米化学会 ES&T サイエンス・ニュース 2008年3月12日
有害毒物質が含まれるテレビが捨てられる 情報源 ES&T Science News - March 12, 2008 Toxic TVs headed for trash When U.S. airwaves go digital next year, people may throw out millions of analog TVs containing up to 8 pounds of lead each. But research on the environmental effects of junked TVs sends mixed signals. http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2008/mar/science/ee_digitaltv.html 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2008年3月21日 来年の米テレビ放送ディジタル化で、最大4キロ近くの鉛を含む数百万台のブラウン管テレビが廃棄される。廃棄テレビの環境影響に関する研究は混信した情報を発信している。 アメリカ中で、どの位多くの古いブラウン管テレビがガレージや地下室で埃をかぶっているか誰も知らないが、テレビはディジタル化され、アナログ・テレビ(ブラウン管テレビ)が消滅しようとしていることは明らかである。 多くの古いテレビが埋め立て場行きとなり、ひどい場合には道路わきに棄てられる。2009年2月17日、1939年以来、動画を伝送していた電波放送がなくなる。議会はテレビ放送の完全ディジタル化への切り替えを承認したので、電波放送に依存してテレビを観ていた人々は新たにディジタル・テレビを購入するか、40〜70ドル(4,000〜7,000円)でコンバータを買うための政府支給の購入券を買わなくてはならない。 この切り替えについて、いくつかの環境団体は、もし数百万の家庭が新たな(ディジタル)テレビを購入することに決めたなら、廃棄される(アナログ)テレビはどこに行くのであろうかと心配している。 ”人々は、テレビは寿命が来るまで使うということが常であった”と非営利団体である使用済み電子機器回収連合(Electronics TakeBack Coalition)の全国コーディネータのバーバラ・カイルは述べた。”しかし、これは古いテレビを新しいテレビに買い替えることを強制するものである”。 ケーブルテレビや衛星テレビのユーザーはこの切り替えに気がつかないであろうが、非営利の消費者連盟(Consumers Union)は、2,300万人の人々がコンバーターか新たなテレビを必要とするであろうと推定している。非営利団体であるPIRG(公益研究グループ)によれば、彼らの覆面調査員は小売業者が消費者に新しく買い替える選択を誘導していることを見つけているので、多くの人々はコンバーターではなくディジタル・テレビを購入するであろうとしている。 ほとんどのアナログ・テレビはブラウン管(CRT)を使用しており、それぞれのブラウン管は発生するX線をブロックするために4〜8ポンド(2〜4キロ)の鉛を含んでいる。 ティム・タウンゼンドは、フロリダ州がブラウン管テレビを有害廃物であると分類することを検討し始めた10年以上前にテレビの埋め立て処分で何が起こるかの研究を開始した。”人々はブラウン管テレビに鉛が含まれていることを知り、それらが投棄されていることを知っている”と彼は述べている。しかし、それらが危険を及ぼすかどかについてだれも知らない。フロリダ大学の技師であるタウンゼンドは、埋立地の滲出水からどの位の鉛が漏れるのかを知るために、彼の研究室でブラウン管を壊し、米EPAによって設計されたテストを実施した。コーヒー中のコーヒー滓のようなものである”と彼は述べている。 ES&T (2000, 34, 4376-4381)に発表されたブラウン管に関する彼の最初のテストは、EPAの許容値である5mg/L をはるかに超える平均で約18mg/Lの鉛が滲出するという問題を明らかにした。この発見に一部基づいて、EPAはブラウン管を有害廃棄物であると法的に分類した。しかし家庭から排出されるブラウン管は適用を除外したので、多くの州で市民はテレビを埋め立て地に投棄することができる。 このEPAテトは最悪のケースの結果を導き出したとタウンゼンドは述べている。彼の後のテスト結果は、現実的な埋立場の条件の下では、ブラウン管からの鉛滲出はもっと少ないことを示した。実際の埋立場滲出液の鉛レベルはEPAレベルより低いことを示した。彼は現在、彼自身が作ったホームメイドの埋立場から得たデータを分析している。 タウンゼンドは彼の研究が両サイドの主張を支持するのに用いられていることを知っている。一方では、テレビはしばしば多くの鉛を滲出することはないと彼は述べている。”しかしそれらをリサイクルして、埋立はしない方がよい”と彼は付け加えた。埋立場からの浸出液は処理されるべきであり、リサイクルすれば世界の他の土地でもっと多くの鉛が埋められるのを防ぐことができる”。 今日の薄型液晶テレビやプラズマ・テレビも新たな環境問題を起こす可能性があるとタウンゼンドは付け加えた。LCDランプは水銀を含んでおり、環境中で液晶がどのような問題を引き起こすかを誰も確かには知らない。さらに、全てのテレビは回路基板に鉛ハンダを含んでいる。タウンゼンドの最初のテストは、液晶ランプが有害廃棄物であると認定するに十分な水銀の滲出を見いださなかったが、どのような重金属にも懸念がある。 テレビやその他の電子機器を埋立しないようにするために、電子機器回収連合(Electronics TakeBack Coalition)はテレビ製造者に回収プログラムを確立するよう圧力をかけている。現在までのところ、ソニーはアメリカで唯一回収を行っている製造者である。 市や州もまた、リサイクル・プログラムの寄せ集めをやっており、それらはコストや便利さが異なる。例えば、ワシントンDCでは、住民は無料排出を年に二日間だけ−市当局は毎週にしようと考えているが−に限定されているので、その日以外は回収業者に45ドル(約5000円)払って出さなくてはならない。アメリカの住民は、毎年多くのテレビを含んで2,300万ポンド(約1万トン)の電子機器を非営利企業のグッドウィルに寄付していると広報担当クリスチン・ニールジェシ・ブラゲルは述べている。低所得者層にディジタル化への切り替えについて教育していると述べつつ、”我々は来年及びそれ以降、テレビの殺到を予想している”と彼女は述べている。 エリカ・エンゲルハウプ(ERIKA ENGELHAUPT) 訳注:日本の現状 ■廃家電/エアコン、テレビ、冷蔵冷凍庫、洗濯機 (家電リサイクル法)
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