ピコ通信/第153号
発行日2011年5月23日
発行化学物質問題市民研究会
e-mailsyasuma@tc4.so-net.ne.jp
URLhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

目次

  1. 浜岡原発停止は第一歩 日本の全ての原発を廃炉に! 脱「エネ大量消費」で 脱「原発」!
  2. 福島原発事故への政府・東電の対応 メディア情報から何が問題かを考えよう
  3. 世界のNGOsが WHO事務局長へ手紙 化学物質過敏症と電磁波過敏症をWHO ICD-10 に登録するよう要請
  4. 文科省は子どもの放射線量安全基準年20ミリシーベルトを撤回して被曝量を最小にせよ
  5. 4月29日「終焉に向かう原子力」第11回小出裕章さん講演 悲惨を極める原子力発電所事故
  6. お知らせ・編集後記


福島原発事故への政府・東電の対応
メディア情報から何が問題かを考えよう


■はじめに

 福島第一原発の大事故の深刻さと、政府、東電、様々な関係者の対応、そして被害を受けた多くの人々の怒りを見るにつけ、このように危険で、迷惑で、環境を汚染し、金のかかる原発は廃止すべきとの思いがますますつのります。浜岡原発の全炉停止だけでなく、日本の全ての原発を廃炉にする必要があります。
 そのために、国のエネルギー政策を変えさせましょう。便利さと経済的繁栄だけを求めるエネルギー大量消費生活に、おさらばしましょう。国と企業に、原発分25%の節電・減電をさせ、私たちもそれを実現しましょう。化石燃料の自然エネルギーへの転換を応援しましょう。官・産・学の癒着となれ合いを徹底的に追及し、御用学者と御用文化人はメディアから引っ込んでもらいましょう。メディアにも厳しい眼を向けましょう。

■政府・東電、関係者の事故対応

 日本のエネルギー政策と原発の問題をより良く理解するために、事故発生以来2ヶ月強の間に主にネット上で報道された様々な情報を集め、政府、東電、関係者、そしてメディアの事故への対応を下記18項目に分類してみました。これにより、原発の抱えている様々な問題の一端が見えてきます。(詳細については、当会ウェブサイト「大震災・原発の問題」をご覧ください。)
(1) 原発安全神話
(2) 地震マグニチュード
(3) 原発事故レベル
(4) 事故発生直後の対応
(5) 新たに判明してきた事実
(6) 情報とメディア
(7) 計画停電
(8) 作業員の安全と処遇
(9) 住民避難
(10) 子どもの安全基準
(11) 食品汚染
(12) 上下水汚染
(13) 土壌汚染
(14) 汚染水の海への放出
(15) 賠償・補償
(16) 原子力関連組織
(17) 経産省と電力業界の癒着
(18) エネルギー政策

1. 原発安全神話
  • 内橋克人「原子力安全神話はいかにして作られたか」 正統性を喪失したエリート支配層 (書に触れ、街に出よう nico's blog 3月29日)
  • 反原発ソング:ずっとウソだった (Kaminogi、歌:斉藤和義 2011年4月8日)
  • 東電:考えられる最大の地震も考慮して設計しています(東京電力HP:削除済みを見る)
  • 小・中学校用教材:大きな津波でも発電所の機能はそこなわれません(FNN 4月15日)
  • 御用学者・評論家・タレント(青木理の"眼"YouTube 4月14日)
  • 原発推進学者が次々懺悔「国民に深く陳謝する」(J-CAST 4月16日)
2. 地震マグニチュード
  • 気象庁は当初マグニチュードを、気象庁マグニチュードで7.9と速報したが、後に8.3、8.4と修正した。その後新たにモーメントマグニチュードで、日本の観測史上最大の8.8と発表。さらに、3月13日には外国の安定した遠地波形データも用いて9.0と修正した。(ウイキペディア)
  • 気象庁によるマグニチュードの数値変更は「想定外の大きさの地震と津波に襲われた人災を超えるもの」という心理に誘導しようとする企てが透けて見える。(島村英紀HP 3月21日)
3. 原発事故レベル
  • 福島原発、当初は事故でない「レベル3」と評価 保安院 (朝日 4月23日)
  • 「レベル4」。原子力安全・保安院 過去に東海村臨界事故 (日経3月12日)
  • 「レベル5」。 (読売3月18日)
  • 「レベル7」(4月12日)。IAEAはチェルノブイリとの違いを強調。ロシアやフランスなど原発大国「過剰評価だ」(毎日4月13日)
4. 事故発生直後の対応

  • 震災翌日の原発視察に「初動対応の遅れない」 と首相。班目春樹原子力安全委員長が首相は視察の際に「原子力について少し勉強したい」と述べたことについて(朝日 3月29日)
  • 「ヘリ放水はアメリカ向けだった。日本の本気度を伝えようとした」。冷却効果が期待できないヘリ放水は二度と行われなかった。(毎日 4月22日)
  • 東電社長、参院予算委でベントの遅れについて「電源が喪失し、放射線量も高い厳しい状況だった。住民が避難したかをしっかり確認する時間が必要だった」と釈明。(毎日 4月18日)
  • 東電は12日の1号機爆発の18時間前には、圧力容器内の水位低下など、炉心溶融の兆候をつかんでいた。「国には随時報告しており、隠す意図はなかった」と説明。(毎日4月8日)
  • 原子力安全・保安院や東電は、今後は一日一回、合同で記者会見を開く方針。3月12日の1号機からのベントについて、細野補佐官は「政府と東電のコミュニケーションが十分取れなかった」と連携不足を認めた。(東京4月26日)
5. 新たに判明してきた事実

  • 1号機建屋たまり水3千トン 冠水計画、事実上断念(朝日 5月14日)
  • 4号機爆発は3号機からの排気逆流が原因の水素爆発(毎日 5月16日)
  • 東電 地震直後のデータ公表 事故後2ヶ月でようやく(毎日 5月16日)
  • 1号機のメルトダウンは3月11日…初動の遅れ裏付け(読売 5月16日)
  • 2・3号機もメルトダウン 東電16日発表のデータで裏付け(朝日 5月17日)
  • 1号機 非常冷却 津波前に停止。東電はマニュアルに従って止めた可能性を強調するが、地震の衝撃による不具合だった可能性がある(東京 5月17日)
  • 政府工程表発表 復興道のり、未知数 住民 「2カ月もたってメルトダウンと分かり、原発事故は本当に収束するのか」(毎日5月18日)
  • 汚染水総量、10万トン超、建屋地下など−大半を浄化装置で処理へ(時事5月18日)
  • 海水注入 中断問題、政府が班目氏発言訂正、再臨界「可能性はゼロではない」(毎日5月23日)
6 情報とメディア
  • 政府、3月15日の2号機爆発後の汚染拡散―影響を小さく見せようと腐心。「たいしたことない」、「直ちに健康被害があるわけではない」 (東京 5月19日/福島原発の1週間)
  • 高い放射線量、東電公表せず 3号機、水素爆発前に把握 (朝日 5月13日)
  • 勝間和代氏 朝生テレビ発言 「放射能は思われているほど危険じゃない。プルトニウムも危険じゃない。今回の事故でじゃあ死人が出ましたか?」(YouTube 3月25日)
  • 放射性物質予測、公表自粛の気象学会要請に戸惑う会員。情報公開を抑える文書に批判が相次いだ。(朝日 4月2日)
  • だから東大教授はTVで「安全」を強調するのか。東電から大学院に6億円の寄付「関村教授、班目委員長、岡本教授、諸葛特任教授・・・まさに産学一体で、原発事業を推進」(日刊ゲンダイ4月7日)
  • 自らの信念なしに利権に群がるメディア、タレント、文化人が今回の福島の事故であらわになった。金や地位のために巨大な利権にすりよる御用学者、御用文化人、御用メディアを今回、絶対に追放すること。(青木理の"眼"4月9日)
  • 福島第1の放射性物質、拡散予測5000件が未公表 政府が発表、「開示でパニック懸念」 (日経5月2日)
  • 浜岡原発一時停止、主要紙社説がそろって賛同、学者談話で温度差。朝日の「あまりにも唐突」、「社会の混乱心配」とする懐疑的姿勢が目立つ(メディアウオッチ5月9日)
  • なぜ、マスメディアは「脱原発」と言えないのか? パニックの第一発生源にはなりたくないのか。放射能の値を示すときには判で押したように「ただちに人体に影響が出る数値ではない」とつけ加える。(朝日 5月10日)
  • 「電力不足キャンペーン」にモノ申す 広野火力復旧で夏もOKなのに 東電また"情報操作" 狙いは原発存続? よぎる計画停電・・・「電力会社と経産省グルに」 供給上積み隠し 危機あおる(東京 5月12日)
  • 東電の宣伝約90億円 関連総額250億円 競争ないのにナゼ 原発擁護発言期待し謝礼500万円 マスコミ覆う呪縛 番組スポンサー降板で圧力(東京5月17日)
  • 「福島第一の避難は念のため」、「ただちに健康に害を与えるレベルではありません」 九州電力 原発冊子を回収 (読売5月18日)
7. 計画停電

  • 計画停電の是非と妥当性について 岩本伸一・早大教授:これしかない。 読者コメント:原発がないとこんなに大変なんですよ、原発推進も仕方がないでしょ、という刷込み狙いのいやらしさを感じる。(SMC 3月15日)
  • 日本、原発不足分補う石油火力発電の余剰ある=IEA (ロイター3月15日)
  • 「無計画停電」から「戦略的エネルギーシフト」(環境エネルギー政策研究所 飯田哲也 3月23日)
8. 作業員の安全と処遇
  • 厚労省と経産省 緊急時の作業員の被曝線量上限を年100mSvから250mSvに。作業時間を長くできることが狙い。(朝日 3月15日)
  • 通常時1年間で50mSvを越えると他の原発で働けない上限撤廃へ 厚労省が特例措置。5年間で100mSvを越えると最長5年間は働けなくなる基準は維持。(熊本日日4月28日)
  • 東電作業員50人弱が「内部被曝」。東電によれば、「50人足らずの作業員が内部被曝しているが、隠したわけではない。上限の250mSvは超えていない」。(日刊ゲンダイ 4月28日)
  • 事故対策の拠点建物、個人の被曝線量を記録せず。東電、ずさん管理(産経4月28日)
  • 3号機タービン建屋で作業員3人が被ばくし た当日、現場の放射線量は測定されず、作業員の人数に対し線量計が不足していたことが判明。(47NEWS/共同4月30日)
  • 3月12日の「ベント」周知せず着手。東電社員の証言によれば、ベント着手の方針や時期、作業の進行状況など一切の情報が伝えられていなかった。(47NEWS/共同5月1日)
  • 新たに40代女性社員が被ばく限度超す。 免震棟で作業員介護。被ばく線量は7.49mSv、うち外部被ばくが0.78mSv、内部被ばくが6.71mSv。(毎日5月2日)
  • 非常食から弁当へ…作業員の待遇改善 これまでレトルトなどの非常食で、床で雑魚寝していた生活環境から、弁当を提供し、新たにプレハブ寮を設置してベッドやシャワーを増設するという。(毎日5月4日)
  • 原発敷地内で約2週間給水作業 大阪・西成で求職の男性 (47NEWS/共同5月9日)
  • 日当3万円3か月。被曝承諾書にサイン 福島原発作業いまだ過酷 24時間プライバシーなしの集団生活 (J-Cast 5月10日)
  • 内部被ばく:県外原発で働く福島出身作業員から相次ぎ発見(毎日5月21日)
9. 住民避難
  • 政府は3月11日午後9時頃、半径3キロ以内の住民に避難指示を出し、翌12日に10キロに拡大した。(WSJ 5月19日)
  • 首相、同原発の半径20キロ以内からの避難、同20〜30キロの圏内では屋内に退避するよう要請。(朝日3月15日)
  • 米軍、福島原発80キロ圏内からの避難命令 (WSJ 3月17日)
  • 原発20キロ圏、立ち入り禁止 9市町村、災害対策基本法に基づく「警戒区域」 (朝日 4月22日)
  • 警戒区域の外側の「計画区域」指定の5市町村、避難先探し難航。(毎日4月22日)
  • 福島第1原発:苦渋の90人放置 南西4キロの双葉病院(毎日4月26日)
  • 「警戒区域」一時帰宅に備え予行演習 「防護服暑い」(朝日5月4日)
  • 「20分訪問」反発招き…首相、5時間滞在 福島県双葉町の住民ら約1200人が集団避難している埼玉県加須市 (読売5月4日)
  • はらわた煮えくり返る思い…東電社長に浪江町長 (読売5月4日)
  • 福島原発:防災計画、50キロ圏避難なら全国1200万人(毎日 5月8日)
  • 原子力災害対策本部は5月12日、福島県に対して福島第一原発から20km圏内の警戒区域の家畜を安楽死させて処分するよう指示。 (農政・農協ニュース 5月13日)
  • 計画的避難始まる 初日は飯舘村、川俣町の113人 (朝日 5月15日)
10. 子どもの安全基準
  • 確実に広がる放射能、福島県内学校の75%が放射能「管理区域」レベル汚染 (東洋経済 4月11日)
  • 審議2時間で「年間20mSv 妥当」判断。原子力安全委員会 学校基準で文部科学省へ助言。(47NEWS/共同4月30日)
  • 放射線量 子供の20mSv 判断経緯を公表。安全委は正式な委員会を開かず議事録もなく透明性に欠けるなどと批判された。小佐古敏荘・東京大教授は緩すぎて容認できないと内閣官房参与を辞任。(毎日5月2日)
  • 福島の母 「校庭の土を舐めて下さい」。福島の小学校の土を役人に。5月2日の「20mSv」の撤回を求める対政府交渉に福島の父母と環境団体参集。(田中龍作ジャーナル5月3日)
  • 校庭汚染土は放射性廃棄物と官房長官。 一方で、「文部科学省から示した指針に基づいて対応をいただければ(校庭の土を)除去する必要はない」(毎日 5月2日)
  • 校庭の土、「上下入れ替え」「穴に埋める」有効 文科省(朝日 5月11日)
11. 食品汚染
  • 厚労省、福島県産の原乳、茨城県産のホウレンソウから、食品衛生法の暫定規制値を上回る放射性物質の検出を発表。(時事 3月19)
  • 魚介類にも基準設定 放射性物質、野菜と同レベルに。茨城県沖で捕獲されたコウナゴがこの基準を超えたため(朝日 4月5日)
  • 千葉産の牧草、基準超す放射性物質 八街・市原で採取(朝日 4月28日)
  • 神奈川・南足柄の茶葉から基準超えセシウム 回収・出荷停止へ(朝日 5月11日)
  • 放射性物質影響 水産庁が魚介類の記述を「魚体内で濃縮・蓄積しない」から「蓄積しつづけるわけではない」と変更(毎日 5月13日)
  • 福島 川魚3品目で放射性物質 アユから基準値を超えるセシウム(NHK 5月14日)
12. 上下水汚染
  • 水道水から放射性物質、飲用控えるよう要請福島県飯舘村で基準の3倍 (産経 3月21日)
  • 浄水場から放射性物質 東京23区などで乳児の摂取自粛を要請 (産経 3月23日)
  • 下水処理場の汚泥から高濃度放射性セシウム 福島市終末処理場(読売 5月8日)
  • 1キロあたり10万ベクレル以上の放射能汚染の下水汚泥は焼却処分ドラム缶などで保管。10万ベクレル以下の汚泥は当面、地下水への汚染対策をした処理場の埋め立て敷地などに監視できる状態で保管(朝日 5月12日)
13. 土壌汚染
  • 飯舘村、全農作物の作付けを中止 (読売4月12日)
  • 福島県で採取した土壌と葉物野菜からストロンチウム89と90を検出。半減期が29年のストロンチウム90はセシウム137に比べ約1千分の1以下の量。(朝日 4月12日)
  • 農水省の水田放射能調査…深く掘って値を小さくしている! 15cm掘って放射線計測。そんなに掘るな (阿修羅 4月17日)
  • 研究者ら約300人が詳細な土壌の汚染地図作りに。福島の1500地域。(朝日 4月28日)
  • 半減期が約30年のセシウム137の蓄積濃度が1m2あたり60万ベクレル以上に汚染された地域は約800km2で琵琶湖の1.2倍。(朝日 5月11日)
14. 汚染水の海への放出
  • 2号機 汚染水、壁面の亀裂から海へ。ピットの汚染水からは通常の原子炉の水の1万倍、取水口付近の海水からは1,000倍の放射性ヨウ素131が検出された。(朝日 4月2日)
  • 東電が、「低レベル」放射性物質の汚染水を海に排出したのは、原子炉規制法及び、高・中・低レベル放射性物質による海洋汚染防止を定めたロンドン条約に違反と衆院委で吉井議員。"不適切"と官房長官(赤旗4月14日)
  • 高濃度汚染水、海へ流出4,700兆ベクレル。史上最悪の海洋汚染とされる英セラフィールド核施設で70年代に放出された廃液の年間の総量と同程度。流出想定量は約520トンで1〜6号機の年間限度の約2万倍(毎日 4月21日)
  • 15〜20キロの海底2地点の土から常時の100〜1,000倍以上のヨウ素131、セシウム134、セシウム137を検出。海底土壌の汚染に規制値はない。(毎日 5月4日)
  • 福島第一原発の港湾内海底の土から高濃度の放射性物質。通常の約3万8千倍に当たる濃度のセシウム137を検出。セシウム134とヨウ素131も検出。(朝日 5月5日)
  • 海からストロンチウム初検出 福島第一敷地内でも。半減期が約29年と長く、化学的にカルシウムと似ていて、体内に入ると骨にたまる傾向がある。文科省も今後、海洋のストロンチウム調査を実施するという。(朝日 5月9日)
  • 3号機の高濃度汚染水流出 海水に1万8千倍セシウム134(朝日 5月11日)
15. 賠償・補償
  • 福島原発、政府賠償1兆円超も 例外規定を初適用へ(47NEWS/共同3月20日)
  • 避難や農作物の出荷制限など事故後の政府指示で発生した被害を賠償対象と定めた第1次指針を策定。農作物などの風評被害のほか、避難に伴う精神的苦痛の一部を初めて賠償対象とする。(毎日 4月28日)
  • 賠償の負担巡り議論過熱 東電「免責」を。政府「理解得られない」(毎日 5月1日)
  • 原発賠償4兆円、政府が試算 賠償総額を4兆円、東電負担を約2兆円と想定。賠償は最終的に電力各社が10年にわたり負担する内容。東電管内は電気料金が約16%上がる前提。 (朝日 5月5日)
  • 東電「賠償能力に配慮を」と一次指針策定直前、紛争審に。原子力損害賠償紛争審査会や政府の関係者は東電のこの対応を疑問視。 (朝日 5月5日)
  • 電事実上の公的管理 支援6条件政府提示(1)賠償総額に事前の上限を設けない (2)福島原発の安定化に全力を尽くす (3)電力の安定供給などのための必要経費を確保 (4)最大限の合理化と経費節減 (5)新設の第三者委員会による経営、財務の調査 (6) 株主、社員、金融機関などすべての利害関係者への協力要請(東京 5月11日)
  • 東電:公的管理を受諾 賠償負担、上限設けず(毎日 5月11日)
  • 福島原発:賠償、避難状況で4段階の慰謝料算定 審査会(毎日 5月16日)
16. 原子力関連組織
  • 東日本大震災対応に設置した組織を再編。「地震・津波」「原子力発電所事故」「復興」の3分野に。震災関連組織が20近くも乱立し、「指揮命令系統が見えない」との批判を受けた措置。(読売4月28日)
  • 原発の安全性をチェックする保安院が原発を推進する経産省内にあるとチェック機能を行使しにくい。内閣府の「原子力安全委員会」も、権限や独立性が弱く「保安院の追認機関にすぎない」と問題視されている。(東京 5月5日)
  • 首相は電力会社から送電部門を切り離す発送電分離と、経済産業省から原子力安全・保安院の分離の検討を表明(朝日 5月18日)
17. 経産省と電力業界の癒着
  • 東京電力:石田顧問辞任へ 天下り、なれ合い半世紀 「原発安全規制に緩み」 (毎日4月19日)
  • 原子力天下り:25団体 (原発業界御用学者リスト @ ウィキ)
  • 原発関連団体は「天下り」の巣窟。 年収1,000万円超の経産省、文科省OBがゾロゾロ (日刊ゲンダイ3月26日)
18. エネルギー政策
  • 浜岡原発の津波に対する防護対策の確実な実施とそれまでの間の運転の停止について (経済産業省 5月6日)
  • "浜岡原発以外 運転停止求めず" 仙谷官房副長官、NHKの日曜討論で「国のエネルギー政策としては原発を堅持」(NHK 5月8日)
  • 民主党03年マニフェストは、原発を過渡的エネルギーと位置づけ、自然エネルギーへの転換を目指す姿勢が明確だったが、09年のマニフェストで原発推進に転じ、原発輸出を「国家戦略プロジェクト」にするなど、現政権は自民党政権以上に原発政策に肩入れした。今後「原点回帰」に向かうのか。(中日・春秋5月8日)
  • 浜岡原発:エネルギー政策の転換につなげる一歩としたい菅首相と、「最も危険な浜岡」だけを止めることで原発推進の国策維持を図る経済産業省の同床異夢。(毎日5月9日)
  • 核燃料サイクル:「白紙」首相表明 「自然エネルギー推進」(毎日 5月10日)
  • 安全なら原発再稼働容認。さらに「原子力のより安全な活用方法が見いだせるなら、さらに活用していく」と首相。(時事5月18日)
(安間 武)



文科省は子どもの放射線量安全基準
年20ミリシーベルトを撤回して
被曝量を最小にせよ

 4月19日、文部科学省は学校等の校舎・校庭等の利用判断における放射線量の目安として、年20ミリシーベルトという基準を福島県教育委員会や関係機関に通知しました。
 この数値は、とうてい子ども達の健康を守れるものではないと、福島の父母たち、環境団体、海外の医師団体など多くの団体・個人から、撤回を求める声が強まっています。当会でも、20ミリシーベルト撤回要請に賛同し、国との交渉に参加しています。この問題について、報告します。

■この間の経緯
 福島老朽原発を考える会(フクロウの会)の報告 (美浜の会ニュース112号掲載)(ばっすい)
http://www.jca.apc.org/mihama/News/news112/news112fukurou.pdf
 フクロウの会では、事故直後から、グリーン・アクションらと協力して、米国の脱原発団体NIRS から提供を受けた10台の放射線測定器を福島周辺の人に配布する「放射線測定プロジェクト」を進めた。その中の1台が、3 月23 日に震災後に福島市内で立ち上がったばかりの原発震災復興・福島会議のメンバーに渡った。
 原発震災復興・福島会議は、学校における測定を進めた。文科省は3 月25 日付け通達で、新学期開始の時期について柔軟に対処するよう指示し、都内の多くの大学などでは、新学期開始を5月に延期した。ところが文科省は、福島県に対しては、直接出向いて、新学期の予定通りの実施を促した。新学期開始を前に、春休みに子どもを避難させていた家庭で、子どもを呼び戻す動きが各所で生じていた。
 福島会議による学校での測定により、学校の一部で地面から10 センチ程度の空間線量が毎時100マイクロシーベルトを超えるなど、高い線量が測定された。福島会議はこの結果に基づいて、福島県に対し、3月31日付けで新学期の延期と避難の促進を要請した。これに対し福島県は、新学期をあくまで予定通り実施するとしながら、県内の学校で一斉の測定を行うこと、国に対し学校の安全基準を明確にするよう要請すること、各学校に放射線測定器を配置することを表明した。

 県内1400校以上の学校での測定は、4 月5〜7 日に行われた。始業式は4 月6 日前後に行われたところが多く、測定は子どもたちを通わせながら実施したことになる。この測定は県内全域の初めての一斉測定であり、これにより福島全県の汚染状況が初めて明らかになったが、それは驚くべき結果であった。
 福島会議がまとめたところでは、空間線量が毎時0.6 マイクロシーベルトを超える学校が全体の76%以上、2.3 マイクロシーベルトを超える学校が全体の20%を超えた。毎時0.6 マイクロシーベルトは「放射線管理区域」に相当する線量。本来ならば、放射線マークを掲示し、線量計による被ばく管理を行わなければならい。この中での18 歳以下の労働は禁じられている。毎時2.3 マイクロシーベルトは、この環境下に1年いると、外部被ばくだけで原発労働者の線量限度の年平均値に匹敵する20 ミリシーベルトを浴びてしまう線量だ。
 福島会議はこのような県の測定結果をまとめ、当面の休校措置、避難疎開の促進、除染の実施を求める「進言書」を4 月17 日に県と国に提出した。(ばっすい 終わり)

■4 月19 日、文科省が通知を出す
 4月19 日、文科省が、福島県から要請を受けていた学校の安全基準について通知を出しました。
 福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について(通知)抜粋
  • (国際放射線防護委員会(ICRP)による)非常事態収束後の参考レベルの1−20mSv/年を学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安とし,今後できる限り,児童生徒等の受ける線量を減らしていくことが適切であると考えられる。
  • 16時間の屋内(木造)、8時間の屋外活動の生活パターンを想定すると,20mSv/年に到達する空間線量率は、屋外3.8μSv/時間、屋内(木造)1.52μSv/時間である。したがって、これを下回る学校では,児童生徒等が平常どおりの活動によって受ける線量が20mSv/年を超えることはないと考えられる。
  • 校庭・園庭で3.8μSv/時間以上の空間線量率が測定された学校については、当面、校庭・園庭での活動を1日あたり1時間程度にするなど、屋外活動をなるべく制限することが適当である。
  • 3.8μSv/時間未満の学校は、校舎・校庭等を平常どおり利用して差し支えない。 ICRPの勧告を根拠に、「計画的避難区域」の基準とする年間被ばく限度20ミリシーベルトと同じ「年20ミリシーベルト」を、子どもの安全基準とすると通知したのです。
■20ミリシーベルト撤回求め政府交渉開始
 これに対して、4月21日に「子どもに年20ミリシーベルトの安全基準を撤回せよ」を要求して、文科省、原子力安全委員会交渉が行われました。あまりにも無責任な回答に、再度の交渉を要求しました。(主催:フクロウの会、グリーン・アクション、美浜の会)


 5月2日には、再び政府交渉が持たれました(主催:フクロウの会、グリーン・アクション、美浜の会、FoE Japan)。会場の参議院議員会館講堂には、福島県からの参加者を含めて350名が詰めかけ、満員となりました。
 交渉冒頭、20ミリシーベルト撤回要請書とネット署名1,074団体および53,193人(61カ国以上)を提出。
 当交渉では、以下の点が明らかになりました。
5/2政府交渉時、福島の小学校の校庭の
"安全な"土を役人に進呈。
線量計は41.59μSv/hを示している。
  • 原子力安全委員会は、「20ミリシーベルト」は基準として子どもに認めていないと発言。また、安全委員会の委員全員および決定過程にかかわった専門家の中で、安全とした専門家はいなかったと述べた。
  • 原子力安全委員会が4月19日に示した「助言」(20ミリシーベルトは「差し支えない」)は、助言要請から2時間で決定されたが、決定過程においては、正式な委員会も開催されず、議事録も作成されなかった。
  • 原子力安全委員会は子どもの感受性の高さに鑑み、大人と区別する必要があると発言したが、文科省はICRPも区別していない(注)として、区別する必要はないと発言した 。
    (注): 実際は、ICRPのPub.36「科学の授業における電離放射線に対する防護」(1983年)では、18才以下の生徒が実験などで被曝する可能性がある場合を想定して、一般人の被ばく限度の10分の1にすることを勧告している。
  • 厚生労働省は、放射線管理区域(0.6マイクロシーベルト/時以上)で子どもを遊ばせてはならないと発言したものの、放射線管理区域と同じレベルの環境で子どもを遊ばせることの是非については答えなかった。
  • 原子力安全委員会は内部被ばくを重視するべきだと回答。モニタリングによって、実態を把握し、それによって評価を行うと述べた。文科省は土ほこりなどの吸引は、全体の被ばく量の2%程度であり、軽微とし、内部被ばくを考慮に入れる必要はないと判断したと説明。両者とも、食物は考慮に入れていない。
  • 文科省は除染作業について、汚染のレベルを下げる必要はあると発言。しかし、実施しているのはモニタリングのみで、具体的な低減策は示さなかった。自治体の(自主的)除染作業についてブレーキはかけないが、除染作業はやる必要がないと発言。
■福島原発事故「20ミリシーベルト」署名第2弾
 この交渉結果を受けて、6団体が呼びかけ人となって、以下の内容の「子ども「20ミリシーベルト」基準の即時撤回および被ばく量の最小化のための措置を求める緊急要請」福島原発事故「20ミリシーベルト」署名第2弾が始まっています。http://e-shift.org/?p=485
  1. 4月19日に文科省が示した学校等の校舎・校庭等の「20ミリシーベルト基準」の即時 撤回および現行の1ミリシーベルト基準の維持。
  2. 子どもの被ばく量を最小化するためのあらゆる措置を政府の責任で実施すること。また、自治体や市民団体、個々の市民自らが被ばく量を低減させるために実施する、除染・自主避難・疎開などの自主的な取り組みが円滑に進むよう、最大限の支援を行うこと。
  3. 内部被ばくを考慮に入れること。
  4. 屋外で3.8マイクロシーベルト/時以下になったとしても、モニタリングを継続すること。
【年20ミリシーベルト、屋外で3.8マイクロシーベルト/時が憂慮すべき基準である理由】
  • 3.8マイクロシーベルト/時は、労働基準法で18歳未満の作業を禁止している「放射線管理区域」(0.6マイクロシーベルト/時以上)の約6倍に相当する線量である
  • 20ミリシーベルト/年はドイツの原発労働者に適用される最大線量に相当する
  • 原発労働などによって白血病を発症した場合の労災認定基準は、5ミリシーベルト×従事年数である 。実際に白血病の労災認定を受けているケースで、20ミリシーベルト/年を下回るケースもある。
  • 本基準は、子どもの感受性の強さや内部被ばくを考慮に入れていない
  • 本基準により、子どもの被ばく量を低減するための取り組みをやめてしまった学校も多い
  • 3.8マイクロシーベルトを下回った小中学校・幼稚園・保育園・公園におけるモニタリングが行われなくなった
 5月23日(月)には、午後1時から文部科学省包囲・要請行動&院内集会が行われる予定です。
(注)当研究会参加。(動画/報道記事/声明/写真など

■国内外から批判高まる
 いま、20ミリシーベルトをめぐって、国内外から批判の声が高まっています。
 4月29日、原発推進派である小佐古敏荘内閣府参与までもが、この数値に抗議して辞任しました。また、5月12日には日本医師会も以下のような声明を出しました。

文部科学省「福島県内の学校・校庭等の利用判断における 暫定的な考え方」に対する日本医師会の見解
(前略)そもそもこの数値の根拠としている国際放射線防護委員会(ICRP)が 3 月 21 日に発表した声明では「今回のような非常事 態が収束した後の一般公衆における参考レベルとして、1〜20 ミリ シーベルト/年の範囲で考えることも可能」としているにすぎない。
 この 1〜20 ミリシーベルトを最大値の 20 ミリシーベルトとして 扱った科学的根拠が不明確である。また成人と比較し、成長期にある子どもたちの放射線感受性の高さを考慮すると、国の対応はより慎重であるべきと考える。
 成人についてももちろんであるが、とくに小児については、可能な限り放射線被曝量を減らすことに最大限の努力をすることが国の責務であり、これにより子どもたちの生命と健康を守ることこそが 求められている。
 国は幼稚園・保育園の園庭、学校の校庭、公園等の表面の土を入れ替えるなど環境の改善方法について、福島県下の学校等の設置者に対して検討を進めるよう通知を出したが、国として責任をもって対応することが必要である。国ができうる最速・最大の方法で、子どもたちの放射線被曝量の減少に努めることを強く求めるものである。


 福島県では、文科省の基準通知を受けて、これまで被曝を抑えるために取って来た校庭の使用を控えるなどの措置が、基準値以下とされた学校では中止されているということです。学校に水筒やお弁当を持って行くことを認めない、校庭での体育を休むと「成績に響くよ」と脅されるなどの話も聞かれます。
 郡山市では、独自に校庭の表土を取り除くことをしていますが、文科大臣は「必要ない」と発言し、削った土は放射性廃棄物となるために、未だに対処法が決まらず、校庭の真ん中にシートをかけて置かれているという有様です。文科省では、批判の高まりの中で、土を50センチ掘り返して上下を入れ替えるなどという姑息な手段も提案しています。
 5月2日の交渉では、原子力安全委員会担当者が「20ミリシーベルトは、子どもに認めていない」と隣で発言しているのに、文科省の渡部格・原子力安全監は「安全委員会から差し支えないという助言をもらった」と、まったく矛盾した発言をして、両者とも平気な顔をしています。その無神経さ、無責任さ、性質の悪さには、まったく驚きました。
 現在の汚染状況に合わせて安全基準を決めることで、疎開や学校除染などの対策を免れるという自分たちの都合に合わせるためには、平気で嘘をつく、黒を白と言って恥じないということです。
 福島の子どもたちを放射能汚染から守るために、署名、議員への働きかけ、メディアへの投書、集会参加など、みなさんに協力を呼びかけます。(安間節子)


5月2日政府交渉のプログラム/報道記事/動画/写真などはここをクリック


化学物質問題市民研究会
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