ピコ通信/第147号
発行日2010年11月23日
発行化学物質問題市民研究会
e-mailsyasuma@tc4.so-net.ne.jp
URLhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

目次

  1. 二酸化塩素を使った除菌剤 家庭には危険で必要ない製品
  2. シックスクール対策 栃木県と宇都宮市の取り組み シックスクール対策連絡会(宇都宮市)
  3. 海外情報:EHN 2010年9月30日 BPA が大気中に 世界中で見出される
  4. 海外情報:米化学会 C&EN 2010年11月1日 科学者ら米国の食品中にビスフェノールAを検出有毒物質:BPAが肉、鶏肉、魚、野菜、惣菜、乳児食に
  5. 調べてみよう家庭用品(40)化粧品 (4)
  6. お知らせ・編集後記


二酸化塩素を使った除菌剤
家庭には危険で必要ない製品


 11月11日、国民生活センターから「二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品−部屋等で使う据置タイプについて−」が発表されました。
新型インフルエンザの流行とともに、最近、二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品が市場で見受けられるようになったこと、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に、これらの商品に関する相談が多くなってきたことから、使用中にどのくらいの二酸化塩素が放散されているのか等を調べ、消費者に情報提供することとしたとしています。
当会でもこの種の製品に対して、安全性等に問題があるものではないかと考えてきました。今回の国民生活センターの調査の結果、製品の中には二酸化塩素の放散が大きいものがあるなど、さまざまな問題点、疑問点などがみつかったことから、調査と結果について紹介します。

■調査の概要

1.目的
 新型インフルエンザの流行とともに「新型インフルエンザ、パンデミック対策に」「お部屋の空気まるごと除菌」「ポンとおくだけ 空間に浮遊するウイルス・菌・ニオイを除去!」等として二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品が市場で見受けられるようになった。
 二酸化塩素は、強い酸化力を持ち、国内では紙、パルプの漂白、水道水の殺菌、プールの水の殺菌に使われ、食品添加物として小麦粉の漂白への使用が認められているもので、日常生活の中で使われるようになったのは、ここ数年のことである。
 PIO-NETには、二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品に関する相談が、2005 年 4 月から2010 年 3 月末までに20 件寄せられており、特に2009 年度に多くなっていた。そのうち、商品の安全性や品質に関する相談が18 件あった。
 二酸化塩素の気中濃度については、国外では米国産業衛生専門家会議(以下、「ACGIH」と記載)により作業環境に関する基準が設定されているが、国内では作業環境や室内における基準がない状況である。

2.二酸化塩素について
(1)二酸化塩素とは
 二酸化塩素は、分子式ClO2の室温で塩素様の刺激臭を持つ気体であり、空気より重い。強い酸化力を持つが、光、熱に不安定で、塩素と酸素に分解する。
 二酸化塩素への職業性曝露による主な健康影響は、気道、皮膚、および眼の刺激であるが、ヒトに関し信頼できる定量的データはないとされている。

(2)二酸化塩素の作業環境基準等
 常温常圧下での二酸化塩素は、不安定で反応性の高いガスであるため、ガス状の二酸化塩素を取り扱った毒性試験は現状ではほとんどみられない。ACGIH が定める二酸化塩素の作業環境基準は、塩素よりも小さな値となっており、また、ラットの吸入による急性毒性を表す半数致死濃度(LC50)も塩素より低く、二酸化塩素の方が塩素よりも毒性が強いと考えられる(下表)。

 二酸化塩素【参考】塩素備考
作業環境基準TWA ※1基準値なし0.5 ppm日本産業衛生学会
0.1 ppm0.5 ppmACGIH 2007
STEL ※20.3 ppm1.0 ppm
急性毒性 吸入(ガス)
ラットLC50(4 時間値)
32 ppm146 ppm安全衛生情報センター
製品安全データシート
※1:Time Weighted Average:時間加重平均値
毎日繰り返し曝露した時、ほとんどの労働者に悪影響がみられないような大気中の物質濃度の時間加重平均値。労働時間が8時間/日及び40時間/週での値。
※2:Short Term Exposure Limit:短時間曝露限界値
労働者が作業中の任意の時間にこの値を超えて曝露してはならない15分間の時間加重平均値。

3.PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)より
相談件数:2005年(0)、2006年(1)、2007年(1)、2008年(2)、2009年(16)
▼相談事例
・感染管理製品を2〜3 週間使用したところ、軽い咳、痰を生じるようになった。塩素を吸って気管が痛くなる事例はあるか。(30 歳代男性、神奈川県)
・フタを開けると同時に塩素系の臭いが部屋中に立ち込める。幼児がいるので身体に影響がないか心配。(50歳代女性、兵庫県)

4.テスト対象銘柄
 二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品は、部屋に置いて二酸化塩素を放散させる据置タイプのものと、スプレータイプのものに大別される。後者はスプレーの回数等、使用者による調整が可能であるが、本テストでは使用者による調整が困難と考えられる据置タイプのものを対象とした(下表)

表 テスト対象銘柄一覧
 No. 銘柄名販売元・製造元成分
ゲルタイプ1ウィクリア阪本漢法製薬安定化二酸化塩素
2ウィルキルG東京企画販売二酸化塩素水溶液、ゲル化剤等
3ザ・モンスター(ゲルタイプ)ブルーミング安定化二酸化塩素、精製水、ゲル化剤
4セルフガード 3000ファスコ貿易安定化二酸化塩素、
精製水、ゲル化剤
5ゲルタイプ ダッシュルバナナ・コーポレーション エコプロジェクト安定化二酸化塩素、
精製水、ゲル化剤
ゲル生成タイプ6ウイルスバスター ゲル90発売:キンエイクリエイト
製造:アマテラ
亜塩素酸塩水溶液、
二酸化塩素発生調整剤、
ガス発生活性化剤、
吸水性材料
7クレベリン ゲル大幸薬品二酸化塩素液、
高吸水性樹脂等
8パルエックスジーレッドハート非塩素系酸化剤、
高吸水性樹脂など
錠剤タイプ9除菌・消臭剤(トリクリンオレンジ)トコロ安定化二酸化塩素、
塩素化イソシアヌル酸、
炭酸水素ナトリウム

5.テスト結果
(1)塩素系ガスの放散速度の経時変化
 塩素系ガスの放散速度は、1 日後までに最大となったが、ゲルタイプ(No.1〜5)の放散速度は小さく、その後も横ばい状態であった(下図1)。
 用いた検知管法では、共存する他の塩素系のガス等を分別できないため、測定値を「塩素系ガス」の濃度とした。


(2)二酸化塩素及び塩素の放散速度
 二酸化塩素の放散は9 銘柄中6 銘柄(No.1〜5、9)でわずかであった。一方で、ゲル生成タイプ(No.6〜8)では明らかな放散が認められ、中でもNo.6の使用開始1日後の放散速度が特に大きかった。

(3)においの強さと容認性
 塩素系ガスの放散速度の大きい銘柄では、臭気強度が大きくなるとともに部屋に長時間いたくないと回答した人も増えた。 悪臭防止法を参考に、人による「嗅覚測定法」によりモニターテスト(モニター10名、平均年齢37.5歳)を行った(下図2)。
 日本建築学会では、通常の部屋において、80 %以上の人がその臭気の存在を受け入れられる環境条件を保持すること(非容認率 20 %以下)を目標として環境基準を定めている。



クレベリン ゲル (大幸薬品)
「ポンと置くだけ! 空間に浮遊するウィルス・菌・ニオイを除去!」
「寝室・リビング・キッチン・洗面所に」「子ども部屋にも使える」
などと書かれている。
さらに、二酸化塩素は小麦粉漂白処理剤の食品添加物および
水道水処理剤として認められている。次亜塩素酸Naに比べて、
きわめてトリハロメタンを発生しにくいなどの表示も。
(4)表示等

1)安全性に関する表示・広告
 二酸化塩素が食品添加物として認められていること等から安全であるとうたっている商品があり、消費者に誤認させるおそれがあった。
 「国連食品添加物専門委員会「A-1」クラス認定」や経口摂取する砂糖や塩と同じレベルの安全性等と表記しているものが4 銘柄(No.3〜5、No.8)あった。
 食品添加物は経口で摂取するものであり、今回の商品を使用して吸入等で曝露するものとは違うため、消費者に商品が安全であると誤認させるおそれがあると考えられた。
 また、国内外の公的機関で安全性が確認され認定を受けていると受け取れる表示やインターネット広告が7 銘柄(No.1〜5、8、9)でみられた。これらは二酸化塩素に関するものと考えられるが、そのことが明記されていないものが4銘柄(No.3〜5、9)あった。このような表記は、商品自体の安全性が確認され認定を受けていると消費者に誤認させるおそれがあった。

2)有効性に関する表示・広告
 「新型インフルエンザ対策」「パンデミック対策」や、ノロウイルスやO-157 等の感染症の予防効果等をうたった表示・広告が8 銘柄(No.1、3〜9)でみられた。これらは薬事法に抵触するおそれがあると考えられた。

(5)事業者へのアンケート調査
 テスト対象9 銘柄に製造元、発売元等として表示されていた10 社にアンケートを依頼し、8社(7 銘柄)から回答を得た(回収率:80 %)。

1)商品設計及び有効成分
 居住空間における効果の程度を確認している事業者は少なかった。また、有効成分として二酸化塩素以外の成分もあげている銘柄があった。
販売開始時期については、1 銘柄が1997 年であったが、多くは2008 年以降に販売が開始されており、各銘柄で既に数万〜100 万個程度が販売されていた。  有効成分の除菌の対象は、ノロウイルス、インフルエンザ、大腸菌類、MRSA 等で、それらに対して除菌効果を発揮する気中濃度は0.01〜0.19 ppm と幅があったが、根拠となるデータはないと回答したところや無回答のところもあった。
 有効成分の気中濃度と効果の確認について、実使用における除菌の効果の確認を進めていたところは1 社(No.7)であった。

2)吸入の身体的影響に関するデータと健康被害
 ほとんどの事業者が、実際に使用した際の安全性を確認していなかった。また、塩素系ガスの放散が比較的多かった銘柄では、使用者からの健康被害等の報告を受けているところがあった。
 
有効成分の身体への影響に関するデータを持っているかについては、3 社が「持っている」、3 社が「持っていない」、2 社が「その他」と回答。事業者が参考にしていたデータは、「英国健康安全管理」、ACGIH の作業環境基準やテスト対象銘柄との関連性が不明な他社の液体の商品のMSDS(製品安全データシート)等であった。二酸化塩素のヒトへの健康影響については、特に部屋等で使用する際に想定される低濃度域での安全性や有効性に関する知見は少ないのが現状であり、実際に商品を使用した際の安全性を確認する取組みを行っていたところは1社(No.7)であった。
 健康被害の報告については、塩素系ガスの放散が比較的多かったNo.6〜9 で回答のあった4 社のうち2 社(3 銘柄のうち2 銘柄)が、使用者からの体調不良やにおいに関する連絡を受けていた。

6.行政への要望

(1)日常生活の中で、二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品が適切に使用されるよう、商品の安全性と有効性について十分に検証をする等、事業者への指導を要望する。

(2)安全性に関する表示・広告が、一部の成分のものか商品自体のものかが不明確な銘柄があった。商品としての安全性を表示、広告するよう事業者への指導を要望する。

(3)商品の表示や広告に特定の感染症の予防効果をうたったものが見られた。薬事法に抵触するおそれがあると考えられるため、監視・指導の徹底を要望する。


 この種の製品は、2010年2月に開催した講演会「身の回りの有害化学物質にご用心」に於いて、講師の渡辺雄二さんが大幸薬品の「クレベリン」を、今こんなに危険な製品が出てきていると紹介し、参加者みんなが驚いた製品です。今回の調査結果からも、以下のことが言えると思います。
  • 有効性がはっきりしていない一方、安全性に関して大いに問題のある製品である。
  • 二酸化塩素は、急性毒性が塩素の5倍近くある有毒物質である。メーカーは、濃度が低いから安全であると主張するかもしれないが、ガス状のテスト結果はほとんどないことから、安全性が確認されているとはいえない。また、安全性の参考目安とされている「作業環境基準」は労働現場のもので、長時間曝露される家庭の安全基準とは別物である。
  • 臭気テストでは、日本建築学会の基準をクリアしている製品はほとんどなかった。不快な臭いを伴う製品である。
  • 製品表示には「食品添加物に使われている」「砂糖や塩と同じ高い安全性」「米EPAから認証されている」等と書かれて、いかにも安全であるという印象を与えている。
  • 2社が健康被害の訴えがあったと回答しているが、氷山の一角であると思われる。体調不良との関係に気がつかない利用者も多いのではないか。
  • この種の製品には、効能をうたうと薬事法に抵触するということはあるが、それ以外は法的な規制はいっさいない。
二酸化塩素を利用した空気清浄機が開発されて、既にホテルなどで使われているようです。これは、今回の除菌製品を大掛かりにしたものだと思われます。今後、病院や老人施設、図書館等の公共施設に導入される恐れもあります。
 11月16日、国民生活センターは、大幸薬品が「クレベリン ゲル」について各社新聞広告で、"同センターが品質を確認。調査の結果、有効性と安全性の取り組みを評価"などとする事実と異なる記載をしていると発表しました。大幸薬品は、企業モラルが欠けている会社であることが分かりました。
 24時間、室内空気中に二酸化塩素が振りまかれる、これらの製品はまったく不必要で危険な製品です。行政には、この種の製品の規制を、メーカーには安全性データの要求をしていきましょう。消費者は、こんなものは買わないことです。(安間節子)

資料:二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品−部屋等で使う据置タイプについて− 国民生活センター 2010年11月11日発行  図表は同資料から。


シックスクール対策 栃木県と宇都宮市の取り組み
シックスクール対策連絡会(宇都宮市)

■はじめに
「シックスクール対策連絡会」は、平成13年(2001年)にその基盤を立ち上げ、各省庁、県、市、専門家、NPO、市民団体等が主催する様々なシンポジウムや勉強会に足を運び、化学物質問題について学ぶと同時に、栃木県および宇都宮市の関係各部・学校等に資料や情報を提供してきました。
さらに、すべての児童・生徒が安心して学習できる学校環境維持のために、シックスクール問題に関する共通認識を図り、シックスクールからファインスクールへ向けての対策を講じることの重要性を伝えてきました。そして、より良い環境を整えるために「相談と提案」を重ねてきました。結果的に、県および市の教育委員会がマニュアルを作成し、さらにポスターが掲示されるようになり、シックスクール問題は学校だけの問題ではなく、社会への提案へと発展しました。
これまでのすべての取り組みがバックアップとなり、確実な「証拠」を待つことより「環境改善型予防医学」の視点から、すべての子ども達を守り育てようという機運が熟し、今年1月の乳幼児施設に関するマニュアルの作成に繋がりました。
また、平成20年度の行政の機構改革により、「子ども部」が新設されたことも大きな要因ではないかと考えます。
シックハウス症候群・化学物質過敏症を発症した児童・生徒とその保護者は、それぞれが学校での対応について学校長・養護教諭・担任等と話し合いながら、出来るところから取り組みを進めてきました。

■栃木県および宇都宮市の取り組み―マニュアル等の作成について―
 栃木県および宇都宮市は、すべての子ども達がより良い環境で心身ともに健やかに成長することを願い、シックスクールに関するマニュアル等を作成しました。

(1)栃木県教育委員会の取り組み
平成14年6月 県議会にて初めて「シックスクール問題」について質問
 県教育委員会は対処するとの回答をされましたが、特に進展はありませんでした。

平成17年3月 県議会にて「学校におけるシックハウス対策について」質問
 これを受けて「栃木県学校環境衛生対策検討委員会」を設置。検査データの分析や対応方法の検討を行う。
(委員 独協医科大学小児科助教授、栃木県医師会学校保健部会副会長、栃木県学校薬剤師会会長・副会長、栃木県立南那須養護学校長、栃木県立益子高等学校教諭、栃木県薬剤師会検査センター所長、宇都宮大学工学部建設学科助教授)

平成18年3月「健康的な学習環境のために―シックハウス対策マニュアル―」作成
 検討委員会の報告と「学校環境衛生基準」に基づき、児童・生徒が健康で安心して学校生活が送れるよう、学校における日常管理や対応と学校での体制作り等に関するマニュアルを作成しました。シックハウス問題の対応には、教職員だけでなく保護者、地域関係者、児童・生徒本人の連携が必要であるとしています。
<配布先>県立高校・県立養護学校・県内小中学校・県立教育関連施設・庁内関係各部等

平成18年10月 養護教諭特別講座開催 <対象>県内の養護教諭約600名
「化学物質とこどもの健康」 講師 北里大学名誉教授 宮田幹夫氏

(2)宇都宮市教育委員会の取り組み
平成17年度  小中学校で実施される「保健調査票」の既往症の項目に、新たに「化学物質過敏症」を追加。自己申告による発症児童・生徒の人数を把握する。

平成17年10月 「シックスクール問題対策マニュアル作成委員会」設置
(委員 教育委員会内の関係課および学校長、養護教諭、保健所)

平成17年10月 「シックスクール問題対策アドバイザー会議」設置
(委員 宇都宮市医師会理事、アレルギー専門医、宇都宮市薬剤師会学校薬剤師、足利工業大学建築学科講師)

平成17年12月 「第一回シックスクール問題連絡会議」開催
 発症児童・生徒の在籍する学校14校の学校長・養護教諭・発症児童生徒の保護者が、一堂に会し、各学校の取り組みや課題等について意見交換を行う。

平成18年1月 「第二回シックスクール問題連絡会議」開催

平成18年1月  宇都宮市保健所が「化学物質低減・シックハウス対策の手引き」作成(平成21年3月改定)
<配布先>庁内関係各部に配布

平成18年3月 「シックスクール問題対策マニュアル」作成
 市教育委員会は、化学物質過敏症の申し出のあった児童・生徒への対応のみならず、学校が把握していない患者が存在することや、本人・家族も気づかない場合のあることも視野に入れ、さらにすべての子ども達の健康影響を未然に防ぐことを考慮し、この問題を一部の学校の問題と捉えるのではなく、全小中学校の問題と捉え、学校内の化学物質低減などにより、より健康的な学習環境の整備に努めるためのマニュアルを作成しました。
 シックスクール問題は、学校の新築・改築・改修等の施設整備の問題にとどまらず、学校施設の維持管理、極微量な化学物質に過敏に反応してしまう児童・生徒への配慮など、統合的な対策が必要であるとしています。また、この対策マニュアルを教育委員会や各学校等が有効に活用し、一人ひとりの児童・生徒が安心して学習できる学校環境づくりに努めたいとしています。
<配布先>市内小中学校・庁内関係各部等

平成18年9月 シックスクール対策連絡会主催による講演会開催
「今子供たちに何が起きているのか―シックスクール問題から―」 講師:弁護士/ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議事務局長 中下裕子氏
「シックスクール問題対策マニュアル作成の背景と今後の展開について」 講師:宇都宮市教育委員会事務局 学校健康課学校保健体育グループ 指導主事 横嶋 剛氏

(3)宇都宮市保健所および宇都宮市教育委員会の取り組み
平成20年9月 市議会にて「香料等自粛についてのポスター掲示」について質問

平成21年1月 「香料自粛のお願いポスター」 作成
化学物質による健康リスク低減のため、市民や学校来訪者への啓発や周知を目的として、香料等の化学物質に関するポスターを作成しました。<掲示場所>市内小中学校・保健所・公共施設等

(4)宇都宮市子ども部の取り組み
平成21年3月 市議会にて「乳幼児施設に関するシックスクール問題対策」について質問

平成21年8月 「シックスクール問題(化学物質過敏症等)に関する実態調査」を実施

平成22年1月 「幼稚園・保育所のシックスクール問題対応マニュアル―すべての子ども達の健康を守るために―」 作成(末尾参照)
 乳幼児は、脳や身体が作られる発達期にあり、化学物質に対する感受性が高く、特に注意が必要と考え、未来を担う「すべての子ども達」がより安全に生活できる環境づくりを進めるため、予防を第一に考え作成しました。シックハウス症候群や化学物質過敏症などを正しく理解し、人の健康や環境へのリスクを低減することなどについて、乳幼児施設長や教職員、保育士等が留意すべき事項をまとめています。
 教職員・保育士が基礎知識を持ち、共通認識を図ることと、園だより、保育だより等により保護者等に情報を提供し、理解を深めることにも言及しています。
 <配布先>公立民間を問わず市内のすべての保育所71園、幼稚園49園、保育ママなど合計124箇所・庁内関係各部等

平成22年8月 シックスクール研修会開催<対象>乳幼児施設職員
「シックスクールについて」 講師 北里大学名誉教授 宮田 幹夫氏
*本マニュアルに関する記事が、毎日新聞に掲載されました。また、教育医事新聞では、全国初の「乳幼児施設に対するシックスクール対応マニュアル」として紹介されました。

■取り組みに関する基本的な考え方
―学校・行政とともに―
 化学物質問題は、平成15年の環境白書にあるように、「人類や生態系にとって、化学物質に長期間曝露されるという状況は、歴史上はじめて生じている」問題です。
 シックスクール問題・化学物質過敏症に関して未解明な部分が多いというその本質は、そもそも人体に関して未解明な部分が多いのだから当然と捉えています。科学的な証明は、実験デザインや様々な背景によっても結果は変わります。
 このような現状の中、何よりも大切なことは、今苦しんで助けを求めている子ども達の声を聞き、必要な対応をすることと、すべての子ども達が認め合い助け合い、未来に希望を持つことの出来る環境を整えることだと考えます。さらに、発症した児童・生徒への対応のみならず、すべての子ども達の将来を慮り健康影響を未然に防ぐ予防を第一に考え、大人として人として責任を果たしていくという共通認識のもと、学校・行政とともに取り組んできました。
 様々な子ども達が集まる場所が学校です。我子を守りたい一心で、行政・学校と対立すれば、我子の心を傷つけます。今まで楽しく通っていた学校の信頼していた先生と、自分の両親が対立する姿を見ることはどれ程悲しいことか…。化学物質過敏症を発症した児童・生徒の在籍する学校の教職員等が「面倒な子どもがいる、対応しなければならない」という意識で子ども達と向き合えば、「いじめ」などの二次的な問題を生み出しかねません。
また、場合によっては、「ちょっとくらい我慢できないの?」という問いかけが言葉の暴力にもなってしまいます。病気や症状その ものよりも辛いことは、病気や症状を理解されないことだと多くの子ども達は言います。子ども達を追い詰め、傷つけてはいけません。生きる希望を失わせてはいけません。そのためにも、学校・行政・保護者の連携は重要です。
 発症した児童・生徒本人も家族も、多くの場合、発症するまで化学物質過敏症・化学物質問題を知りませんでした。ですから、被害者、加害者を超えて、これまでの自分たちの生活を振り返り、家庭の中を改善すると同時に、学校や行政等に対して「してもらうこと」ばかりを主張するのではなく、学校やクラス全体を考慮し、場合によっては子どもに学校を休ませる、除草剤の使用を中止するにあたっては草むしりに行く、教室の掃除をさせていただき、石鹸・水拭きだけで十分きれいになることを見てもらい納得してもらうなど、保護者も出来ることをしてきました。
 現在、行政は周知を図ろうと様々に努力しているのですが、残念ながら十分とは言えません。人々の意識が変わるには時間がかかります。とはいえ、幾多の紆余曲折を経て宇都宮市が現況にあるのは、この問題に取り組むすべての皆様のおかげと深く感謝しております。皆様の取り組みが大きなバックアップになっています。今後も皆様のお力をお借りしながら真摯に課題に向き合っていきたいと思います。すべての子ども達の心身の健康を守るために・・・。

幼稚園・保育所のシックスクール問題対応マニュアル「すべての子ども達の健康を守るために―」
宇都宮市子ども部保育課 作成1
<マニュアルの目次>
Tシックスクールに関する基礎知識
 1.シックスクール問題とは
 2.化学物質の定義
 3.シックハウス症候群
 4.化学物質過敏症
 5.シックハウス症候群と化学物質過敏症の違い
 6.代表的な化学物質
U.幼稚園・保育所におけるシックスクール問題の予防と対応
 1.保育施設の新築・改築・改修等
 2.施設内の環境について
 3.園庭等の環境について
 4.備品等の購入について
 5.業者への対応
V.教職員・保育士等の意識啓発
 1.幼稚園・保育所
資料1.改正建築基準法に基づくシックハウス対策の概要
資料2.保育環境チェック表
資料3.シックスクール問題(化学物質過敏症等)に関する実態調査結果

※宇都宮市のHPで、「幼稚園・保育所のシックスクール問題対応マニュアル」で検索して読むことができます。
http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/dbps_data/_material_/localhost/kodomo/hoiku/sickscoolmanyual.pdf



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