環境健康正義センター(CHEJ )
ニュース・リリース 2007年7月10日
米アカデミーの新たな報告 ダイオキシンは有毒
15年間で5回目の見直しで結論
がん、発達障害、及び出生障害を引き起こす


情報源:CHEJ News Release, July 10, 2006
National Academies New Study Concludes Dioxin is Toxic
5th Review of 15 Year-Long Delayed Study Finds Widely Disbursed Chemical
Causes Cancer, Developmental Problems & Birth Defects
http://www.chej.org/dioxin/index.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年7月31日

 米国アカデミー(NA)は、7月11日に過去15年間にわたって数多くの科学審議会が結論付けていたこと、すなわち、ダイオキシンは潜在的に発ガン性化学物質であるということを確認する報告書を発表する。塩素関連産業界は15年間にわたってEPAのダイオキシン再評価の発表を効果的に引き延ばしてきた。ダイオキシンは現在一般の人々体内で見出される値に近いレベルで発達系や免疫系に影響を与えることができる。アメリカ人は誰でも脂肪性食物を摂取する時にダイオキシンを体内に取り込み、ほとんどのアメリカ人は測定可能なレベルでこの化学物質を体内に持っている。

 ”米国アカデミーの今回のレビューでダイオキシンは発がん性があると確認されたが、EPAのダイオキシン再評価は数年前にこの結論を出しており、最近の研究はこの結論にさらに重みを加えていた”−とボストン大学公衆健康学部環境健康学教授リチャード・ラップ博士は述べた。”さらに、ダイオキシンの発がん性影響には安全な’閾値’が存在するようには見えない。EPAが1991年に再評価を開始して以来、ダイオキシンはまた、低レベルで子どもの発達障害、子どもと成人の免疫障害、成人の生殖障害、及び糖尿病のようなその他の多くの健康障害を引き起こすという証拠が蓄積している。”

 ”ダイオキシンの最初の健康評価は1995年に実施された”−と環境健康正義センター(CHEJ )代表のロイス・ギブス述べた。ニューヨーク州ナイアガラ・フォールズ市ラブカナルにおけるダイオキシンを浄化するためのギブスの闘いは草の根の環境健康運動の立ち上げに貢献した。”過去21年間以上にわたって塩素関連産業は何度もレビュー、再評価、及び分析を要求してきた。どの再評価もどのレビューもダイオキシンは深刻な公衆健康の脅威をもたらすという結論を強化する結果と、新たな科学的データを確認した。塩素関連産業はタバコ産業に習って情報を公衆から妨げる戦略をとった。もうたくさんだ。ダイオキシン排出に関わる健康保護的な規制を確立し、汚染の浄化を行おう”−とギブスは述べた。

 ダイオキシンは既知のヒト発がん性物質であり、体内で非常に低レベルでも活性である。環境保護庁(EPA)の科学者らは前からダイオキシン及びダイオキシン様化合物は非常に有毒であると結論付けていたが、この有毒副生物の生成に責任がある産業側の強い連携が、この化学物質の15年にわたる研究の進展を引き延ばすことに成功してきた。

 ”ダイオキシン再評価”と呼ばれるこのEPAの研究は未だにドラフトの状態であり、EPAによる連邦政府の規制への展開をじゃましてきた。しかし、EPAは最近、フロリダ州ペンサコーラのエスカンビア木材処理会社の跡地スーパーファンドにおいて土壌浄化目標をダイオキシン30pptと設定して、大きな先例を作った。

 ”政府が15年間この化学物質について調査している間に、すでに次の世代の子ども達がダイオキシンでいっぱいの土地に囲まれるようになった。それは、彼らの家、裏庭、駐車場、公園、魚、そして川の中に存在する”−とミシガン州サギナウ湾流域のダウケミカル社ダイオキシン汚染の浄化を要求している環境監視団体であるロン・ツリー協議会のミカエル・ハード・リディックは述べた。”これからどれだけ多くのレビューをするのだろうか? ダウケミカルはダイオキシンの毒性について人々を混乱させるために煙幕を張っている。”

 ダウケミカル社はダイオキシンの毒性を否定することに特に積極的である。特に塩素系化学物質製品への依存が大きい同社の製品ラインは地域社会をダイオキシンで汚染する結果となっている。ダウは五大湖のひとつヒューロン湖に流れ込む河川を50マイル(80キロメートル)以上の長さにわたって汚染しているミシガン本社のダイオキシンについて大きな責任がある。同社は、責任を小さくするために浄化基準を弱める試みを繰り返し行う一方、連邦政府レベルでは不確実性であるということを示そうとしている。同社はミシガン州の住宅地浄化基準、90pptと戦ってきたが、連邦政府は最近フロリダ州の跡地で30pptを基準値として用いた。

 米国アカデミー(NA)のレビューは、2003年EPA歳出法案に対する最後の修正の結果であり、その修正は、もしホワイトハウス省庁間タスクフォースが報告書ドラフトのレビューに関し合意に達しなかった場合には、米国アカデミー(NA)がEPAの再評価をレビューすることを求めるものであった。この米国アカデミー(NA)のレビューは、化学会社、パルプ・製紙会社、精錬及び焼却炉会社を含むダイオキシンを生成する強力な産業界によって大規模に画策された一連のレビューにおける最後のものであった。

 ”塩素関連産業の介在を示す指紋は初期の科学的レビューで証拠に上がっており、今回のレビューでも心配された”−とCHEJの科学ディレクター、ステファン・レスターは述べた。”過去のレビューにおけるダイオキシン議論の主要な点は、ダイオキシン暴露のあるものは非常に小さいので危害を引き起こさないと仮定するがんリスク計算モデルを使用することを生成産業側が主張したことであり、EPAが過去に繰り返し拒絶してきた危険なアプローチである。このモデルの有効性に関する議論は、ダイオキシン生成産業によって18年間、どのレビューでも繰り返され、報告書の完成を遅らせていた。”

 ダイオキシン汚染は、焼却炉、銅精錬所、パルプ製紙工場、化学工場、又は塩素を使用するその他の産業のようなダイオキシン発生源の地域で特に高い。塩化ビニル(PVC)の処分は、ダイオキシンを生成する塩素系個体廃棄物の中で最大の発生源である。PVCは4つの主要な焼却における最大の塩素系物質である。自治体固体廃棄物焼却、庭でのドラム缶焼却、医療廃棄物焼却、及び二次的銅精錬でダイオキシンの大気排出の概略80%を占める。ルイジアナ州のモッシビルにあるPVC化学プラントの近くで生活する居住者らは一般のアメリカ市民に比べて血中のダイオキシン濃度は4倍高かった。ダイオキシンは数百あるスーパーファンド有毒廃棄物場で見いだされる。それはラブキャナルの汚染物質であり、ベトナムで散布された枯葉剤であるエージェント・オレンジに含まれ、ベトナム帰還兵に大きな健康影響を与えた物質である。ダイオキシンはミルク、チーズ、牛肉、豚肉、魚、鶏肉、鳥、鹿、七面鳥、リス、虫、さらには土壌や下水堆積物にも見いだされている。

さらなる詳細情報:

米国アカデミー報告書
米EPAのダイオキシン公衆健康評価の年代記
ダイオキシンとは何か?
CHEJ ダイオキシンに関する報告書 アメリカの選択 エグゼクティブ・サマリー


訳注
National Academies News July 11, 2006 / EPA ASSESSMENT OF DIOXIN UNDERSTATES UNCERTAINTY ABOUT HEALTH RISKS AND MAY OVERSTATE HUMAN CANCER RISK (後日翻訳予定)



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