7に持ち越された。
(注)当初、グアテマラ政府代表として発言していた人物が、後に農薬産界業のオブザーバーであることが判明し、事務局により会議から追い出された。
PAN Press Release, May 9, 2013
http://www.panna.org/press-release/guatemala-and-india-block-listing-toxic-paraquat-formulation-rotterdam-convention
◆クリソタイル・アスベストを付属書Vに含めることの検討
- ロッテルダム条約では制定の当初からアスベストを対象物質とするかどうか(付属書Vに含めるかどうか)に関して議論が行われきており、現在までに下記5種類のアスベストがリストに加えられた。アクチノライト、アンソフィライト、アモサイト、クロシドライト、トレモライト。
- しかしアスベスト製品の多くを占めるクリソタイルに関しては、健康や環境への影響に関する知見が不足しているとの理由を主張して、アスベスト輸出国が反対し、付属書IIIへの記載は見送られていた。したがって、アスベストに関する今回の議論はクリソタイル・アスベストを付属書IIIに記載するかどうかが焦点であった、
- ロシアは、ジンバブエ、キルギスタン、カザフスタン、インドに支持されて、クリソタイル・アスベストのリスト掲載に反対であると繰り返した。
- オーストラリアは、EU及びその他の16か国に支持されて、クリソタイル・アスベストはロッテルダム条約のリスト掲載の全ての基準を満たしており、措置が遅れれば人の健康と環境のために莫大なコストがかかると述べ、リスト掲載に反対する締約国にその主張を再検討するよう促した。
- 最終的にバリッカ議長は、クリソタイル・アスベストのリスト掲載に関する合意は得られなかったので、COP6は、決議を採択することはできず、この問題は自動的に第7回締約国会議(COP7) に先送りされると述べた。
■第6回ストックホルム条約締約国会議
ストックホルム条約は正式名称を、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」といい、Persistent Organic Pollutants(残留性有機汚染物質)の頭文字をとってPOPs条約とも呼ばれています。その概要についてはピコ通信178号(2013年6月)で紹介しました。
今回の会議(SC COP6)では、主に下記項目が討議されました。
▼DDT
- アフリカ・グループは、DDT代替、目標、マラリア媒介害虫駆除におけるDDTの代替の開発と評価における進捗の活性と促進のためのロードマップに関するドラフトを紹介した。
- EUはDDTの適切な管理ではなくて、代替開発に焦点を合わせたいとする意向を示した。
- インドはDDT代替のための2025年目標への懸念を表明した。
- 締約国は、2025年目標を外した妥協ドラフトを採択した。
- 媒介生物駆除のためにDDTに依存している国は、安全で効果的で手ごろな価格で環境的に適切な代替が現地で利用可能になるまでDDTの使用を継続することが必要かもしれないと結論付けた。
- 資金提供者は、マラリア抑制プログラムの中に、化学的ではない代替を含んで、現地で安全で、効果的で、手ごろな価格で、環境的に適切なマラリア媒介生物駆除のためのDDTの代替の開発と評価を優先付け、DDTの屋内残留散布のための資金調達がDDTの適切な管理のための活動を含むことを確実にするよう要請した。
▼免除
- 事務局は、特定の免除と許容できる目的の登録;臭素化ジフェニルエーテル類(BDEs)の廃絶に向けての進捗の評価と特定の免除の継続の必要性のレビューのためのプロセス;PFOSとその塩、及び PFOSFを継続する必要性の評価に関する文書を紹介した。
- メキシコは免除関連提案を支持した。
- EU、ノルウェー、日本、カナダは提案されたプロセスと様式を支持したが、追加提案を示唆し、さらなる作業を求めた。
- 資金的及び技術的支援の必要性が、PFOSへの義務のためにフィリピンにより、BDE特定と廃絶のためにアラブ・グループを代表してイラクにより、強調された。
- IPENと、有害物質アラスカ・コミュニティ・アクションは免除の削除を主張した。
- 締約国会議は、PFOSとその塩、及び PFOSFの評価を実施することを可能とするためのプロセスを採択した。
▼BDEs(臭素系難燃剤類)
- 多くの国がBDEsの免除使用をまだ必要とするかもしれないと結論付けた。
- 締約国が条約の付属書AにリストされているBDEs の廃絶という最終的な目的に向けて達成した進捗を締約国会議が評価し、これらの化学物質のための特定の免除の継続の必要性をレビューすることを可能とするプロセスを採択した。
▼PCBs
- 合同事務局は、PCBs廃絶ネットワーク(PEN)のリーダーシップは、国連環境計画化学物質に成功裏に移行されたと報告した。国連環境計画化学物質は締約国がPENへの資金に貢献するよう要請した。
- EUは、締約国がPENへの資源を提供するよう促し、フィリピンとともにドラフト決議を支持した。アラブ・グループを代表してレバノンは決議採択を支持したが、PCB類を廃絶するためには財源が必要であると述べた。
- 締約国が提出すべき第3次国家報告書に基づき、PCBsの廃絶に向けての進捗に関しCOP7での評価のための報告書を作成し、ネットワークの活動に継続して参加するよう事務局に要求した。
▼エンドスルファン
- インド、中国及びカナダは、ドラフト決議は、締約国がレビューの前にジコホルの使用を回避することを促し、締約国による推薦の前に付属書D(情報の要件及び選別のための基準)を"満たすかもしれない"9種の追加化学物質を評価するよう残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)に求めるということについての懸念を提起した。
- EUは、評価される100種以上の化学物質のうち、大部分は残留性又は生物蓄積性の基準を満たさなかったと述べた。
- POPRCにより実施されるエンドスルファンの化学的及び非化学的代替物の評価に関する報告書に留意し;
- 締約国は作物害虫駆除用途のエンドスルファンの代替物を選択する時に評価の結果を考慮することを促し;
- 事務局に、締約国がその国でエンドスルファンの使用に対する代替に関する情報を評価するのを支援する活動をするよう最終決議は要求した。
▼HBCD(ヘキサブロモシクロドデカン)
- 事務局は、建材のビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)及び押出法ポリスチレンフォーム(XPS)の製造と使用のための特定の免除を設けることで、HBCDをリストするという検討委員会(POPRC)の勧告を紹介した。
- ノルウェーは、建材中でのEPS 及び XPSの使用は世界の需要の80-90% を占めると述べ、付属書Aに免除なしで HBCDをリストすることを支持した。
- 有害物質アラスカ・コミュニティ・アクションは、世界先住民幹部会とともに、POPsの先住民族及び北方コミュニティへの厳しい継続的な影響を強調し、HBCDを免除なしに付属書Aにリストすることを支持した。
- IPENは免除なしにリストすることを支持し、POPsのリサイクルのための免除は危険であり、ストックホルム条約に違反すると付け加えた。
- オーストラリアとニュージランドは免除付きで付属書Aにリストすることを支持し、中国とともに代替物質は十分な量が利用可能ではないかもしれないと述べた。
- 韓国は、日本、EU、スイス、及びカナダとともに、 建材のEPS とXPS のために、特定の5年間の免除を設けて、HBCDを付属書Aにリストすることを支持した。
- 最終的には建材中の EPS と XPS の製造と使用のための特定の免除の登録にリストされている締約国に許容される製造と使用については、特定の免除を与えるという条件でHBCDをリストするという修正を決定した。
- 免除に登録した各締約国は、HBCDを含む材料はラベル又は他の方法でライフサイクルを通じて容易に特定できることの規定することを、付属書Aの新たなパートZに挿入することが決定された。
(まとめ:安間武)
3回連続して掲載した3条約締約国会議に関する紹介は今回で終わりです。
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