FRANCE 24 2024年3月18日
EU のデポジット返金制度はプラスチック汚染に 対する”誤った解決策”である ”欧州連合は3月初旬、2029年までに域内全域でペットボトルとアルミ缶のデポジット返金制度を確立する という目標を発表した。EU当局は、すでにこの制度を導入している加盟国での高いリサイクル率を誇るが、 環境団体はこれを”本当の問題に取り組んでいない”、”誤った解決策”だと非難している。 シリエル・キャボット|ジャーナリスト 情報源:FRANCE 24, March 18, 2024 EU's deposit refund scheme a 'false solution' for plastic pollution The European Union in early March announced its goal of establishing deposit refund schemes for plastic bottles and aluminium cans across the bloc by 2029. While EU authorities boast of high recycling rates in member states that have already adopted the practice, environmental groups denounce it as a "false solution" that doesn't "tackle the real problem". By Cyrielle CABOT | Journalist https://www.france24.com/en/environment/20240318-activists-say-eu-s- proposed-deposit-refund-schemes-are-false-solution-to-plastic-pollution 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2024年9月10日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/plastic/news/240318_FRANCE24_ EUs_deposit_refund_scheme_a_false_solution_for_plastic_pollution.html EU はプラスチック汚染との戦いで好成績をあげることを目指している。域内の 27か国は今月初め、2035年までにリサイクル率 100%、2040年までに廃棄物量を 15%削減することを目指す包装廃棄物対策を発表した。ユーロスタット(訳注:欧州の統計情報を統括するユーロスタットとは? 欧州連合統計局(Eurostat)|EU MAG)によると、2021年に欧州市民が排出した包装廃棄物は平均 188.7キログラムで、10年間で 32キログラム増加した。現在リサイクルされているのはそのうちの 64%にすぎない。 ヨーロッパのゴミ箱に詰め込まれたさまざまなタイプの包装のうち、大半を占めているのはペットボトルとアルミ缶である。フランスの国立環境移行機関によると、フランスだけでも 2022年に販売用に34万トンのペットボトルが生産され、リサイクルされたのはそのうち 50%に過ぎないという。 この問題に対処するため、EU は 2029年までに EU 域内全体でデポジット返金制度を導入することを提案している。ペットボトルとアルミ缶は数セントの追加費用、製品価格の約 5〜10%、で販売されるが、消費者は使用後に容器を回収場所に持ち込むことで追加費用を回収できる。このプロセスは、ドイツ、オランダ、スカンジナビア諸国を含む 15のヨーロッパ諸国ですでに定着している。
北欧諸国でも同様の状況がある。スウェーデンでは、アルミ缶は 1984 年から、プラスチック ボトルは 1994 年から、返却可能である。政府によると、この国では年間 20 億個以上の容器がリサイクルされている。ノルウェーでは、このシステムが少し異なる。飲料容器は環境税の対象であるが、廃棄物の収集率が上がるにつれて、その額は減る。この措置により、生産者と流通業者は 1999年にデポジット制度を導入することになった。同国のガラスとプラスチックのボトルのリサイクル率は 90%近くに達している。 危険な”リバウンド効果” (訳注:リバウンド効果:エネルギー効率の向上によって節約されたエネルギーの一部が人々の行動の変化によって相殺されてしまうこと|Our World) しかし、デポジット返金制度は”奇跡の解決策”ではないと、NGO団体ゼロ・ウェイスト・フランス(Zero Waste France)の広報担当マノン・リシェールは言う。”この制度は確かにリサイクル率の向上には役立つが、我々が目指すべき目標、つまりプラスチック生産の大幅な削減に向けられていない。” ”それ自体は、包装の分別の別の方法に過ぎず、プラスチックボトルに起こることは何も変わらない”とリシェールは言う。デポジットされたボトルは、従来の回収容器に入れられたボトルと同じ運命をたどる。回収され、廃棄物処理場に送られる。PET(ポリエチレンテレフタレート、プラスチックの一種)製のボトルは新しいボトルを作るために使用され、他のボトルは、特にアジアでは、プラスチック原料(フレーク)に加工されてポリエステルを作るために販売される。”これらのプロセスには大量の水とエネルギーが必要で、マイクロプラスチックも生成される”とリヒャートは言う。 活動家によると、EU全体のデポジット制度は、何よりも”リバウンド効果”を生み出し、消費者が EUの目標とは正反対にペットボトルを買い続けるよう促す可能性がある。”我々は長年、廃棄物の分別とリサイクルを簡単にできる環境保護行為(green gesture)であるとする言説を聞かされ、リサイクルすればプラスチックを買うことはそれほど悪くないという考えを広めてきた。そして今、我々は金銭的なインセンティブを加えようとしている”と彼女は言う。”これはペットボトルの消費を増やすという逆効果をもたらす可能性がある”。 この効果はすでにドイツで見られている。2003年に可決された法律は、使い捨て容器(single-use containers)を市場の 20%に減らすことを目指したものだったが、その逆の結果が起きた。2021年のハレ・ヴィッテンベルク大学の調査によると、使い捨てペットボトルは現在、10年前の 40%から 71%の市場を占めている。 ”使い捨てデポジット制度(single-use deposit system)の導入は、考え方の偏りやリサイクル重視を助長し、多用途飲料容器制度(multi-use BC (beverage container) systems)の活性化を妨げているようだ”と著者らは指摘した。 ”リサイクル預託金制度の背後には、環境問題というよりもむしろ金銭的利益の争いが横行している”とリチャートは言う。近年、政治家たちは、製造業者に対し、生産にリサイクルプラスチックをもっと多く使用するよう強制する動きを強めている。その結果、リサイクルプラスチックの需要が高まり、材料はより高価になった。 より多くのボトルを回収してリサイクルすれば、利用可能なリサイクルプラスチックの量が増え、価格が下がる。”これは、製造業者に生産削減を促すものではない”とリチャートは言う。”結局、この措置は、プラスチック生産サイクルを断ち切る必要があるのに、それを維持するリスクをはらんでいる。” デポジット制度に関する議論が活発なフランスでは、現在、ゴミの収集と分別は地方自治体や地域当局によって管理されており、これらの自治体はゴミをリサイクル業者に売却している。デポジット制度に移行すれば、使用済みプラスチックの管理は製造業者に戻り、製造業者は金銭面での利益を得ることになる。 ”このような制度では、製造業者は金持ちにはならない”と、コカコーラやペプシを含む飲料業界団体ボワソン・ラフライシサント・ド・フランスの事務局長エレーヌ・クラデスはル・フィガロ紙に語った。”この材料を再販すれば、制度の資金を調達できるだろう。 リサイクルと再利用 ゼロ・ウェイスト・フランスは、他の環境保護団体と同様に、主にガラスを対象とした再利用のためのデポジット制度という異なる制度を積極的に推進している。”これはフランスでは1980年代まで存在していた”とリシェールは言う。”循環型経済の原則に沿って、容器を回収して洗浄し、そのまま再利用するという考え方だ”。 ”もしこれが、例えば輸送手段の最適化や共同化など、地域規模で組織化されれば、環境と社会への影響は非常に有益となるであろう”と彼女は言う。しかし、近年、こうした地域や自主的な取り組みは増加しているものの、このシステムはまだ政治的議論に取り入れられていない。”真のパラダイムシフトと政府側の真の努力が必要である”とリシェールは言う。”しかし、このような対策こそが、使い捨ての包装やプラスチックへの依存から我々を本当に脱却させることができる”。 原注:この記事はフランス語の原文の英訳である。 |