Deutsche Welle (DW) 2019年3月7日
ブラジルの環境大臣が
DW のコラムニストをナチ的意見だと攻撃

情報源:Deutsche Welle (DW), March 7, 2019
Brazilian environment minister attacks DW columnist with Nazi remark
https://www.dw.com/en/brazilian-environment-minister-
attacks-dw-columnist-with-nazi-remark/a-47817761


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年3月13日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_19/190307_DW_
Brazilian_environment_minister_attacks_DW_columnist_with_Nazi_remark.html

 ブラジルはその国土を”地獄”に変えていると非難した DW の囲み記事は同国の環境大臣を激怒させた。彼は、その記述はナチ・ドイツのユダヤ人大量虐殺に向けられるべきであると言った。
 ブラジルの環境大臣リカルド・サーレスは木曜日(3月7日)に、ブラジルの環境政策を批判する意見記事を掲載したことで DW を批判した。

 リオに駐在するドイツ人ジャーナリストのフィリップ・リヒターベックは、その囲み記事で、ジャイール・ボルソナーロ率いる新たな政権は同国の国土を、大豆、牧草地、農薬、サトウキビ、そして鉱業の地獄絵図に塗り変えることに夢中になっていると書いた。

 環境の破壊は、新政権の”主要プロジェクトのひとつのように見える”とリヒターベックは書いた。”彼らは、7歳の子どもが殺されるのを見て笑う・・・傲慢に、そして残酷に振る舞い、話をするような人々だ。彼らは警察がスラムで虐殺に関与し、環境活動家または黒人の市会議員らが殺されるのをみて祝杯を挙げる”。

 ”メフィストフェレス・プロジェクト”(訳注:メフィストフェレス:ドイツのファウスト伝説に登場する悪魔)と題するその記事は、 DW のポルトガル語のウェブサイトに最初に発表されて、環境大臣サーレスの怒りを買い、彼はブラジルについてのその記述は、”ドイツ自身がユダヤ人の子どもたちに、そして強制収容所で拷問されて殺された数百万人の人々にしたことの方に、もっと似つかわしい”とツイッターで述べた。

 ”ドイツの公共チャンネルがブラジルについてこのように書いたのは不適切である”と、サーレスはツイッターでツイートした。

更なる情報:
 After Nazi jibe, Brazil's Ricardo Salles calls DW column 'offensive'
(ブラジルのリカルド・サーレスはナチだと愚弄して、 DW の記事を’侮辱’)

 そのツイートは、2,000回以上共有され、サーレスのフォロワーから 3,000以上のコメントを受けた。ツイッターのユーザーのある人たちは同大臣のナチズム言及は不相応であり、ひとつの意見記事のために全ドイツ国民を敵に回すというリスクをかけたと主張した。


訳注:ブラジルのアマゾン森林破壊の下記二つの動画はDW の本記事ウェブページから見ることができます。
・Our country! Brazil's indigenous population fights back(我々の国! ブラジルの先住民が反撃)
・Cutting Down the Rainforest(熱帯雨林を伐採)


 リヒターベックは、彼の評論の中で、右翼ポピュリスト大統領ジャイール・ボルソナーロ政権(訳注1)がアマゾンにおける森林破壊(訳注2)を取り締まる環境機関 IBAMA の権限を奪おうとしていると非難した(訳注3)。彼はまたサーレスを、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』(訳注4)の中の誰かのようだと述べた。”そこでは平和省が戦争を支える任務を負っているが、ブラジルでは大臣は環境を守るのではなく、それを搾取している”。

更なる情報:
 Experts warn of Bolsonaro threat to the Amazon
 (専門家らはボルソナーロがアマゾンを脅かしていると警告)

サーレスは何を言わなくてはならなかったのか

 コメントを求められてサーレスは、公共放送がそのように根拠のない、攻撃的な、そして無礼な内容の発表を許されるということは”容認できない”と DW に言った。

 彼は、その評論は”環境政策の批判”ではなかったと付け加えた。

 ”それは純粋で単純な侮辱であり、人々を攻撃し、総じてあるやり方でブラジル政府を攻撃するものであり、それは環境的な批判ではない”と、サーレスは DW に言った。

更なる情報:
 Bolsonaro smear prompts environment agency chief resignation
 (ボルソナーロの中傷が環境機関の長の辞任の原因となる)

リヒターベック: ブラジルは、独裁政治と決別することが決してきなかった

 彼の記事に対する議論ある反応を受けて、リヒターベックは、環境大臣は”反環境的な政策について”提起された点に対応するのではなく、”ドイツの過去について話すことを選んだ”と述べた。

 ”ナチズムは 70年以上前に覆されたした”と、リヒターベックは DW に言った。”今日ドイツにあるのは非民主的体制、すなわち、しばしば人権を蹂躙し、攻撃的な国家主義を説き、国内に敵を作り出す体制を警告する強い傾向である”。

 ”対照的にブラジルは、独裁政治と決別することが決してできなかった”とコラムニストは付け加えた。”私は多くの専門家らが言うように環境政策に起きている逆行について話したのに、策略的で否定的なやり方でブラジルを描いたと非難されている”。

更なる情報:
 Brazil's Amazon deforestation documented via massive satellite imaging
 (大規模な衛星画像で見るブラジルのアマゾン森林破壊)

Deutsche Welle(DW)はドイツの国際放送局であり、ブラジル・ポルトガル語を含んで30言語で独立のジャーナリズムを生成し、様々なメディアを通じて報道している。


訳注1:右翼ポピュリスト大統領ジャイール・ボルソナーロ
訳注2:ブラジルのアマゾン森林破壊
訳注3:ブラジル環境・再生可能天然資源院 (いばーま、IBAMA)
  • ブラジル環境・再生可能天然資源院 - Wikipedia
  • IBAMA院長が辞任=ボウソナロから追及され(ニッケイ新聞 2019年1月9日)
  • 違法伐採の木材業者が、ハッカーを使ってブラジル環境再生可能天然資源院(IBAMA)のデータを改ざん (Mega Brasil 2015年8月24日)

    訳注4:小説『1984年』
     ・1984年 (小説) - Wikipedia



  • 化学物質問題市民研究会
    トップページに戻る