ピコ通信/第153号
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福島原発事故への政府・東電の対応
メディア情報から何が問題かを考えよう ■はじめに 福島第一原発の大事故の深刻さと、政府、東電、様々な関係者の対応、そして被害を受けた多くの人々の怒りを見るにつけ、このように危険で、迷惑で、環境を汚染し、金のかかる原発は廃止すべきとの思いがますますつのります。浜岡原発の全炉停止だけでなく、日本の全ての原発を廃炉にする必要があります。 そのために、国のエネルギー政策を変えさせましょう。便利さと経済的繁栄だけを求めるエネルギー大量消費生活に、おさらばしましょう。国と企業に、原発分25%の節電・減電をさせ、私たちもそれを実現しましょう。化石燃料の自然エネルギーへの転換を応援しましょう。官・産・学の癒着となれ合いを徹底的に追及し、御用学者と御用文化人はメディアから引っ込んでもらいましょう。メディアにも厳しい眼を向けましょう。 ■政府・東電、関係者の事故対応 日本のエネルギー政策と原発の問題をより良く理解するために、事故発生以来2ヶ月強の間に主にネット上で報道された様々な情報を集め、政府、東電、関係者、そしてメディアの事故への対応を下記18項目に分類してみました。これにより、原発の抱えている様々な問題の一端が見えてきます。(詳細については、当会ウェブサイト「大震災・原発の問題」をご覧ください。) (1) 原発安全神話 (2) 地震マグニチュード (3) 原発事故レベル (4) 事故発生直後の対応 (5) 新たに判明してきた事実 (6) 情報とメディア (7) 計画停電 (8) 作業員の安全と処遇 (9) 住民避難 (10) 子どもの安全基準 (11) 食品汚染 (12) 上下水汚染 (13) 土壌汚染 (14) 汚染水の海への放出 (15) 賠償・補償 (16) 原子力関連組織 (17) 経産省と電力業界の癒着 (18) エネルギー政策 1. 原発安全神話
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文科省は子どもの放射線量安全基準
年20ミリシーベルトを撤回して 被曝量を最小にせよ 4月19日、文部科学省は学校等の校舎・校庭等の利用判断における放射線量の目安として、年20ミリシーベルトという基準を福島県教育委員会や関係機関に通知しました。 この数値は、とうてい子ども達の健康を守れるものではないと、福島の父母たち、環境団体、海外の医師団体など多くの団体・個人から、撤回を求める声が強まっています。当会でも、20ミリシーベルト撤回要請に賛同し、国との交渉に参加しています。この問題について、報告します。 ■この間の経緯 福島老朽原発を考える会(フクロウの会)の報告 (美浜の会ニュース112号掲載)(ばっすい) http://www.jca.apc.org/mihama/News/news112/news112fukurou.pdf フクロウの会では、事故直後から、グリーン・アクションらと協力して、米国の脱原発団体NIRS から提供を受けた10台の放射線測定器を福島周辺の人に配布する「放射線測定プロジェクト」を進めた。その中の1台が、3 月23 日に震災後に福島市内で立ち上がったばかりの原発震災復興・福島会議のメンバーに渡った。 原発震災復興・福島会議は、学校における測定を進めた。文科省は3 月25 日付け通達で、新学期開始の時期について柔軟に対処するよう指示し、都内の多くの大学などでは、新学期開始を5月に延期した。ところが文科省は、福島県に対しては、直接出向いて、新学期の予定通りの実施を促した。新学期開始を前に、春休みに子どもを避難させていた家庭で、子どもを呼び戻す動きが各所で生じていた。 福島会議による学校での測定により、学校の一部で地面から10 センチ程度の空間線量が毎時100マイクロシーベルトを超えるなど、高い線量が測定された。福島会議はこの結果に基づいて、福島県に対し、3月31日付けで新学期の延期と避難の促進を要請した。これに対し福島県は、新学期をあくまで予定通り実施するとしながら、県内の学校で一斉の測定を行うこと、国に対し学校の安全基準を明確にするよう要請すること、各学校に放射線測定器を配置することを表明した。 県内1400校以上の学校での測定は、4 月5〜7 日に行われた。始業式は4 月6 日前後に行われたところが多く、測定は子どもたちを通わせながら実施したことになる。この測定は県内全域の初めての一斉測定であり、これにより福島全県の汚染状況が初めて明らかになったが、それは驚くべき結果であった。 福島会議がまとめたところでは、空間線量が毎時0.6 マイクロシーベルトを超える学校が全体の76%以上、2.3 マイクロシーベルトを超える学校が全体の20%を超えた。毎時0.6 マイクロシーベルトは「放射線管理区域」に相当する線量。本来ならば、放射線マークを掲示し、線量計による被ばく管理を行わなければならい。この中での18 歳以下の労働は禁じられている。毎時2.3 マイクロシーベルトは、この環境下に1年いると、外部被ばくだけで原発労働者の線量限度の年平均値に匹敵する20 ミリシーベルトを浴びてしまう線量だ。 福島会議はこのような県の測定結果をまとめ、当面の休校措置、避難疎開の促進、除染の実施を求める「進言書」を4 月17 日に県と国に提出した。(ばっすい 終わり) ■4 月19 日、文科省が通知を出す 4月19 日、文科省が、福島県から要請を受けていた学校の安全基準について通知を出しました。 福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について(通知)抜粋
これに対して、4月21日に「子どもに年20ミリシーベルトの安全基準を撤回せよ」を要求して、文科省、原子力安全委員会交渉が行われました。あまりにも無責任な回答に、再度の交渉を要求しました。(主催:フクロウの会、グリーン・アクション、美浜の会)
5月2日には、再び政府交渉が持たれました(主催:フクロウの会、グリーン・アクション、美浜の会、FoE Japan)。会場の参議院議員会館講堂には、福島県からの参加者を含めて350名が詰めかけ、満員となりました。 交渉冒頭、20ミリシーベルト撤回要請書とネット署名1,074団体および53,193人(61カ国以上)を提出。 当交渉では、以下の点が明らかになりました。
この交渉結果を受けて、6団体が呼びかけ人となって、以下の内容の「子ども「20ミリシーベルト」基準の即時撤回および被ばく量の最小化のための措置を求める緊急要請」福島原発事故「20ミリシーベルト」署名第2弾が始まっています。http://e-shift.org/?p=485
(注)当研究会参加。(動画/報道記事/声明/写真など) ■国内外から批判高まる いま、20ミリシーベルトをめぐって、国内外から批判の声が高まっています。 4月29日、原発推進派である小佐古敏荘内閣府参与までもが、この数値に抗議して辞任しました。また、5月12日には日本医師会も以下のような声明を出しました。 文部科学省「福島県内の学校・校庭等の利用判断における 暫定的な考え方」に対する日本医師会の見解 (前略)そもそもこの数値の根拠としている国際放射線防護委員会(ICRP)が 3 月 21 日に発表した声明では「今回のような非常事 態が収束した後の一般公衆における参考レベルとして、1〜20 ミリ シーベルト/年の範囲で考えることも可能」としているにすぎない。 この 1〜20 ミリシーベルトを最大値の 20 ミリシーベルトとして 扱った科学的根拠が不明確である。また成人と比較し、成長期にある子どもたちの放射線感受性の高さを考慮すると、国の対応はより慎重であるべきと考える。 成人についてももちろんであるが、とくに小児については、可能な限り放射線被曝量を減らすことに最大限の努力をすることが国の責務であり、これにより子どもたちの生命と健康を守ることこそが 求められている。 国は幼稚園・保育園の園庭、学校の校庭、公園等の表面の土を入れ替えるなど環境の改善方法について、福島県下の学校等の設置者に対して検討を進めるよう通知を出したが、国として責任をもって対応することが必要である。国ができうる最速・最大の方法で、子どもたちの放射線被曝量の減少に努めることを強く求めるものである。 福島県では、文科省の基準通知を受けて、これまで被曝を抑えるために取って来た校庭の使用を控えるなどの措置が、基準値以下とされた学校では中止されているということです。学校に水筒やお弁当を持って行くことを認めない、校庭での体育を休むと「成績に響くよ」と脅されるなどの話も聞かれます。 郡山市では、独自に校庭の表土を取り除くことをしていますが、文科大臣は「必要ない」と発言し、削った土は放射性廃棄物となるために、未だに対処法が決まらず、校庭の真ん中にシートをかけて置かれているという有様です。文科省では、批判の高まりの中で、土を50センチ掘り返して上下を入れ替えるなどという姑息な手段も提案しています。 5月2日の交渉では、原子力安全委員会担当者が「20ミリシーベルトは、子どもに認めていない」と隣で発言しているのに、文科省の渡部格・原子力安全監は「安全委員会から差し支えないという助言をもらった」と、まったく矛盾した発言をして、両者とも平気な顔をしています。その無神経さ、無責任さ、性質の悪さには、まったく驚きました。 現在の汚染状況に合わせて安全基準を決めることで、疎開や学校除染などの対策を免れるという自分たちの都合に合わせるためには、平気で嘘をつく、黒を白と言って恥じないということです。 福島の子どもたちを放射能汚染から守るために、署名、議員への働きかけ、メディアへの投書、集会参加など、みなさんに協力を呼びかけます。(安間節子) 5月2日政府交渉のプログラム/報道記事/動画/写真などはここをクリック |