Carbon Brief, 2021年3月8日
フードシステムは 人為的な温室効果ガス排出の 3分の1 を占める アイェーシャ・タンドン 情報源:Carbon Brief, March 8 2021 Food systems responsible for 'one third' of human-caused emissions By AYESHA TANDON https://www.carbonbrief.org/food-systems-responsible-for- one-third-of-human-caused-emissions?ct=t(RSS_EMAIL_CAMPAIGN) 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2021年3月16日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_21/210308_CarbonBrief_ Food_systems_responsible_for_one_third_of_human-caused_emissions.html 新しい研究によると、”フードシステム”は、2015年に人為的な温室効果ガス(GHG)排出量全体の 34%を占めていた。(訳注:フードシステムとは食料の採取・生産から包装・流通・消費・廃棄までの一連の領域・産業の相互関係を一つの体系として捉える概念) Nature Food に掲載されたこの研究は、1990年から2015年までの毎年の食物連鎖の各段階からの排出量を分類した最初のデータベースである EDGAR-FOOD を描いている。データベースはまた、分野、温室効果ガス及び国ごとの排出量を明らかにしている。 調査によると、2015年の食品関連排出量の 71%は農業及び”関連する土地利用と土地利用変更行為(Land Use and Land-Use Change / LULUC)によるものであった。残りは小売、輸送、消費、燃料生産、廃棄物管理、産業プロセス、包装に由来した。 この調査では、二酸化炭素(CO2)が食品関連の排出量の約半分を占め、他方、主に家畜の生産、農業、廃棄物処理に由来するメタン(CH4)が 35%を占めていることがわかった。 調査によると、小売部門からの排出量は増加しており、1990年から2015年の間にヨーロッパと米国で 3〜4倍に増加している。 著者らはまた、輸送(food miles)は包装(packaging)よりも食品関連の GHG 排出への寄与が少ないことを発見した。著者らは、食品の輸送による排出量の 96%は、国際輸送ではなく、道路や鉄道による地方または地域の輸送によるものであると付け加えている。 '優れたデータベース' 世界の約80億人の人口を養うことは基本的な課題であるが、気候に多大なコストがかかる。食料生産は地球の居住可能な土地の半分を使用しており、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の2019年の報告では、世界の排出量の21〜37%がフードシステムに由来すると推定されている。 (昨年、Carbon Briefは、肉や乳製品の気候への影響について議論し、食事の変更が気候にどのように影響するかを概説し、二酸化炭素排出量を最小限に抑えるために我々の食生活をどのように変更できるかを問う、1周間にわたる記事を連載した。 ) 新たな研究が、1990年から2015年までの毎年の食物連鎖の各段階からの排出量を分類した最初のデータベースである EDGAR-FOOD を描いている。データベースはフードシステムの国毎及び段階毎の二酸化炭素、メタン、二酸化窒素、及びフッ素化ガスの排出量を推定している。 オックスフォード大学のジョン・リンチ博士は、食品の気候への影響を研究しており、この研究には関与していなかったが、Carbon Brief に、”フードシステム全体を完全に詳細に網羅することはしばしば困難である”と述べ、この論文は ”素晴らしい財産である”と言った。 同じく研究に関与しなかった国際農業研究協議グループ( Consultative Group on International Agricultural Research / CGIAR)のプログラム・ディレクターであるソーニャ・バーミューレン博士は、これは”食品への道を示す優れたデータベースと一連の分析ツール」である”と付け加えている 。 バーミューレンは、約10年前に”おそらく、フードシステムの総排出量の最初の推定値”を発表し、フードシステムが排出量の3分の1を占めると推定していると述べている。これは新しいデータベースと同じ推定であるが、彼女の数字は”新しい評価よりも「はるかに大まかなデータと計算に基づいている”とし、”数字が証拠と詳細に、はるかに強く基づいているのを見るのは素晴らしい”と付け加えた。 世界の食料関連 GHG 排出量 この調査によると、世界の食料生産は 1990年から 2015年の間に 40%増加し、フードシステムからの年間排出量は 160億トン CO2e(= 16ギガトン CO2e)から18ギガトン CO2e に増加した。
しかし、個人ベースでは、一人当たりの食品関連の排出量は、1990年の平均 3トン CO2e から 2015年には 2.4トン CO2e に減少したと付け加えている。 さらに、論文によると、人為的な総排出量に対するフードシステムの寄与は、この時期に実際には 44%から 34%に低下した。これは、他の分野からの排出量が世界的に増加しているためである。リンチは、この発見は脱炭素化の必要性を浮き彫りにしていると言う。
2015年には、食品関連からの排出量の 27%が”工業国”からのものであり、残りの73%が”発展途上国”からのものであり、その中に研究者らは中国を含めている。報告書によると、フードシステムの排出量が最も多い 6つの経済国は、工業国と先進国が混在している。
この調査によると、フードシステムから発生するひとつの国の排出量の割合は、14%から92%の範囲である。調査によると、先進工業諸国では、国の総排出量の約 24%がフードシステムからのものであり、その数は 1990年から 2015年までかなり安定している。 しかし、研究者によれば、発展途上国の食品からの排出の割合は 1990年の約 68%から2015年には 38%に減少した。これは”非食品分野の排出の非常に高い増加”のためであると著者らは言い、また、主に森林破壊の減少のおかげで、”土地利用関連排出量の大幅な削減”も実現している。 調査によると、大陸毎の測定では、アジアは世界の食料排出量に最も大きく貢献しており、1990年には世界のフードシステム排出量の 35%、2015年には 49%を排出している。
バーミューレンは、ランセットの持続可能なフードシステムからの健康的な食事に関する委員会の委員であった。彼女は Carbon Briefに、よく食べて地球の面倒を見ることは可能であるが、努力が必要であろうと言う。
新しい研究は、”技術的および政治的解決策の混合バッグ”が必要であることを強調していると彼女は付け加える。
生産段階 著者らはまた、排出量をフードシステムのさまざまな段階に分けている。 2015年には、食料生産の上流段階、つまり漁業、水産養殖、農業、肥料などの投入物からの排出物を含む”農漁場の門”に食料を運ぶものが、フードシステムの総排出量の 39%を占めていることがわかった。” 土地利用と土地利用変更行為(Land Use and Land-Use Change / LULUC)は 2番目に大きな貢献者であり、フードシステムの総排出量の 3分の1を占めている。調査によると、これは主に森林伐採と泥炭地を含む土壌の劣化による炭素損失によるものであった。 著者らは、LULUC の排出量のほとんどは開発途上国からのものであると述べている。たとえば、2015年には、農業と LULUC が開発途上国の食品排出量の 73%を占めた。しかし、彼らは、1990年から 2015年の間に、農業生産と LULUC からの食料関連排出のシェアが発展途上国でそれぞれ 13%と 26%減少したと述べている。 著者によると、2015年の排出量の残りの29%は、輸送、包装、小売、加工、消費、および使用済み廃棄物であった。この値は、1990年以降、先進国と発展途上国の両方で上昇していると述べている。 研究によると、エネルギー部門からの食品関連排出量の世界的なシェアは、1990年から2015年にかけて31%増加した。さらに、2015年には、産業や廃棄物を含む「”ネルギー関連”分野が、工業国の食品関連排出量の半分以上を占めていたと付け加えている。 著者らはまた、輸送(food miles)が包装よりもほんの少し食品関連排出に寄与することを発見した。包装は、主に紙パルプ産業によるものであり、食品関連排出量の約 5.4%を占めたが、輸送は 4.8%しか占めていなかった。 食品関連の排出量はどのように変化しているか? 著者らはまた、フードシステムにおけるさまざまな温室効果ガスの寄与を分析している。たとえば、彼らは二酸化炭素(CO2)がフードシステムの排出量の約半分を占めることを発見した。 下図サンキーダイアグラムは、フードシステム全体の排出量に対するさまざまな活動と温室効果ガスの種類の寄与を示す。
2015年の世界の食料システムからの排出量の内訳を示すサンキーダイアグラム(オリジナルページのダイアグラム参照) データは、左から右に、ガス、セクター、ステージ、カテゴリ、そして再びガスごとに示されている。さまざまなセクションにマウスを合わせると、データがパーセンテージで表示される。 Crippa et al(2021)からのデータに基づき、 Highcharts を使用した Carbon Brief によるチャート。 著者らは、メタン(CH4)がフードシステムからの総排出量の35%を占めていると述べている。 これは主に家畜の生産、農業、廃棄物処理によるものである。 しかし、著者らはまた、主要な食用作物のひとつである米がメタン排出の”主要な発生源”であると述べている。 調査によると、フッ素ガスの排出量は GHG 排出量の2%に過ぎないが、1990年から2015年の間にその使用量は 2倍になった。 著者らは、フッ素ガスは主に冷凍に使用されており、発展途上国が産業用および家庭用の冷凍を増やすにつれて、”温室効果ガスの総排出量に対する冷凍用フッ素ガスの重要性が増す可能性が高い”と述べている。 発展途上国におけるフードシステムの動向の多くは中国によると著者らは述べている。食品からの排出量は 1990年から 2015年の間に平均 14%増加したが、中国の排出量は41%増加した。それにもかかわらず、中国の食品からの排出量の全体的な排出量に占める割合は、国の工業化に伴う排出量の増加により、1990年の 51%から 2015年には 19%に低下した。 さらに、廃棄物管理からの中国の排出量は、発展途上国の 50%の増加に大きな役割を果たしていると研究は述べている。同時に、固形廃棄物や廃水の管理を含む廃棄物管理からの排出量は、先進工業国で平均して減少している。 調査によると、農業におけるエネルギー(電気、熱、燃料)の使用による排出量は、生産がより機械化されるにつれて1990年から2015年の間に15%増加し、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアで 50%増加した。 逆に、工業国での”農業の進歩と環境制限”の導入は、1990年から2015年にかけて農業からの排出量を28%減少させたと研究は付け加えている。 一方、1990年から2015年の間に、フードシステムの総排出量に対する小売、包装、輸送、加工の寄与はすべて、1990年から2015年にかけて 33%から 300%の範囲で増加した。 調査に関与しなかった ナフィールド人口保健局(Nuffield Department of Population Health) の研究者であるマルコ・スプリングマン博士は、現在、”多くの排出目録はフードシステムの排出を適切に表していない”と述べ、このデータベースは、”排出量計算において大いに歓迎される改善”であると述べている。彼は Carbon Brief に次のように語っている。
研究はまた、”フードシステムの排出はすべての排出部門に浸透し、すべての主要な温室効果ガスを含む”ことを示していると彼は付け加える。しかし、彼は”食品グループによる排出量の差別化” はデータベースに含まれていないことを指摘し、これが研究の次の良いステップになると Carbon Brief に伝えている。
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