Deutsche Welle (DW) 2019年1月2日
イタリアの保健分野の指導者 政府の’反科学的立場’に抗議して辞任 ジェームス・ムーア 情報源:Deutsche Welle (DW), Jan 2, 2019 Italian health czar resigns over government's 'anti-scientific positions' Cristina Burack https://www.dw.com/en/italian-health-czar-resigns- over-governments-anti-scientific-positions/a-46925950 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2019年1月10日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_19/190102_DW_ Italian_health_czar_resigns_over_governments_anti-scientific_positions.html イタリアの国立健康研究所(ISS)ウォルター・リッチャルディは、ポピュリスト政府(訳注1)が反ワクチン政策を通じて公衆の健康を脅かしていると糾弾した。彼はまた、世界中に広がる科学への政治介入に対して警告した。 12月に辞任すると発表したイタリアの国立健康研究所(ISS)の所長は、月曜日(12月31日)に、彼の辞任の背景は現在のポピュリスト政府の反科学的立場と排外主義(ゼノフォビア)的見解であると述べた。 イタリア最大の日刊紙コリエーレ・デラ・セラのインタビュ−で、イタリア国立健康研究所(ISS)のウォルター・リッチャルディは、”政府の代表者らは、多くの問題に対して非科学的、もっと言えば反科学的立場を支持した”と述べた。 リッチャルディはまた、同研究所での4年半の在任中に、掲げた目標、すなわち同研究所(ISS)の組織改正、財政的回復、そして再生を達成したと述べた。 イタリアは現在、極右の「(北部)同盟(Northern League)」及ポピュリスト政党「五つ星運動( Five Star Movement (FSM)」の政権下にある。 イタリアの’反ワクチン’ポピュリスト政治家(訳注2) リッチャルディは、その批判を同盟の書記長であり内務大臣、副首相のマッテオ・サルヴィーニに向けた。 ”副首相が、一児の父親として多くのワクチンがあり過ぎると信じ、それらは役に立たず、危険であると言うのは、非科学的(unscientific)アプローチであるというだけではなく、それは反科学的(anti-scientific)であるということは明らかである”。 2017年、中道左派の前政権は、はしか、破傷風、及び小児マヒを含む10の疾病に対する学童へのワクチン投与を義務付ける法律を制定した。五つ星運動(FSM)と同盟(League)の政治家たちは、当時、野党の立場で、その法案は医薬品会社に利益をもたらすだけであり、ワクチンは自閉症を引き起こすという疑わしい主張をして、その法案に反対した。2018年にポピュリスト政権のもとにイタリア議会上院は、義務的ワクチン投与の条項を外した政令を通過させた。 世界保健機関は、安全であると証明されているワクチンについての誤った情報のために、はしかは、ヨーロッパ諸国を含んで 2017年には世界中で 30%上昇したと、つい最近の2018年11月に警告したばかりである。 更なる情報: Measles cases soaring in Europe, WHO warns (はしかがヨーロッパで急上昇中と WHO が警告) フランスもまた近年、国内の’反ワクチン’運動の結果、義務的なワクチン接種に抵抗してきたように見える。そしてドイツでは、2018年に発表された、家族の小さな子どもにワクチン接種をするかどうかについての家族の議論を追った” Eingeimpft(ワクチン接種)”というドキュメンタリー・フィルムが反ワクチン陰謀論者に発言の機会を与え、証明されていない情報を拡大させるとして批判された。 イタリア政府は公衆の健康を脅かしている インタビューでリッチャルディはまた、政府が公衆の健康を様々な政策で脅かしているとして、もっと広範に批判した。 ”移民が病気を持ち込むと繰り返し言われてるが根拠がない・・・政府の路線に矛盾しないよう自己検閲を強いている”と彼は述べた。 政治は科学に口出しするな! リッチャルディは保健大臣ジュリア・グリッロと良好な関係にあると述べた。彼女は、五つ星運動(FSM)の政治家であるが、運動の創設者ベッペ・グリッロとは関係ない。国立健康研究所(ISS)は同研究所の科学的方向性に影響を及ぼすために政府からのどのような圧力にも直面したことはないとする保健大臣からの声明が正しいことを彼は確認した。 ”もし政治が科学に介入しているなら悲しいことだ”と彼は述べた。”科学は唯一の手法であり、政治はそれを尊重する必要がある。それは科学者が彼らの最良の知識を政治に対して利用できるようにするからである”。 12月にイタリア政府は、同政府の保健政策の顧問を務める技術及び科学の専門家らからなる委員会の委員全員を解任して、同国の科学界に衝撃を与えた。 国際的に認められている健康専門家であるリッチャルディは、イタリアのポピュリスト政府とアメリカ大統領ドナルド・トランプはともに科学に対する懐疑論を持っていると述べて、彼等の類似点を引き出した。 ”この全ては、ドナルド・トランプのアメリカ国立健康研究所(NIH)に対する’証拠に基づく(evidence-based)’という言葉は一切使うなという勧告を私に思い起こさせる”とリッチャルディは述べた。”それは科学と向き合うのが非常に困難なポピュリストによって取られるアプローチである”。(訳注3) 2017年12月、トランプ政権は、米連邦福祉保健省の一部である疾病管理予防センターの役人が’証拠に基づく(evidence-based)’という言葉を使用することを禁止した。 訳注1:イタリアのポピュリスト政権
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