欧州環境庁(EEA)2013年1月 レイト・レッスンズ II
 21. 携帯電話と脳腫瘍リスク:
早期の警告、早期の行動? (概要編)

Lennart Hardell, Michael Carlberg and David Gee

情報源:European Environment Agency
EEA Report No 1/2013 Part C Summary
21 Mobile phones and brain tumour risk: early warnings, early actions?
Lennart Hardell, Michael Carlberg and David Gee
http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2/late-lessons-chapters/late-lessons-ii-chapter-21

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico
掲載日:2013年2月19日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/21_Mobile_phones_summary.html

 2011年、世界保健機関の国際がん研究機関(IARC)は、携帯電話及び同様な非電離電磁界(EMFs)を放射するその他の機器からの放射電磁界をグループ2B、すなわち、”可能性ある”ヒト発がん性と分類した。それより9年前に、IARCは架空送電線からの電磁界を同じ分類とした。

 携帯電話に関するIARCの決定は、携帯電話使用と脳腫瘍の可能性ある関係についての二つの人間のケース・コントロール研究に主に基づいている。IARC のInterphone 研究と、スウェーデンのハーデル(Hardell)グループの研究である。双方は補完的であり、一般的に相互支援的である。本章は、これら二つのグループによる研究の顛末、及び、2011年のIARCの決定をもたらすレビュー及び議論はもちろん、異なる結論に至るその他の研究について記述する。本章はまた、異なるグループが権威あるIARC評価をどのように非常に異なって解釈したかについても記述する。

 現在までに、携帯電話と脳腫瘍に関するいくつかのメタアナリシス及びレビューがあり、それらはこの問題に疫学手法を適用することの難題、現在までに発表された主要な研究の方法論的限界、及びそれらの結果の解釈の難しさを述べている。国の脳腫瘍発症データがケース・コントロール研究で観察された携帯電話と脳腫瘍の関係の適切さ又は不適切さを判断するために用いることができたとの示唆がある。しかし、方法論的な欠陥に加えて、記述的な研究ではわからない脳腫瘍の曝露におけるその他のリスク要素の変化のように、全体の発生率に影響する他の要素があったかもしれない。がんの発生率は、この病気の開始、促進、及び進捗に依存する。無線周波数電磁界発がん性のメカニズムは不明確なので、そのことは脳腫瘍発生率に関する記述的データには限界があるという見解を支持する。

 本章は、様々な研究の考慮またIARCの発がん性分類の考慮に対する携帯電話産業の緩慢さ、及び、メディアの潜在的な健康リスクに関する公衆への堅固で一貫した情報提供の欠陥を指摘している。IARCの発がん性分類もまた、この広範な放射源から公衆の健康を保護する責任に関する政府の認識にどのような影響をも与えていないように見える。

 携帯電話通信の便益はたくさんあるが、そのような便益は、広範な危害の可能性を考慮することを伴う必要がある。頭部曝露を低減するための現在の予防的行動は、存在するかもしれないどのような脳腫瘍リスクの大きさと深刻さを制限するかもしれない。曝露を削減することはまた、このケース・スタディでは考慮されなかった他の可能性ある危害を低減するのに役立つかもしれない。

 無線電話を長時間、激しく使用する作業者の中に神経膠腫(グリオーム)又は聴神経腫瘍を発症して補償されるべき人たちがいるという証拠が増大している。世界で初めての訴訟判例が2012年10月12日に確定した。イタリア最高裁は、社会保険機構(INAIL)は、12年間無線電話を使用しており脳に神経腫ができたビジネスマンに労働者補償を適用しなければならないとする以前の判断を再確認した。



化学物質問題市民研究会
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