<背景>これまで人間が創り出した多くの化学物質は私たちに豊かで快適な生活をもたらしてくれました。しかしその半面、私たちの体内だけでなく地球全体がこれまで存在しなかった人工化学物質で汚染されています。この事実と近年のガン、心臓血管系疾患、呼吸器系疾患、喘息、アレルギー、生殖器系疾患、脳神経系の発達障害などの増加及び野生生物に見られる異常との関連が強く疑われています。安全性が確かめられていない多数の化学物質を大量に使用続けることを許し、有害性がわかっても迅速に対応できないこれまでの化学物質管理のあり方を早急に見直す時がきています。

<国際的動向>この問題はすでに1992年の地球サミットで合意された「アジェンダ21」の第19章でも取りあげられており、各国政府は化学物質管理において予防的アプローチ、製造者責任の原則などの採用を検討することが勧告されていました。欧州連合(EU)においては世界に先駆け1998年に欧州理事会がEUの化学物質規制の見直しを指示し、2003年10月に予防原則を取り入れた新しい化学品規制案REACHがまとめられ、現在内容の検討が行われています。

<日本の対応>EU、米国に次ぐ化学物質生産国である日本は過去に水俣病、カネミ油症などの悲惨な経験を持ち、今日においても前述するような化学物質との関連が疑われる疾患や異常等は増加の一途をたどっています。然るに日本政府においては見直しに向けた同様の動きがまったく見られないばかりか、米国と歩調をあわせREACHを弱体化させようとしています。

<汚染のない地球への道>化学物質は国境を自由に行き来するものであり、化学物質汚染のない地球を実現するためには、一部の地域だけでなく世界全体が足並みをそろえ化学物質管理の改革に取り組むことが不可欠です。ことに世界の化学物質生産の70%を占める欧州、米国、日本が率先することが重要です。

よって私たち日本の市民は、EU及び日本政府に対し以下のことを要望します。
1.欧州連合
EUのREACHに対する取り組みを化学物質汚染のない地球への大きな第一歩として高く評価するとともに、人の健康と環境の安全を高いレベルで確保するという当初の目標が後退することなく成立されることを強く願う。

2.日本政府
REACHに反対する日本政府および一部の産業界は、短期的な利害のために人の健康や生態系の安全を犠牲にするような干渉を即刻中止すべきである。また、わが国においても次のような観点を考慮に入れ、市民参加のもとで化学物質制度の包括的な見直しに早急に取り組むことを求める。
 @ 予防原則を中心にすえ、より安全な物質等への代替を促進させる
 A 安全性の不確かな化学物質を使い続けることをやめる
 B 安全性の立証責任を行政から事業者へと転換し、汚染者負担の原則など製造者責任を強化する
 C 製品中の化学物質情報の開示など、市民の知る権利を保障する
 D 規制等の政策決定への市民参加を制度化する

2004年11月23日
有害化学物質削減ネットワークダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
化学物質問題市民研究会WWFジャパングリーンピース・ジャパン
全国労働安全衛生センター連絡会議
国際市民セミナー「化学物質汚染のない世界をめざして」参加者有志