Consumer Reports 2017年9月29日
消費者への新たな警告: これらの難燃剤を避けなさい
米国消費者製品安全委員会(CPSC)
製品中に広く見いだされる難燃化学物質を制限する方向に動く ジェニーン・インターランド 情報源:Consumer Reports, September 29, 2017 New Warning to Consumers: Avoid These Flame Retardants The CPSC has moved to restrict the chemicals, which are found in a wide variety of products By Jeneen Interlandi https://www.consumerreports.org/toxic-chemicals-substances/ avoid-these-flame-retardants-cpsc-warning/ 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2017年10月11日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_17/ 170929_CR_New_Warning_to_Consumers_Avoid_These_Flame_Retardants.html 消費者運動活動家によって称賛された動きとして、米国消費者製品安全委員会(CPSC / Consumer Product Safety Commission )は、消費者、特に妊婦と小さな子どもは有機ハロゲン系難燃剤(OFRs)を含む製品を避けるべきであるとする、力強い新たな警告を発表した。有機ハロゲン系難燃剤(OFRs / Organohalogen Flame Retardants)は、子どものおもちゃ、マットレス、家具、及び電子機器のプラスチックケースなどに見いだされる。(訳注:ハロゲン=フッ素・塩素・臭素等、周期表第17族に属する元素の総称) このクラスの化学物質の化合物は、子どもの低IQ、学習障害、多動症、そして記憶障害、がん、生殖障害、ホルモン・免疫系障害等を含む一連の深刻な健康問題に関連している。 この米国消費者製品安全委員会(CPSC)の警告は、同委員会がある製品と一緒に有機ハロゲン系難燃剤(OFRs)を禁止する方向で措置をとることを採択した(訳注1)後、わずか一週間後に発表された(訳注2)。一方、CPSC は製造者に対してこれらの化合物の消費者製品での使用を自主的に控え、小売業者と消費者の両方に対しては彼らの商品が OFRs を含んでいないことを会社に確認するよう呼びかけた。 この新たな措置は、コンシューマー・レポート(Consumer Reports)の政策及び動員力の源泉である米国消費者同盟(Consumers Union)を含む環境及び消費者10団体によって 2015年に提出された請願によってもたらされた。支持者らは、それらの措置は、消費者保護よりも規制緩和の方が特徴的なこの時世にテストされていない化学物質であふれている市場における消費者の意義深い勝利であると述べている。 ”これは、この国の卓越した規制当局の一層の向上と、全ての種類の難燃化学物質によってもたらされるリスクについての懸念への言及を意味する”と、米国消費者同盟の政策アナリストであるウイリアム・ウォーレスは述べている。”それは、これらの物質を漸次廃止するよう求める製造者への強いシグナルである”。 それはまた、消費者に対する高らかな呼びかけである。すなわち、有機ハロゲン系難燃剤(OFRs)を含んでいない製品を求めることにより、市場における安全に意味ある改善をもたらすことができる。 リスクが便益を上回る 有機ハロゲン化合物は、延焼を食い止める、あるいは遅延させるために、広範な消費者製品中で数十年間、使用されてきた。しかし、これらの化学物質によってもたらされる健康リスクは、耐火性の便益を上回ることを示す研究が増加している。ある研究は、難燃剤を含有するすべての製品が必ずしもそれを必要としていないことを示唆している。その上、科学者や活動家らは、特に家具中では、個々に使用される少量の難燃化学物質では大きな又は広がる炎を食い止めるのに一般的には十分ではないので、火災を減らすのに大きな役割を果たしていないと述べている。 有機ハロゲン系難燃剤(OFRs)は消費者製品から漏れ出すことができ、屋内ダスト中にたまり、人間によって吸収され、摂取され、あるいは吸入される。”我々は、このクラスの全ての化学物質は環境中にそして人間の体内に入り込むであろうことを知っている”と、国立環境健康科学研究所の所長、リンダ・バーンバウムは公聴会で規制当局に述べた。”我々は、それらは家庭用品から我々の周囲の空気中に連続的に移動していることを知っている”。 研究は、米国住民の97%以上が彼らの血液中に測定可能な量の OFRs を持っていることを示唆している。屋内ダストにより接触しやすい傾向にある子どもたちは、同じ家屋に住む成人に比べ、3〜5倍の量の化合物を体内に持っていることが分かった。子どもたちはまた、その器官はまだ発達中なので、これらの化学物質に関連する健康リスクに、より脆弱である。いくつかの有機ハロゲン系難燃剤(OFRs)は人間の体内に危険なレベルで蓄積していることが判明した後に、すでに市場から排除されている。 戦いが始まろうとしている 米国消費者製品安全委員会(CPSC)の6人の委員は、新たなガイドラインに関して意見が割れた。二人の委員は、とりわけ、全ての有機ハロゲン系難燃剤(OFRs)を一つにまとめるという決定に反対した。そのような化学物質は200種類以上あり、そのうち一握りの化学物質だけが今までにテストされている。しかし何人かの科学者らは疑いのある全ての化合物を個別にテストすることは不可能であると主張し、測定を実施した研究者らもそれに同意した。”残念ながら、科学的研究者らは市場に出る新たな化学物質の流れに追いつくことができない”とバーンバウムは言う。もし、そのクラス全体が含まれないのであれば、法で禁じられたひとつの有機ハロゲン系難燃剤(OFR)が、同じように危険かもしれない他の化合物によって置き換えらるだけである。(このようなやり方は良く行われるので、”残念な代替(regrettable replacements)”という言葉がある。) 米国化学工業協会(ACC)は、有機ハロゲン系難燃剤(OFRs)は有用であるよりむしろ危険であるという断言に異議を唱えた。”本日の行動は、誤った方向に導き、将来の製品の安全性を危うくするものである”と、この業界団体は、予め準備されていた声明の中で述べた。彼らはまた、規制当局は完全禁止を検討するが、新たなガイダンスは、法的に拘束するものではなく、有機ハロゲン系難燃剤(OFRs)の継続使用を促進するために製造業界と”積極的に情報交換する”ことを約束しただけであると言及した。 環境団体 Earth Justice (同団体も新たなガイドラインを推進するための要請書に署名している)の弁護士エバ・ガートナーは、産業界のそのような主張は、消費者の声をさらに緊急なこととすると述べている。”政策策定者と製造者は、これらの化学物質は使用し続けても問題ないということを産業側から聞くであろう”と彼女は言う。”しかし、有機ハロゲン系難燃剤(OFRs)は最早これらの製品中では許容されないということを小売業者や消費者と話し合うことが重要である”。 あなた自身の守り方 有機ハロゲン系難燃剤(OFRs)に関する新たな表示義務、又は完全禁止がなければは、消費者がどの製品がこれらの化学物質を含んでおり、どの製品が含んでいないのかを見つけることは非常に難しい。しかし、そのことはあなたが自分自身を守ることができないということを意味するわけではない。消費社運動家及び環境団体は、あなたの家族を可能な限り安全にするために、次のステップを勧告している。 子ども用品のラベル表示をチェックする その表示ラベルに”難燃剤無添加”と書かれている製品を選びなさい。そして、ポリウレタンで作られている製品を避けなさい。それらは高濃度の有機ハロゲン系難燃剤(OFRs)を含有している傾向がある。(カリフォルニア州の可燃性基準に合致していると表示されている製品もまた、有機ハロゲン系難燃剤(OFRs)を含んでいるらしい。) 家具のラベル表示をチェックする カリフォルニア州の法律は、同州で販売されるすべての新しい布張り家具は、難燃化学物質が添加されているかどうかを明確にする目に見えるラベルを含むことを求めている。同州以外の州の消費者もまた、このラベルを探すべきである。もしそれが見つからなければ、販売員に尋ねるか、あるいはもっと多くの情報を得るために製造者に直接連絡しなさい。 清潔を保つ ダスト粒子の付着とその後の食物への混入を避けるために手を洗いなさい。 HEPA フィルター付きの電気掃除機を使用しなさい。そして定期的に湿式吸塵及び水で濡らしたモップをかけなさい。ジョージ・ワシントン大学の研究者らによってなされた、2016年のある研究は、屋内ダスト中に、難燃剤を含んで45種類の潜在的に有害な化学物質を検出した。 テストをしてもらう もしあなたがすでに持っている製品中に何が含まれているのかを知りたいなら、あなたはデューク大学に試料を送り、無料で分析をしてもらうことができます。 訳注1:CPSC ハロゲン系難燃剤全体の禁止の方向性を採択 Federal panel votes to warn public about flame retardants in baby products, furniture (Chicago Tribune Sep 20, 2017) 訳注2:CPSC 消費者はハロゲン系難燃剤を含む製品を避けるよう勧告 Guidance Document on Hazardous Additive, Non-Polymeric Organohalogen Flame Retardants in Certain Consumer Products (A Notice by the Consumer Product Safety Commission on 09/28/2017) |