憂慮する科学者同盟 2022年6月6日
気候レジリアンスとは何か?
情報源:Union of Concerned Scientists, June 6, 2022
What is Climate Resilience?
https://www.ucsusa.org/resources/what-climate-resilience?

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2022年6月13日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_22/
220606_UCS_What_is_Climate_Resilience.html



COCO ROBICHEAUX/ALAMY
 気候危機を解決するということは、炭素排出量を削減することだけではない。人々を危害から守ることである。

 我々は気候危機に陥っている。地球が温暖化するにつれ、世界中の人々は、これまでにない規模で、困難な新しい課題に直面してる。これらの課題に耐え、繁栄するには、気候変動からのレジリエンス(訳注:resilience 困難からの回復力、立ち直る力)が必要である。

 気候レジリエンス(訳注1)とは、気候変動の影響が悪化するのを防ぎながら、気候変動の影響にうまく対処して管理することである。気候変動に強い社会は低炭素であり、より温暖な世界の現実に対処するための備えが整っているであろう。

 気候レジリエンスを実現するための実際の方法はひとつだけである。それは、避けられない変化に適応しながら、気候変動を引き起こす温室効果ガスの排出量を削減することである。

緩和と適応訳注2

 気候変動のペースを遅くするには、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を迅速に削減する必要があるという幅広い合意がある。これが気候変動の緩和である。それは、主に化石燃料の燃焼から大気中に放出される炭素排出という根本的な原因に対処することによって、気候変動に取り組むことである。

 緩和とは、石炭やガスのプラントを停止し、再生可能エネルギー源に移行し、エネルギーをより効率的に使用し、輸送に使用する石油を減らし、公共交通機関や電気自動車の使用を増やし、大気から炭素を除去する方法で土地を使用することを意味する。

 安全な気候の未来には、大胆で劇的に排出量を削減すること(ここ米国では、2030年までに2005年のレベルを50%下回る程度)が不可欠である。

 しかし、我々が積極的に排出量を削減したとしても、そして我々がしなければならない場合でも、初期の気候変動の影響はすでにある。それらは毎年深刻になり、炭素汚染はただ消えるだけでなく、何十年も大気中に残っているため、気候への影響は長期的にある。

 従って、すでにある脅威から保護し、今後のさらなる変化に備える、気候変動への適応も必要である。

 気候への影響はこれまでのところ広範囲に及んでいるため、”気候適応”と見なされるものの範囲も非常に広い。適応には、異常気象に耐えられるように電力網を強化すること、洪水や海面上昇によって大きな打撃を受けた地域のより良い住宅とインフラに投資すること、都市の極度の暑さを低減するために植樹すること、及び。学校にエアコンを設置するなどのこと含む。

 基本的には、気候変動の影響から我々を安全に保つために、我々の生活、仕事、遊びの方法を調整することを意味する。

気候レジリエンスには気候正義が必要

 レジリエンスには、気候変動にどのように適応し、緩和するかを知らせなければならない 3 番目の重要な側面がある。それは、気候正義である。気候変動は、有色人種の人々、低所得または貧困層の人々、高齢者、若年者、又は障害者の人々など社会の特定の構成員に不釣り合いな害を及ぼす。

 レジリエンスに気候正義を組み込むということは、適応の面で、気候の害に最もさらされ、それに対処する能力が最も低い人々と地域社会の幸福を優先することを意味する。これには、たとえば、公営住宅に空調設備を確保すること、災害前の計画の予算確保について危険にさらされている地域社会を最優先すること、高齢者、障害者、ホームレス、又はハリケーンや山火事で貧困状態にある人々を安全に保つための対策に投資することが含まれる。

 緩和の面では、気候正義とは、クリーン・エネルギー・プロジェクトのような気候変動対策が、脆弱な地域境に害を与えるのではなく、助けをもたらすことを保証することを意味する。これには、発電所の汚染削減と、低所得の地域社会にある汚れた化石燃料を動力源とする発電所の廃止措置を優先し;風力、太陽光、その他のクリーン・エネルギー・プロジェクトが有色人種の地域社会に負担よりも多くの利益をもたらすことを確実にし;屋上や地域の太陽光、エネルギー効率、公共交通機関、及び、輸送や暖房の電化への低所得世帯の利用のしやすさを拡大することを含む。

 レジリエンスを構築する際には、気候変動による最大の被害に直面している人々を優先すべきである。しかし、組織的な人種差別やその他の歴史的な不正のために、これは行われていない。これらの不正義を認めて対処することは、現在そして将来にわたって、レジリエンスに向けて取り組むための中核である。

気候レジリエンスの構築

 緩和と適応を両輪として追求することによってのみ、気候レジリエンスを達成し、維持することができる。 気候正義の最前線と中心を保ちながら、これらの両方の面で一生懸命努力すれば、低炭素で、温暖な世界の現実に対処できる備えが用意され、全ての人々の幸福を守るよう機能する気候ジリエンスの社会を構築できる。

 気候レジリエンスを構築することは、気候活動家や政策立案者の中心的な野心であるべきである。

 憂慮する科学者同盟は、30年以上にわたって気候変動問題に取り組んできた。 どうぞ参加を!


訳注1:気候レジリエンス
訳注2:緩和と適応


化学物質問題市民研究会
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