高濃度有毒化学物質がブリティッシュ・コロンビアを汚染
PollutionWatch がウェブで発表:パルプと製紙工業のダイオキシン・フラン排出
情報源:PollutionWatch, November 27, 2003
High Levels of Toxic Chemicals Pollute British Columbia
Pulp and paper industry continues to produce dioxins and furans,
PollutionWatch web site shows
http://www.pollutionwatch.org/media/20031127.jsp
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2003年11月30日



 〔トロント、オンタリオ〕 ブリティッシュ・コロンビア州は有毒な汚染物質ダイオキシン類とフラン類をカナダで最も多く排出している。ダイオキシン類とフラン類はがん、先天性障害、その他の深刻な健康問題に関連する物質である。これら汚染物質の大部分は製紙及びその関連産業によって排出されている。

カナダのダイオキシン・フラン類汚染の上位10傑

 カナダのダイオキシン・フラン類汚染の上位10傑リストを本日、3つの環境団体( Environmental Defence Canada, Canadian Environmental Law Association 及び Canadian Institute for Environmental Law and Policy )が発表した。
 これらの団体はカナダ全土の汚染物質排出施設に関する最新のカナダ連邦政府のデータ(NPRI)を分析する新しいウェブサイト http://www.PollutionWatch.org を開発したが、このリストはこのウェブサイトによって作成されたものである。
 ダイオキシン・フラン類排出上位10傑のうち、4施設がブリティッシュ・コロンビア州(B.C.)にあり、ノルスケ・スコン・カナダ社は、このリストに示すようにカナダに合計3つの施設を持っている。

 「ノルスケ・カナダ社はカナダにおけるパルプ・製紙工業の大手の一つであり、彼らは環境を汚染している施設からの有害化学物質の排出を大幅に削減するようもっと努力をする必要がある」 と ”環境保護カナダ(Environmental Defence Canada)” の代表リック・スミスは述べた。



 ダイオキシン類とフラン類は最も危険な物質に属することで知られている。産業プロセスの副生物として、ダイオキシン類とフラン類は環境中に存在し、食物連鎖を通じて蓄積し、発生源から遠く離れた地点まで移動する。科学的研究によりダイオキシン類は子どもを含む人間や動物の、がん、先天性障害、及び、神経系・免疫系障害と関連することが分かっている。

 カナダ環境保護法(CEPA)により、これらは ”有毒” と分類されており、1995年以来、連邦政府は、環境と人間への影響を考慮して、ダイオキシン類とフラン類は ”実質的に排除” されるべきものとしている。カナダ環境大臣諮問委員会はダイオキシン類とフラン類に関する規制措置を2001年5月に導入した。同時にカナダは、残留性有機汚染物質 (POPs) に関するストックホルム条約 (ダイオキシン類やフラン類を含む 12 種の POPs を排除することを目指した国際条約) を世界で最初に批准した国である。

 PollutionWatch のメンバー団体はブリティッシュ・コロンビア(B.C.)政府に対し、ダイオキシン類とフラン類の排出を同州内の全ての企業、特にパルプと製紙産業からなくす措置をとるよう要求した。環境団体は、数年間、よりクリーンで安全な製造方法をブリティッシュ・コロンビアのパルプ及び製紙産業界に提案してきたが、政府と産業界は、安価である決してダイオキシン・フラン類を除去できないプロセス出口での解決方法に固執し続けた。

 「クリーンな製造法は、環境、我々の健康、そしてビジネスにとっても納得のいくものである。ダイオキシン・フラン類が生成しないよう防ぐことは、それらが生成されてから処理するよりはるかによい解決方法である」とスミスは述べた。

 パルプとその関連産業は、発がん性物質アセトアルデヒド、発がん性及び発達毒性ヘキサクロロベンゼン、及び発達毒性水銀などの CEPA 有毒物質の排出にも責任がある。

 ブリティッシュ・コロンビアにおけるパルプ及びその関連産業による CEPA 有毒物質の排出は、1995年の146,830 kg から2001年の248,961 kg 、約69%増加しているが、その多くは大気に排出されている。排出量の増大は1999年に汚染データの報告方法が改善されたことによる影響が大きい。しかし、1999年から2001年に、この産業界の CEPA 有毒物質の排出増加量は30,000 kg以上である。

 「この数年間、パルプと製紙産業界は有毒物質の排出に目を向けて大きな努力を払ってきた。しかし、連邦政府がダイオキシン類とフラン類を有毒物質として特定し、ストックホルム条約の下、世界がダイオキシン類やその他の POPs の排除を約束しているのだから、この業界はダイオキシン類、フラン類、その他の有毒物質を生成しない汚染防止戦略を実施すべきである」 とカナダ環境法協会(Canadian Environmental Law Association)代表ポール・ムルドーンは述べた。

 最新の全国汚染物質排出目録2001年度版(National Pollutant Release Inventory (NPRI)in 2001 )による化学物質リスト及びその健康への影響については、下記ウェブサイトを参照ください。
http://www.pollutionwatch.org/tools/healthMatrix_print.htm

”汚染監視 PollutionWatch” について

 ”汚染監視 PollutionWatch (http://www.PollutionWatch.org) ”は、”環境保護カナダ(Environmental Defence Canada)”、”カナダ環境法協会(Canadian Environmental Law Association)”、 及び、カナダ環境法及び政策研究所(Canadian Institute for Environmental Law and Policy)の共同プロジェクトである。そのウェブサイトは、カナダ環境省(Environment Canada )による全国汚染物質排出目録(National Pollutant Release Inventory (NPRI) から収集したデータに基づき、カナダ全土の汚染状況を追跡している。
 PollutionWatch のウェブサイト訪問者は NPRI に報告された全国の施設を特定すること、1995年から2001年の汚染の傾向を知ること、州毎、自治体毎、産業分野毎、企業毎に汚染施設の順位リストを訪問者自身が作成すること、法規制情報を入手すること、化学物質情報を入手すること、施設及び連邦政府環境大臣に連絡することができる。

 PollutionWatch についてもっと知りたい方は下記に連絡ください。
 Jennifer Foulds, Communications Director, Environmental Defence Canada,
 416-323-9521 ext. 232, jennifer@edcanada.org

 Elizabeth Chiu, Communications Officer, Environmental Defence Canada,
  416-323-9521, ext. 222, elizabeth@edcanada.org

 パルプ及び製紙産業についてもっと詳しく知りたい方は下記に連絡ください。
 Delores Broten, Executive Director, Reach for Unbleached!,
 250-935-6992, 250-205-0056 (cell)


訳注:
 日本でも PRTR 情報に基づき汚染物質排出状況を知ることのできるものとして、 ”有害化学物質削減ネットワーク(Tウォッチ)” のウェブサイトがあります。
http://www.toxwatch.net/



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