ピコ通信/第107号
発行日2007年7月23日
発行化学物質問題市民研究会
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URLhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

目次

  1. 化学物質問題市民研究会10周年記念連続講演会
    脳の発達と化学物質 子どもの脳が危ない−黒田洋一郎先生 第2回 (上)
    脳神経研究の最新情報と私たちにできること
  2. 環境省が農薬飛散リスク調査検討会開催(下)
  3. 杉並病は終わっていない−杉並病の発症から今日まで
    廃棄物系化学物質による健康被害者支援科学者グループ 小椋和子
  4. 調べてみよう家庭用品(5)−カビ取り剤
  5. 化学物質問題の動き(07.06.23〜07.07.22)
  6. お知らせ・編集後記


化学物質問題市民研究会10周年記念連続講演会
脳の発達と化学物質 子どもの脳が危ない
第2回 脳神経の基礎と子どもの発達への影響 (上)

黒田洋一郎さん (東京都神経科学総合研究所)

 化学物質問題市民研究会10周年記念講演会として第1回5月12日(土)に引き続き、第2回を6月16日(土)に東京芸術劇場で開催し、黒田洋一郎先生に第1回の続きを講演していただきました。今号と次号の2回に分けて第2回の概要を報告します。
(文責 化学物質問題市民研究会)

 環境ホルモンなどの化学物質は、胎児や乳児の脳内で遺伝子の働きを攪乱するので、神経(細胞)回路の形成・発達が傷害され行動が異常になるということが考えられます。
 私たちのCREST※研究では、この考え方をPCBなどを使って、以下の点について実験で確かめました。(※戦略的創造研究推進事業)

 1.遺伝子の働き(遺伝子発現)の攪乱が起こるか
 2.神経(細胞)回路形成・発達が障害されるか
 3.汚染された母親から生まれた子ラット、子ザルの行動が異常になるか

 その結果、どんな化学物質があぶないのかということが、どういう実験で証明されたかということをこれから簡単にお話したいと思いす。

1.遺伝子の働き(遺伝子発現)の攪乱が起こるか
○神経回路形成に重要な遺伝子発現への影響を調べる実験(遺伝子レベル)
(1)甲状腺ホルモンが調節している遺伝子の発現量を簡便、正確に調べる
結果:低濃度のPCB、水酸化PCBによる遺伝子の発現の攪乱が起こった。
(2)神経活動が調節している遺伝子の発現量を調べた
結果:DDT、ペルメトリンによる攪乱が起こった。
(3)数百、数千の遺伝子の発現を一度に解析するDNAマイクロアレイによる研究
結果;水酸化PCBなどでシナプス関連遺伝子の発現に変化が起こった。

 どんな化学物質が毒なのかということについて、今までは使われていなかったこういう技術が最近開発されたので、調べることが可能になってきています。

■毒性のメカニズムによる分類
どんな化学物質が危ないのかについて、毒性のメカニズムによって分類すると、三つに分類されます。

A にせホルモン型:PCB、水酸化PCBなどの環境ホルモン(PBDE-難燃剤も)
 脳の中で正常に働いているホルモンと似た化学物質が入ってくると脳の働きが撹乱される。
 ホルモン依存性遺伝子発現の攪乱と知能(IQ)低下、多動症がこの型の化学物質によって影響を受けると考えられます。脳の発達に重要な甲状腺ホルモンとPCB、水酸化PCBの化学構造はよく似ています。低濃度の水酸化PCBは、甲状腺ホルモンによる遺伝子の働きの活性化を抑制するという実験結果が出ています。

B チャネル影響型:DDT、ペルメトリンなどの殺虫剤、DES
 神経細胞が興奮する時には、イオン・チャネルの働きにより細胞の中のナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度の差を使って電気情報を作り出し、一つの神経細胞の中を伝わっています。これらの電気活動によるカルシウムイオンの流入により、脳の中のシナプスを介した所は化学物質(神経伝達物質)で情報が伝わる。つまり、脳の情報伝達は電気情報と化学物質情報を使っているが、これらの物質はチャネルの働きに影響して、それに伴う遺伝子の働きの活性化を撹乱するのです。すなわち、神経活動依存性遺伝子発現の攪乱により、記憶など後天的獲得行動の異常に関係します。
 脳の中の興奮によって活性化される遺伝子が、毒物(ペルメトリン、DDT)によって発現量が下がっていくということが実験によってわかっています。さらに、DDT、ぺルメトリン、DESそれぞれ単独よりも、二つ、さらに三つ組み合わせたほうがより強くはたらくという結果も出ています。
 複合汚染についてこれまで言われてきましたが、たしかに相加効果があるというデータです。一つ一つは安全量であっても、現在のように多種類の化学物質汚染が重なると影響が出るということです。

C にせ神経伝達物質型:グルホシネート、グリホサートなどの除草剤
 これらの物質は、化学物質情報の伝達をになう神経伝達物質の働きをかく乱するタイプです。神経伝達物質としてはグルタミン酸、ギャバ、グリシン、セロトニン、ドパミンなど多くの化学物質があり、これらの物質は正常な脳の働きをおかしくしてしまいます。
 グルホシネートが雌子ラットに易興奮性、殺戮にいたる異常な攻撃性を生じる動物実験結果が報告されています(藤井ら)。グルホシネート、グリホサートは、遺伝子組換作物用除草剤としても大量につかわれていますが、神経伝達物質として脳で使われているアミノ酸の有機リン化合物です。
 妊娠ラットに体重1kg当たり3〜5mgのグルホシネート・アンモニウムを皮下注射すると、生まれた仔ラットは尾に噛み付くなどの易興奮性を示したとの報告があります。これらの仔ラットでは、甲状腺重量の減少と血中ホルモンのレベル上昇が認められ、グルホシネートが内分泌系に影響を与えることをうかがわせます。
 なお、雌の仔ラットは正常では噛み合わないが、グルホシネート雌仔ラットは、お互いに噛み合い、片方を殺すまでやめないケースがあったと報告されています

2.神経(細胞)回路形成・発達が障害されるか
○脳の神経細胞の発達、神経回路形成への影響を調べる実験(T)(細胞レベル)
 シャーレの中で培養したラット大脳皮質の神経細胞を用いて、シナプス形成と神経活動の発現を定量的に画像解析する実験系をつくることに成功した(世界で初めて)。
結果:シナプス形成と神経活動の発現には、甲状腺ホルモンが重要であることが分かった。農薬アミトロールによるかく乱が証明された。
○実験(U)シナプスや神経細胞の枝(樹状突起)の発達への影響を調べる。
小脳プルキンエ細胞の樹状突起発達実験系、シナプス形成実験系をつくった。
結果;シナプスや樹状突起の発達には、甲状腺ホルモンが必須であること。水酸化PCBが発達を攪乱すること。PCBは異性体で毒性が異なること。甲状腺ホルモン依存性樹状突起伸展を阻害することなどが証明された。

【シナプス形成阻害は重要】
 神経回路はシナプス形成でつくられるので、どの神経回路のシナプスに異常がおこるかによって、対応する様々な行動に異常が起こる可能性があります。
 症状として異なった発達障害や脳神経系の病気も、1つの原因物質が異なった時期、異なったシナプス形成(神経回路形成)に異常を起こしたためかもしれないと言えます。

3.汚染された母親から生まれた子ラット、子ザルの行動が異常になるか
○化学物質投与次世代サルを用いた行動への影響を調べる実験
(1)4段指迷路学習実験:汎用型知能検査
 リンゴ片を得るための指迷路試実験
(2)出合わせ行動実験:相互認知、社会性を評価
(3)アイ・コンタクト行動実験:サルの特性(内向性、警戒心)の評価
 サルがヒトを見るとき目を合わせる性質を利用して、視覚機能やサルの性格特性(警戒心、内向性)を評価する。
(4)母子行動観察実験〔東大大学院 吉川泰弘グループ〕:サルの母子相互行動の評価
 観察用ケージにサルの母子を入れ、子どもの成長にともなってお互いに何をするかという母子相互行動の変化を観察する。
(5)総合影響評価
 指迷路学習行動実験で、ダイオキシンは有意な影響はありませんでしたが、母ザルの血中PCB濃度が高いと、子ザルの学習試験成績は落ちました。アイ・コンタクト実験ではPCB、ダイオキシンとも有意な影響は観察されませんでした。出会わせ実験では、ダイオキシンは社会性に影響はありましたが、発達にともない変化する(改善される)ことがわかりました。脳の可塑性に関わる結果で、脳には元に戻る力があるということです。
 油症事件(台湾)での子どものIQ低下が報告されていますが、原因はPCBだと考えられます。PCB、水酸化PCBは、記憶など知能にかかわる脳での遺伝子発現や神経回路形成を、低濃度(0.1nM以下)で阻害するからです。母ザル血中の総PCB濃度が高いと(0.5nM以上)、子ザルの学習実験の成績が落ちるという実験結果が出ています。
 日本人の一般男女の総PCB血中濃度は平均650pg/g(単純換算濃度:1.6nM)で、現在でも最小毒性濃度より高いことが分かっています。値は個人によってばらつきがあるので、値が高い人、あるいは感受性が高い人は注意が必要です。
 リスク評価において、従来の毒性学は致死率をターゲットにしてきたので、今問題になっている発達障害、うつ病、アレルギーなど死なない毒性に対するリスク評価がひじょうに甘くなっているのです。(次号につづく)
(まとめ 安間節子)


杉並病は終わっていない
〜杉並病の発症から今日まで〜

廃棄物系化学物質による健康被害者支援科学者グループ 小椋和子

1.杉並病の発症
 1996年(平成8年)2月、東京都清掃局が建設した杉並中継所の試験運転と同時に周辺住民の苦しみが始まりました。これがマスメディアの言う「杉並病」の発端です。杉並中継所は、通産省工業技術院の研究所が筑波に移転した跡地に出来た井草の森公園の一角に建設されました。練馬区との区境にあり、東は環八道路が近くを通り、北は新青梅街道に面しています。
 咳、のどの痛み、目がちかちかといった症状や呼吸困難に陥り、救急車で運ばれる人が続出しました。被害者グループによる住民のアンケート調査から、多数の被害者がいることと、発症時期が中継所の稼働と時を同じくしていることから中継所が有害物質を発生していることが疑われました。
 東京23区では一般廃棄物を「可燃ゴミ」および「不燃ゴミ」に分けて収集し、「可燃ゴミ」は紙ゴミと生ゴミで焼却処分しています。「不燃ゴミ」は燃やさないゴミと定義し、ビン・カン・プラスチック類、革製品などです。
 中継所は、処分場がある東京湾岸に運搬するのに便利なように、「不燃ゴミ」を圧縮して容量を減らすための施設です。9台分の収集車の内容物を1台のコンテナ車に詰め込みます。同様の施設は、中継所建設前に23区内にすでに4カ所あり、住民からの訴えは特にないとの東京都の説明でした。

2.有害物質発生の原因
 他の施設ではさほどの被害がないのに杉並中継所で有害物質がなぜ大量発生したのかが争点になっていますが、設計に問題があったのだと私は考えています。
 排気系では集塵機および活性炭によるフィルターが設置されていますが、換気系では換気回数15回/時間で作業空間の換気を行っているのに、何ら有害物質の除去処理がされていなかったのです。このような大量の換気量では減圧状態になり、ゴミの中のカンやビンに残っている内容物も容易に吸引されることは素人でも想像できます。他の施設では、大型の換気扇だけで強制排気はされていません。
 実際には吸引だけが問題ではなく、物質同士が摩擦によって化学合成反応がおき、膨大な種類の有害化学物質が発生することがわかりました。この現象は、プラスチックが生産される以前からゴム製品などで知られていた現象とのことです。プラスチック自身は非常に不安定な物質の混合物であり、さらに1,000種以上の添加物があり、圧力をかけなくても空気中に蒸発する成分が多く含まれています。どのような物質が発生するのかは企業秘密という壁もあり、現段階では検証もできません。
プラスチックスを圧縮すると有害物質が発生することは、圧縮業者の間では常識となっているようです。現在は換気系もフィルターが設置されていますが、それでも完全に有害物質を除去するのは不可能です。
 毒性に関しても、化学商品すらわずかしか調査されていないのですから、中継所で新たに合成される物質の毒性については分かるはずがありません。さらに、そのような物質が大気に排出されると、窒素、酸素、光によってとんでもない有害物質が合成されます。濃度が一向に減らず、問題となっている光化学オキシダントがその例です。

3.現在の環境行政で私たちの健康は守られるか
 東京都並びに杉並区による調査によって、中継所から排気される有害物質が中継所周辺の空気から測定されました。分析方法が明らかな物質の濃度や、そのほかに定性分析といって量はともかく、どんな物質があるかが分析されました。物質名がわかったのは約200種くらいで、名前も分からない物質がその倍ぐらいありました。
 対象物質の性質がわからないと定量的に分析するのは難しいので、空気中の化学物質をすべて分析することは不可能ですし、濃度は連続的に測定をしない限り本当のことは分かりません。それに対して、大気の化学物質管理はまことに貧困です。環境基準はほとんどないに等しいのです。環境基準自身は罰則があるわけではなく、あまり役に立ちませんが、基準があると一応測定をしますので、どんな物質が存在しているかわかるので大事です。中継所周辺域では、ジクロロメタンやベンゼンが基準を超えることがあります。
 重要なのは排出基準です。施設から排出する有害物質の規制が行われていますが、種類が少ない上に、濃度で規制されることが多く、その濃度が考えられないほど高い値に設定されているのです。たとえば、ベンゼンでは環境基準では3μg/m3ですが、東京都の環境確保条例による排出基準では100,000μg/m3で、環境基準の実に3万倍以上です。
 中継所では、排気塔からも換気塔からもそのような高い濃度の物質は、ベンゼンやそれ以外でも排出されていません。排出基準以下です。ですから「条例違反ではない」ということで、現在も中継所は稼働しているのです。
 東京都による調査の結果、大量の有害物質が中継所から排気されていることがわかりましたが、東京都はこれらの排気ガスは1万倍に拡散希釈すると説明しています。しかし、中継棟上部から2.9mの高さの換気塔から大量排気された、温度が低く、重いガスが拡散希釈するわけがなく、川の流れのように南の斜面に沿って住宅地域に流れていると想像できます。風がある時は周辺に拡散して、影響は6km範囲にも及んでいるとのことです。
 風がない時や夜間は空気が地上に降りてくるので、周辺はさながらガス室状態です。そのうえ、換気系排気は24時間連続運転しています。それでも基準以内なのです。

4.事件直後の健康調査
 稼働を開始した1996年の7月に、住民の被害の訴えで杉並区環境保全課は中継所周辺で訪問による健康調査を行いました。その結果、864名中123名が不調を訴えていることがわかりました。さらに同年11月には、アンケート調査で対象者5,800名中回答者が1,392名あり、健康不調の訴えは319名ありました。
 それに対して、杉並区保健所は保健所に訴えた(有訴者という)住民68名中症状のあった人を52名とし、発症時期の図を作成しました。杉並区は「有訴者を健康不調者として整理把握」を行った結果、この図が一人歩きしてしまったのです。その図は7月に最大の12名が発症したことを示し、以降鎮静したように見せかけるものでした。
 実際には、被害者グループが1996年から毎年行った健康調査では600名以上の被害者がいるのに対して、被害規模の矮小化を図ったのです。現在も被害を訴える人が上井草保健センターを訪れると、この図が示され、「被害は沈静化しています。安心してください」と説明されています。

5.東京都の硫化水素原因説の成立
 この有訴者の発症時期の図は、東京都にとっては格好の材料でした。施設内で溜めた汚水中の硫化水素が下水道を経由して周囲に被害を与えた、というストーリーをでっちあげるのに好都合だったのです。すなわち、汚水の下水への放流を7月に中止した結果、被害がなくなったというのです。
 2000年3月に、東京都は硫化水素が原因として石原都知事が謝罪し、損害賠償を約束したものの、申請した6名は「硫化水素の症状に該当しない」として全員請求を却下されました。硫化水素が原因ではないので当然のことです。また、2002年に公害等調整委員会の裁定が下った後で、下水道の流下方向が異なる練馬区にまで範囲を拡げ、再度損害賠償を表明しました。しかし、1名が申請したものの「因果関係が認められず」として対象外にしたことが報告されました。現時点では、この事件で損害賠償を得た人はいません。
 なお、支援科学者グループはグループを結成した2001年7月に、東京都に対して「硫化水素説は誤り」と申し入れしました。もちろん何の反応もなく、当局によって握りつぶされました。
 大変驚いたことには、東京都が現在も硫化水素説を堅持していることが判明したのです。支援科学者グループが国、東京都、杉並区に健康調査を陳情し、東京都議会で審議の際、環境局の答弁(2004年6月10日の環境・建設委員会)で明らかになったのです。その後も、小児の環境保健に関する国際シンポジウムで、都の職員が「都では杉並病の原因は硫化水素ということになっています。それ以上はお答えできません」と明言して、会場の参加者を驚かせました。

6.杉並区の疫学調査と現在の被害
 話は前後しますが、1999年5月に杉並区が本格的な疫学調査を行っています。それによると、初期に関しては他の3地区(永福、久我山、和田)に比べて井草地区の被害が明らかになったのですが、発症時期を問う設問に関しては計算を誤り、調査時の発症は他の地区と同じとの結論を公表しました(後述資料集参照)。その後、支援科学者グループで保健所の資料を精査したところ、正しい結果を保健所自身が計算していたことがわかったのです。現在も被害が続いていることが明らかになることを恐れ、改ざんしたものと私は思っています。
 2006年に報告された「杉並病をなくす市民連絡会報告」によっても、転入してきた住民に被害を訴える人がいることが明らかになっています。また2004年に、支援科学者グループが1996年以降のアンケートに回答をいただいた被害者約600名に対して郵送でアンケート調査したところ、189通が移転先不明で戻されました。その方たちの多くは、中継所を中心に半径500mの地域に住んでいた人たちです。耐えきれずに転居されたのだと思われます。化学物質過敏症から逃れる最高の手段は、転地だからです。
 杉並区も東京都も国も、我々や市民連絡会による再三の健康調査の要求を拒否していますので、行政による健康影響調査は報告されておりません。

7.公害等調整委員会の原因裁定
 1997年、被害者18名が原因裁定を求めた公害等調整委員会においては、被害者側の参考人だけでなく、東京都側の参考人も中継所と被害との因果関係を認めました。その結果、2002年6月26日、被害を「化学物質を特定せず、中継所の稼働と健康被害との因果関係を認める」という画期的な結論を引き出すことができました。しかし、4および6で説明した杉並区の健康に関する報告によって、被害発生時期は稼働年の8月までと限られました。
 去る6月10日に、支援科学者グループは「杉並中継所稼働による被害10周年報告会-杉並病は終わっていない」を開催しました。当日の資料には、報告集のほかに付属資料1.杉並病に関する歴史や資料のリスト、付属資料2.被害者の手記を付けました。その中の付属資料1.に裁定文の「意見」も転載しました。これらは近々、支援科学者グループのホームページwww.suginamibyo.comに掲載する予定です。
 中継所は2000年に杉並区に移管され、区は環境調査を行い、ホームページに公表しています。中には環境基準を超える濃度も見られます。自然にはない化学物質で周囲は満たされているのです。健康調査は影響がないという前提のもとで公には行われていませんが、先に述べたように被害は報告されています。しかし、中継所は排出基準以下ということで、中野区、練馬区および杉並区の不燃ゴミを集めて未だに稼働しています。
 2008年度からの東京23区廃プラスチック全面焼却を受けて中継所がどのようになるかは、今後の住民の活動次第だと思います。



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