Euronews 2025年2月13日
ストローがいかにして世界的なプラスチック 汚染危機の永続的な象徴となったか ポーシャ・ジョーンズ 情報源:Euronews, February 13, 2025 How straws became an enduring symbol of the global plastic pollution crisis By Portia Jones https://www.euronews.com/green/2025/02/13/how-straws-became- an-enduring-symbol-of-the-global-plastic-pollution-crisis 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2025年2月19日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/plastic/news/250213_Euronews_How_straws_ became_an_enduring_symbol_of_the_global_plastic_pollution_crisis.html カメの動画が話題となり、世界的な運動が巻き起こり、何百万人もの人々がプラスチック廃棄物との戦いに加わった。 2015年、鼻孔に4インチ(約10 cm)のプラスチックストローが刺さった苦しむウミガメの衝撃的な動画が話題となり、プラスチックフリー運動は大きな勢いを得た。 何百万人もの人が視聴したこの悲痛な瞬間は、世界的な抗議を引き起こし、何百万人もの人々がプラスチック廃棄物との戦いに加わるきっかけとなった。 しかし、ストローはどのようにして使い捨てプラスチックに対する世界的な運動の象徴となったのであろうか。そして、この重要な環境キャンペーンの将来はどうなるのであろうか? プラスチックはどのように世界を変えたか わずか100年の間に、プラスチックは世界を変える科学的成果として称賛されることから大きな環境脅威として広く批判されるようになった。 その起源の物語は、最初の真の合成プラスチックであるベークライトが作られた1907年に始まった。この画期的な発明は、材料科学のまったく新しい時代を切り開いた。 その汎用性とコスト効率により、プラスチックは数え切れないほどの産業で欠かせない素材となった。 世界のプラスチック生産量は 1950年代から急増しているが、この長持ちする素材の処分についてはほとんど考慮されていない。その結果、その多くは埋め立て地、川、海に行き着く。 国立海洋学センターによると、毎年 3億トン以上のプラスチックが生産されている。このプラスチックの 1,000万トンが海に流れ込み、科学者は生態系と海洋生物に壊滅的な影響を与えると警告し、心配する消費者は注目している。 28か国で2万人を超える参加者を対象に実施された2022年の世界的な調査では、プラスチック汚染に対する対策への強い支持が明らかになった。 回答者の 75%以上が使い捨てプラスチックの禁止を支持し、88%がこの問題に取り組む国際条約を支持しており、より持続可能な選択肢が明確に求められていることが明確になった。 瞬く間の拡散と世論の圧力 決定的な瞬間は、海洋生物学者のクリスティン・フィゲナーが、血まみれの鼻孔から4インチ(約10cm)のプラスチックストローを苦労して取り除かれ苦しむウミガメの映像をアップロードした2015年だった。 プラスチックはウミガメの鼻腔の奥深くに詰まって喉まで伸び、呼吸と嗅覚を著しく妨げていた。これらは、餌を探すウミガメにとって極めて重要な感覚である。 この異物はウミガメの方向感覚と回遊を妨げ、交尾相手を見つける能力さえ損なっていた可能性もある。 ”食べるのにも苦労したかもしれない”とフィゲナーはプラスチック汚染連合(Plastic Pollution Coalition)に語った。 ”固いスパゲッティを吐き出しながら笑おうとすると、鼻に詰まってしまうようなものです。” この動画は衝撃的で生々しいため、すぐに拡散した。その現本の動画は現在 YouTube で 1億1,000 万回以上再生されており、世界的なプラスチックフリー運動のきっかけとなり、プラスチックストロー 1本が及ぼす影響について認識を高めた。 ”ストローフリー”ソーシャルメディアキャンペーンや環境保護団体も、この問題を広める上で極めて重要な役割を果たした。彼らは、企業や政府に即時の対策を求める幅広い世論の抗議を引き起こした。その後数年間で、多くの企業、国、機関が使い捨てプラスチックの消費を禁止または削減した。 なぜストロー? 少量だが不必要な廃棄物の象徴 ストローはプラスチック汚染危機の主な原因のひとつとして浮上しており、ボランティアが懸命に収集している無数のボトル、バッグ、カップとともにビーチに頻繁に現れている。 環境保護論者は驚くべき統計を取り上げている。アメリカ人だけで、1日に 5億本のストローを使用している。ビ・ストロー・フリー(Be Straw Free)が提供したこの驚くべき数字は、消費者の廃棄物の規模の大きさを強調している。 ストローはまた、使い捨ての利便性の典型でもあり、数分しか使用されず、不注意に捨てられることがよくある。 理論上はリサイクル可能なプラスチックボトルとは異なり、ストローは小さすぎて軽量であるため、効果的に処理できない。 ストローは簡単にリサイクル システムをすり抜けて海に流れ込み、海洋生物に致命的な影響を与える可能性がある。 WWF によると、プラスチック製ストロー 1本が分解されるまでに最大 200 年かかるため、その環境への影響は、使用された瞬間よりもはるかに長くなる。 産業用漁具などのより複雑なプラスチック廃棄物とは異なり、ストローを捨てても、個人的な犠牲が最小限で済むため、消費者にとって負担のない行為である。このように明確で実行可能な目標があるため、この運動は世界中で急速に勢いを増した。 これに応じて、持続可能なストローの市場も生まれた。消費者がプラスチック製のものから生分解性のより高いものに切り替えるにつれて、再利用可能な竹製ストローや金属製ストローの人気が高まった。 政治と企業の対応 使い捨てプラスチックとの戦いは世界的に勢いを増しており、世界中の国々が、それらが脆弱な生態系に与える害を認識している。 英国、欧州連合加盟国、タイ、ケニア、中国などの国々は、使い捨てプラスチックを制限または禁止する法律を導入している。 2021年7月、すべての EU 加盟国は、使い捨てのプラスチック製の皿、カトラリー(ナイフやフォーク)、ストロー、風船の棒、綿棒を禁止した。 (訳注:Deutsche Welle (DW) 2021年7月3日 EU の使い捨てプラスチック禁止について知っておくべき 5つのことがら|当研究会紹介) これらの新しい措置は、プラスチック廃棄物を削減するための世界的な共同の取り組みと、環境破壊と戦うために緊急の法律が必要であるという認識の高まりを反映している。 企業も注目した。スターバックス、マクドナルド、その他の多国籍企業は、すぐにプラスチックストローを段階的に廃止し、紙の代替品に置き換え始めた。一部のファストフードチェーンも、ストローの必要性を完全になくすために蓋のデザインを変更した。 これらの変更は、企業の責任の変化を示すものであったが、議論も巻き起こした。 一部の批評家らは、ストローに焦点を当てることで、より大きな問題、つまり大規模な産業用プラスチック汚染から注意が逸らされていると主張した。企業からの抵抗はあったものの、この新しい禁止措置は、不必要な使い捨てプラスチックに取り組む前例となった。 反プラスチックストロー運動は今、どのような状況にあるか? プラスチックストロー禁止の成功の可否は、影響をどのように測定するかにかかっている。ストローは海洋プラスチック廃棄物の約 0.025%を占めるに過ぎないため、プラスチックストローの廃止だけでは危機は解決しない。 しかし、このように目に見えて簡単に取り替えることができる製品を目標にすることで、この運動はプラスチックフリーの代替品を標準化するのに役立った。一部の批評家や消費者団体は反ストロー運動をパフォーマンスとして退けているが、立法への影響は無視できない。 しかし、誰もがプラスチックフリー運動を受け入れているわけではない。水曜日(訳注:正しくは 2月10日〈月曜日〉)、ドナルド・トランプ米大統領は、プラスチックストローを廃止する連邦政府の取り組みを覆すための新しい大統領令に署名した。 (訳注:トランプ米大統領、プラスチック製ストロー奨励の大統領令に署名|ロイター 2025年2月12日) 彼は、紙ストローは「役に立たない」し、長持ちしないと述べた。トランプ氏はまた、海洋汚染や海洋生物を殺しているとして非難されているにもかかわらず、プラスチック製ストローを使い続けることは「問題ない」と考えていると述べた。 世界的な持続可能性の取り組みに反対することで、米国は他国が築き上げたプラスチックフリーの勢いを失わせ、さらなる環境被害を引き起こすリスクがある。 環境保護主義者らにとって、これは憂慮すべき後退を意味する。 環境保護団体パシフィック・エンバイロメント(Pacific Environment)の報告書によると、1.5℃の気温抑制目標を順守するには、2050年までにプラスチック使用量を75%削減する必要がある。 プラスチック廃棄物との戦いはまだまだ続く。世界の生産量は増加し続けており、多くの国では廃棄物を効果的に管理するためのインフラが不足している。産業レベルで体系的な変化がなければ、プラスチック汚染は今後数十年にわたって危機的状況が続くだろう。 |