ChemSec 2010年5月11日プレスリリース
電子産業は臭素化難燃剤や塩ビから離れつつある
EUがこれらの制限を導入するまたとない機会である


情報源:ChemSec Press Release, May 11, 2010
Electronics Industry Moving Away From Brominated Flame Retardants and PVC
An opportunity for EU to Introduce Restrictions
http://www.chemsec.org/images/stories/publications/ChemSec_publications/Press_Release_Market_Overview.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2010年5月13日
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_10/10_05/100511_ChemSec_BFR_PVC.html

[ヨテボリ 2010年5月11日]本日、公益組織である ChemSec によって発表された報告書”市場概観(A Market Overview)”は、非常に多くの電子機器製品中で使用されている臭素化難燃剤と塩ビ(PVC)は代替することが可能であることを示している。電子産業はすでに、これらの問題ある物質の代替を開始しており、数週間で欧州連合(EU)の立法者らはこの動きを確認し、電子機器中で使用されている臭素化難燃剤と塩ビ(PVC)を制限するまたとない機会を持つことになる。

 我々が毎日使用している電子機器製品の多くは有害な化学物質を含んでいる。従来、臭素化難燃剤はしばしば、延焼の拡大を遅らせるために電子機器製品中で使用されてきた。また塩ビ(PVC)プラスチックはケーブルと筺体に使用されてきた。しかし電子機器中での臭素化難燃剤と塩ビ(PVC)の使用は、環境とヒト健康の観点から非常に問題がある。ところが同じ技術的安全性と機能要求を満たす有害性のより小さな代替が市場で入手可能なのである。

 EUの立法者らは現在、電子機器中の有害化学物質に関する将来の制限を決定するための作業を実施中である。RoHS 指令の見直しで、欧州議会の報告者(rapporteur)によって提出された提案は、多くの電子機器製品の臭素化難燃剤と塩ビ(PVC)に関する制限を示唆している。

 ChemSecの報告書 『臭素化難燃剤とPVCを使用しない電子機器−市場概観 "Electronics Without Brominated Flame Retardants and PVC - a Market Overview』は、これらの物質の代替は技術的にも経済的にも実現可能であることを示している。この報告書は、現在市場にある500以上の製品、例えば、携帯電話、コンピュータ、洗濯機、コーヒー沸かし、テレビなどの、臭素化難燃剤と塩ビ(PVC)を使用していないか、又は、ほとんど使用していない製品をリストしている。Acer, Apple, HP, Nokia, Philips, Samsung, Sony Ericsson など28社の製品がこの報告書にリストされている。

 ”多くの電子機器会社がすでに臭素化難燃剤や塩ビをやめているので、EUの立法者らは現在、全ての電子機器製品中のこれらの問題ある物質の使用を制限し、電子産業界の残りの会社にもその方法を示すためのまたとない機会を得ている”とChemSec のプロジェクト・コーディネータ、フリーダ・ホックは述べている。

 欧州議会の環境・公衆健康・食品安全委員会は RoHS 指令の修正に関し6月初旬に採決し、欧州議会総会での採決は7月に予定されている。

 ”電子機器中での臭素化難燃剤の使用に関するEU制限は、我々の環境中の有害物質の量を減らすだけでなく、臭素化難燃剤の代替物質の多くがヨーロッパで製造されているので、EUにおける新たな雇用に貢献する可能性がある”とChemSecのディレクター、アンソフィー・アンダーソンは述べている。

 ”PCB類やDDTに似た臭素化難燃剤は、最も有害な物質のタイプである残留性有機汚染物質(POPs)であり、ヒト健康と環境に及ぼす有害性の脅威のために世界のコミュニティはストックホルム条約を通じてその使用を廃止することを2009年に同意した。この報告書−市場概観は、EUの規制当局がグリーンな経済を推進し、贈り物、再生品、リサイクル品等と偽っているが、実際には臭素化難燃剤で汚染された電子廃棄物であり、開発途上国に押し寄せるこれらの有害物質の波の高まりを低減するのに役立つ”とタンザニのIPENコーディネータであるジャミドゥ・カティマはコメントした。

 ”この重要な報告書は、電子製品のライフサイクルを通じて受け入れ難い有害なリスクをヒト健康と環境に及ぼす臭素化難燃剤と塩ビ(PVC)を含まない広範な電子製品を世界中で製造することが技術的に可能であることを示している。アメリカの団体は欧州連合が、これらの物質を制限し、世界の土俵を同じレベルにすることによって、この問題に対するリーダーシップを発揮することを見守っている”とアメリカを拠点とする電子機器テイクバック連合の議長テッド・スミスはコメントとしている。


  報告書結論


化学物質問題市民研究会
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