Science and Environmental Health Network (SEHN)
1998年1月26日 予防原則に関する ウィングスプレッド会議/声明 情報源:Science and Environmental Health Network Wingspread Conference on the Precautionary Principle August 5, 2013 https://www.sehn.org/sehn/wingspread-conference-on-the-precautionary-principle 訳注:1998年1月26日付のオリジナルのリンク先は http://www.sehn.org/wing.html であったが、 2013年8月5日付で現在のリンク先に変更された。 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2003年7月11日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/wingspread/wingspread.html 予防原則に関するウィングスプレッド会議 【1998年1月26日】先週末、ウィングスプレッドのジョンソン基金本部での歴史的な集会で、科学者、哲学者、法律家、環境活動家たちは、人々の健康と環境に関する政策決定において予防原則(Precautionary Principle)が必要であるとの合意に達した。 この原則で重要なことは、たとえ科学的な確実性がなくても、先行措置(anticipatory action)をとるよう促がしていることである。 3日間にわたる会議の結論として、多様な人々の集まりであるこのグループは、政府、企業、共同体、そして科学者たちに政策決定にあたっては予防原則を適用するよう要求する声明を発表した。 会議参加者32名の中には、アメリカ、カナダ、ヨーロッパからの条約交渉家、活動家、学者、そして科学者らがいた。 会議は、国際条約のベースとなることが増えてきた予防原則(precautionary principle)の定義、及びその実施を討議するために開かれた。予防措置(precaution)の考え方は、連邦政府の資金を使用して実施される大きなプロジェクトを立ち上げる前に環境への影響についての報告を求めるなど、いくつかのアメリカ政府の政策に反映されていた。しかし、ほとんどの既存の法や規制においては、未然に防止する(preventing it)ことよりも起きてから被害に対応する、あるいは管理することに焦点が向けられていた。 グループは、このような政策では人々や自然界を保護するのに十分ではないと結論付けた。 参加者たちはリスク評価やコスト−ベネフィット分析のような現在のやり方は新製品や新技術に対し証拠不十分のため有害性はないとする結論になり、後にそれが有害であると証明されるかもしれないということを指摘した。 また、被害を受けたときに被害者やその支持者たちが、製品や行為に責任があると立証することが困難であるとした。 予防原則は、行為に責任ある者が有害性がないことを証明し、もし被害が起きたならその責を負うよう主張して、立証責任を行為者に移行する。 この原則が抱えている科学的不確実性、経済性、環境と人々の健康に関する問題などが、この原則を非常に複雑なものにしている。我々は、これらに関するあなたの意見と対話を歓迎する。 予防原則に関するウィングスプレッド合意声明 有毒物質の排出と使用、資源の開発、環境の物理的変更は、人間の健康と環境に影響を及ぼす重大な意図しない結果をもたらした。それらにより引き起こされる懸念には、地球気候変動、成層圏オゾン枯渇、有毒物質及び核物質による世界中での汚染とともに、学習障害、喘息、がん、先天性障害、種の絶滅などがある。 我々は、既存の環境規制や施策は、特にリスク評価に基づくものは、人間の健康と、より大きなシステムで人間はそのほんの一部である環境を適切に守ることができなかったと信じる。 我々は、人間や世界中の環境へ与える被害が大きく深刻なので、人間の行為に対し新しい原則を導入する必要があるという、確かな証拠があると信じる。 我々は人間の行為が危険を伴うかも知れないということを認識しているので、人々は最近の歴史における事実を鑑み、もっと注意深く進める必要がある。企業、政府、組織、共同体、科学者、個人は、全ての人間の行為に対し予防的アプローチ(precautionary approach)を採用すべきである。 従って、予防原則(Precautionary Principle)を実施する必要がある。 ある行為が人間の健康あるいは環境への脅威を引き起こす恐れがある時には、たとえ原因と結果の因果関係が科学的に十分に立証されていなくても、予防的措置(precautionary measures)がとられなくてはならない。 このような状況においては、証明の責務は市民にではなく、行為を行なおうとする者にある。 予防原則(Precautionary Principle)を適用する過程は公開され、知らされ、民主的でなくてはならず、影響を受けるかもしれない関連団体を参加させなければならない。また何もしないということも含めて代替案について十分に検討しなくてはならない。 会議主催者 予防原則に関するウィングスプレッド会議は、 科学と環境健康ネットワーク(Science and Environmental Health Network)、 ジョンソン基金(Johnson Foundation)、 アルトン・ジョーンズ基金(W. Alton Jones Foundation)、 C.S.基金(the C.S. Fund )、及び マサチューセッツ・ローウェル大学の持続可能な製造のためのローウェル・センター(Lowell Center for Sustainable Production at the University of Massachusetts-Lowell) によって召集された。 ウィングスプレッド会議参加者
訳注:補足情報 藤原書店 PR誌「機」2003年4月号 予防原則とは 雑誌「環境ホルモン」編集委員 1991年7月の第一回ウィングスプレッド会議に集まった科学者たちが、1998年1月の第七回会議のテーマとして、予防原則を選んだのは、自然の成り行きだったことがわかる。この会議の成果は、Raffensperger,C.,and J.Tickner,eds.,Protecting Public Health and the Environment:Implementing the Precautionary Principle,Washington D.C.:Island Press,1999.として刊行され、予防原則論に関する基本文献のひとつとなっている。 |