憂慮する科学者同盟 2022年3月31日
チャールズ・コークが 彼の気候変動偽情報キャンペーンについて 証言すべき時が来た エリオット・ネーガン、上席ライター 情報源:Union of Concerned Scientists, March 31, 2022 It's Time for Charles Koch to Testify About His Climate Change Disinformation Campaign By Elliott Negin Senior, Writer https://blog.ucsusa.org/elliott-negin/its-time-for-charles-koch- to-testify-about-his-climate-change-disinformation-campaign/ 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html 掲載日:2022年4月14日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_22/220331_Its_Time_for_ Charles_Koch_to_Testify_About_His_Climate_Change_Disinformation_Campaigns.html
同委員会は、幹部らがそのようなキャンペーンへの資金提供を断固として否定したその公聴会を厳しく追跡し、2月8日の別の公聴会で石油会社の炭素排出量削減計画の不十分さを指摘した。次の公聴会では、同じ4つの石油会社の取締役らが自社の気候変動に関する誓約について証言し、続いてソーシャルメディア企業や広告代理店が気候変動についての疑いを作り出すことに果たした役割について証言する予定である。
純資産が 580億ドル(約6兆4,000億円)で、世界で 20番目に裕福な人物であるコーク(86)は、石油精製所とパイプラインを所有し、原油、石炭、化学品、木材パルプ、紙を販売し、エネルギー関連商品を取引する複合企業であるコーク・インダストリーズ(Koch Industries)の長年の CEO である。年間総所得 1,150億ドル(約13兆円)を誇り、国内で 2番目に大きい非公開企業であるコーク・インダストリーズは、米国の水と炭素(訳注:温室効果ガス放出)の汚染者上位 25社のひとつであり、ミネソタ州が提起した気候責任訴訟(climate accountability lawsuit)の被告であり、ロシアで事業を継続している。一方、コークが支援するグループは、クレムリンがウクライナに侵攻した後、クレムリンに課せられた米国の制裁に反対している。 コーク一族が管理する財団は、1997年から2018年にかけて、90のシンクタンクと利益団体のネットワークに 1億4,500万ドル(約160億円)以上を寄付し、気候科学を軽蔑し、気候変動への取り組みを妨害した。 2019年にチャールズ・コークの弟デイビッドが亡くなって以来、チャールズ・コーク財団はこの偽情報キャンペーンに資金を提供し続け、2019年と2020年に 23 のグループに 1,700万ドル(約19億円)以上を寄付し、コーク一族の資金提供総計を 1億6,200万ドル(約180億円)以上に押し上げた。対照的に、気候偽情報の 2番目に大きな資金提供者であるエクソン・モービル(Exxon Mobil)は、1998年から2020年まで約 70 の気候変動否定グループに 3,920万ドル(約44億円)を出費した。 米国議会(Capitol Hill)への影響力を維持するために、コーク・インダストリーズの政治活動委員会 (Political Action Committee/ PAC) (訳注:企業・組合などが特定候補者を支持・支援する組織)、関連会社及び従業員は、コーク・インダストリーズに対応する企業である BP アメリカ、シェブロン、エクソン・モービル又はシェルよりはるかに多く連邦議員候補、党委員会、外部組織、様々な政治活動委員会の幹部、及び 527 の組織にも寄付した。2018年及び 2020年の選挙サイクルにおけるコーク・インダストリーズの 2,670万ドル(約30億円)の総支出は、4つの石油ガス会社が合わせて寄付した 2,170万ドル(約24億円)を上回った。 さらに、コーク・インダストリーズは、2017年から 2020年までの最後の 2つの総選挙サイクルで、政府(Washington)へのロビー活動に 3,800万ドル(約42億円)以上を費やした。これは、エクソン・モービルの 4,098万ドル(約45億円)とシェブロンの 3,947万ドル(約44億円)よりわずかに少ないが、同社は キャンペーンへの寄付に支出する以外にその二つの大手石油会社社よりも明確な利点を享受した。ドナルド・トランプ大統領の移行チームの責任者、マイク・ペンス副大統領−下院にいた時に、コークが設立し資金を提供した”繁栄のための米国民 (Americans for Prosperity)”の「気候税なし」の誓約を促進する上で重要な役割を果たした長年のコーク・ネットワークのベテラン−は、トランプ政権の中で働くために少なくとも 50人のコーク・ネットワークの卒業生を送り込んだ。彼らには、教育長官ベッツィ・デヴォス、エネルギー長官リック・ペリー、環境保護庁長官スコット・プルイット、ホワイトハウス法務局長マーク・ショートが含まれていた。政府の内部及び外部の両方でコーク信者に扇動されて、トランプ政権は 100以上の環境規則を含む少なくとも 260 の規制を後退させた。 バイデン政権は、就任時にコークの弟子たちを一掃し、トランプのロールバック(逆戻し)をロールバックしている最中であるが、コークと彼の献金ネットワークは依然として共和党にかなりの影響力を持っている。彼らは引き続き米国議会(Capitol Hill)に数億ドル(数千億円)を費やし、2024年の大統領選に向けて、ペンス、テキサス州上院議員テッド・クルス、フロリダ州知事ロン・デサンティス、元国務長官マイク・ポンペオ及びフロリダ上院議員リック・スコットなど、多くのコーク・ネットワークの熱烈な支持者らが大統領選に立候補することを検討している。有害で反政府偏見のあるコーク・ネットワークは、今後数年間、ワシントンに長い影を落とす可能性がある。 何十年にもわたる偽情報 20年以上の間、コークのネットワークは、通常、経済的な理由で提案された気候政策を攻撃することによって、クリーンなエネルギー経済への移行のための取り組みをを妨害するために、偽情報を熱心に広めてきた。その不正行為の例は在郷軍人会(legion)である:
コークに誓わせる 下院監視委員会がチャールズ・コークに証言を求めた場合、まず手始めに、気候変動に関する彼の見解を問うことができる。 昨年10月に証言した BP、シェブロン、エクソンモービル、シェルの幹部らは、気候変動の引き金となる人間の活動、主に化石燃料の燃焼が果たす中心的な役割を軽視したが、大いに口ごもった後、全員が地球温暖化が”存在に関わる脅威”をもたらすことを渋々認めた。 しかしコークに関しては、気候変動が深刻な問題であることを認めたことがなく、公にそれについて話すことはめったにない。記者がその話題を持ち出すまれな機会では、彼は…偽情報で応答する。 気候変動に関するコークの最新の公的コメントは、2015年と 2016年のワシントンポストとの長いインタビューでなされた。2015年8月のインタビューで気候変動について懸念しているかどうか問われたコークは、”いくらかは温暖化がある”と信じると答えたが、”これについては大きな議論がある。衛星測定を使用するか、気球を使用するか、調整済みの地上測定を使用するかによって異なるからである。”気候科学者らは、”それを示すこれらのモデルを持っているが、そのモデルは機能しない…”と付け加えた。 実際、コークが引用したすべての測定値は、気候変動による長期的な地球温暖化の傾向があったことを示している。そして、偶然にも、ワシントンポストがコークのインタビューを発表するちょうど 1週間前に、査読済みの研究は、全球気候モデル(global climate models)(訳注6)が以前に考えられていたよりもさらに正確であることを発見した。 2016年8月、ワシントンポスト紙は別のインタビューを実施した。そのインタビューで彼は”壊滅的な地球温暖化を防ぐために炭素規制が必要である”と彼を納得させる研究を作成できるかどうか問われた。 「うん」とコークは答えた。”もし我々が…閉じ込め、大声をあげて黙らせ、それについて議論したい人を罰しようとするのではなく、科学的方法を使用するなら…。我々全員が問題の真実を見つけようとしているのなら、私はそれが全てである。” 特に、コークは数年前に彼自身の方法で問題の真実に到達しようと試みた。チャールズ・コーク財団は、2010年に物理学者で自称気候科学懐疑論者リチャード・ミュラーによって設立された非営利の研究機関であるバークレー・アースに 15万ドル(約1,700万円)を寄付し、地球温暖化の主張を裏付ける温度データを見直した。おそらくコークの驚きと失望に、ミューラーは 2012年7月にニューヨークタイムズ紙に署名入り記事欄(op-ed)で、彼の調査は、地球温暖化は実際に現実のものであり、”ほぼ完全に”人間の活動によって引き起こされたものであり、気候科学コミュニティが当時結論付けていたよりもさらに悪いことを確認したと発表した。 特にミューラーが調査結果を発表した後、コーク・ネットワークは、炭素放出の抑制に失敗したという結果は、予防的措置をとるよりもはるかにコストがかかるという事実にもかかわらず、気候政策はコストがかかり過ぎるとするキャンペーンを強化したので、下院監視委員会がバークレー・アースの調査結果についてコークに尋ねることは意味があるであろう。 たとえば、2012年後半、コーク兄弟は「偽の研究」に資金を提供し、公益事業者に再生可能エネルギーの使用を増やすことを要求する州の基準が電気料金を劇的に引き上げると偽って主張した。 6年後の2018年、下院が拘束力のない炭素税決議を採決しようとしたとき、コーク・インダストリーズのロビイストであるエレンデが同じ策を講じた。 ”炭素税はエネルギーをより高価にし、人々が依存する消費者製品とサービスのコストを上げるだろう”と彼は議員に手紙で書いた。”それはまた、米国の生産者のコスト競争力を低下させ、世界の他の地域への生産と雇用の移転を促進するであろう。” 下院は、”炭素税は米国経済に有害である”と述べた決議を 229 対 180 の投票で可決した。決議に投票した代表者の約 70%(159人)は、2018年の選挙サイクル中にコーク・インダストリーズの 政治活動委員会(PAC)と従業員から合計で128万ドル(約1億4,000万円)を超える選挙資金を受け取った。 ゴミ箱に入れながらクリーンエネルギーに投資する コークの気候変動に対する偏見をもった見方は、間違いなく、監視委員会の 20人の共和党員(うち14人は気候科学否定論者)によって歓迎されるであろう。 2020年の選挙サイクルだけでも、コーク・インダストリーズの従業員と PAC は18人の共和党全国委員会(GOP committee)のメンバーに 136,000ドル(1,500万円)以上の選挙資金を提供し、BP、シェブロン、エクソン・モビル、シェルのカウンターパートは合計で40,347ドル(約450万円)を14人に寄付した。 しかし、化石燃料業界にあまり恩義を受けていない委員会のメンバーは、電気自動車や再生可能エネルギーなど、彼のネットワークが狙い撃ちをしようとしている産業分野への彼の会社の一見矛盾する投資について、コークに圧力をかける機会を利用すべきである。 ウォール・ストリート・ジャーナルは最近、コーク・インダストリーズの子会社が、さまざまなバッテリー技術とバッテリー関連の原材料、化学品、リサイクルに少なくとも 7億5,000万ドル(約825億円)を投資したと報じた。コーク複合産業の比較的新しい保有物の中には、ニュージャージーの亜鉛電池の起業会社である Eos エネルギー・エンタープライズ社 Energy Enterprises )とカナダのリチウム・イオン電池リサイクル業者の Li サイクル・ホールディングス(Li-Cycle Holdings)、リチウム開発会社のスタンダード・リチウム(Standard Lithium)、及びリチウムイオン電池の起業会社であるリチオン・パワー・グループ( Lithion Power Group)がある。 同様に、コークの子会社は、スマートグリッド(訳注:電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる次世代送電網)と電気自動車の充電技術に飛び込んだ。コーク・エンジニアード・ソリューションズ(Koch Engineered Solutions)は、2020年にスマート・グリッド・ソリューション企業であるセンシェント・エナージ(Sentient Energy)を買収し、昨年、コーク・ストラテジック・プラットフォーム(Koch Strategic Platforms)はオランダを拠点とする電気自動車充電ステーション・メーカーである イーブイ・ボックス(EVBox)に投資した。 コーク・エンジニアード・ソリューションズは太陽光発電にも強気であるが、コーク・ネットワークが止めさせようとしている分散型屋上太陽光発電ではない。昨年11月に大規模な太陽光発電所を建設するアリゾナ州の会社であるデプコム電力(DEPCOM Power)を買収し、米国とカナダに太陽光発電所を供給する予定である。 コーク・エンジニアード・ソリューションズの社長であるデーブ・ドットソンによると、コーク・インダストリーズの比較的最近のバッテリーと再生可能エネルギーへの投資は、当然のことながら、複合企業の広範囲にわたる事業のごく一部にすぎない。”我々は、経済と消費者のトレンドによって推進されるすべての電化を信じている。そして、発電から末端での消費までの電気バリューチェーン全体で価値を付加できる場所を探している”と彼は S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスに語った。 ドットソンのビジネス戦略は、彼の上司をしっかりとフォローしてきた人にとっては驚きであり、下院監視委員会に、彼の会社の最近の買い物が気候変動ソリューションに対するネットワークの継続的なキャンペーンとどのように一致するかをコークに尋ねるよう促す必要がある。 恥ずかしげのない自由主義者であるコークは、エネルギーに関して、そして他のほとんどすべてについて、政府ではなく民間部門が主導権を握るべきであると答えるであろう。コークにとって、経済を管理し、公衆の健康と環境を保護し、社会福祉プログラムを提供する政府の努力は全体主義への滑りやすい坂道であり、排除されない場合は後戻りされなければならない。 コークは、最新の著書(ブライアン・フックとの共著)『人々を信じよ:トップダウン世界のためのボトムアップ解決(Believe in People:Bottom-Up Solutions for a Top-Down World)』で、政府より、個人、企業、非営利団体が、新型コロナウイルス感染症などを含む社会の最も差し迫った問題を解決するのに適していると主張している。 しかし、コークの哲学は、気候変動による深刻な影響に直面している今日の悲惨な状況に我々を導いたのは、民間部門、特に化石燃料産業であったという事実を説明できていない。大手石油会社は、自社製品が気候を破壊していることを少なくとも 50年前には認識しており、それ以来、気候科学への疑念を生み出し、再生可能エネルギーを軽蔑し、政府の行動を阻止するために数億ドル(数百億円)を費やしてきた。 コーク・インダストリーズと一部の石油メジャーは、クリーン・エネルギー技術に多様化することで収益を上げることができると考えているため、徐々に彼らの事業リストに追加し金使っているが、それは彼らがまだ石油、ガス、そして化学品分野に献金している金額のほんの一部である。それは少なすぎるし、遅すぎる。 下院監視委員会が化石燃料業界の長年の気候政策を妨害するキャンペーンの根底にあることを真剣に考えているなら、コークを厳しく非難すべきである。そうすることによって、委員会は、偽情報支援における彼の大きな役割に光を当てるだけでなく、彼と彼の信者らが米国の民主主義にもたらす脅威を明らかにすることができる。 この記事は、Independent Media Institute(NPO)のプロジェクト Earth | Food | Life によって作成された。 訳注0:米下院委、石油大手に召喚状 訳注1:気候偽情報のウォーバックス父さん
訳注4 訳注5:ビルド・バック・ベター
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