Beyond Pesticides 2006年9月19日
アメリカはモントリオール議定書で規制されている
臭化メチルを大量に備蓄


情報源:Beyond Pesticides Daily News, September 19, 2006
U.S. Stockpiles Chemical Banned by United Nations
http://www.beyondpesticides.org/news/daily_news_archive/2006/09_19_06.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html

掲載日:2006年9月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_06/06_09/060919_bp_methyl_bromide.html


訳注:出典 EPA(The Phaseout of Methyl Bromide)
 最近、米EPAによって公表された文書により、アメリカが農業に使用している有毒ガスであり、また有力なオゾン層破壊物質である臭化メチル(訳注1)が約1万トン備蓄されていることが判明した。国連のモントリオール議定書(訳注2)で規制されている臭化メチル(すぐに代替品が見つからない場合は除く(訳注3))はアメリカの農民の不可欠消費量の1年分以上の在庫があるにもかかわらず、アメリカで製造され続けている。(訳注4:2005年の不可欠用途消費量:アメリカ:8,942トン、日本:284トン)

 議定書批准国が2008年の割当量を決めるために10月にニューデリーに参集する時に、1987年に同議定書が調印されて以来初めて他国がアメリカの備蓄量を知ることになる。ブッシュ大統領は2008年に臭化メチルを1,400万ポンド(約6,400トン)使用することの承認を国連に求めていると言われている。

 アメリカ、特にフロリダ州とカリフォルニア州で最も激しく使用されている臭化メチルは土壌中に注入されて様々な虫を殺す。アメリカで臭化メチルを製造する唯一の会社ケムツラ社の燻蒸剤問題マネージャー、デービッド・マックアリスターは、1年分以上の備蓄を持つことについて、”予測できない壊滅的な供給中断や、ある種の害虫の大発生に備えて必要であると主張する。なぜアメリカの農作物栽培者が備蓄にそのように依存するのかについて、マックアリスターは、”明らかに技術的及び経済的に実現可能な代替が入手できるなら、栽培者らはそれを使用するようになるであろう”−と述べた。

 備蓄は1991年以来75%減少したが、アメリカは依然として臭化メチルの最大の使用者であり、他国では数か月分の備蓄になってから製造している。このデータを公表させるために2年間活動してきた天然資源防衛協議会(NRDC)によれば、特に議定書は全ての国が”可能な限り備蓄を少なくすべき”と述べているのだから、そのように大量の備蓄を持つことを正当化することは絶対にできない。
 NRDC の政策ディレクター、デービッド D. ドニガーは、”EPAはどの位の備蓄があるのかを隠してきたので、他の国は、備蓄がたくさんあるのだから、それから使えと言うことができなかった”−と述べた。EPAは、現在明らかになった備蓄量が、2008年にアメリカが製造することを許される臭化メチルの量を最終的に減らすことになる可能性についてコメントしなかった。

 この新たに発表されたデータにより、国連は臭化メチルの製造を削減するようアメリカに圧力をかけるかもしれないが、ブッシュ政権は彼らの目標に執着するように見える。ブッシュ政権は、2004年に臭化メチルをモントリオール議定書から完全に除外するという提案を行ったことを含んで、環境への取組に対する積極的な関与に欠けると批判されてきた。


訳注:日本に関する資料

 訳注1
リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート/ブロモメタン(別名:臭化メチル)(環境省)

 訳注2
ウィーン条約/モントリオール議定書(外務省)

 訳注3
環境省報道発表平成16年3月29日/モントリオール議定書特別締約国会合の結果について
不可欠用途臭化メチルの管理戦略(環境省)

 訳注4
有力なオゾン層破壊物質である臭化メチルはモントリオール議定書で2005年までに全廃のはずであったが、代替物質がない場合には不可欠用途申請ができる。
2005年の不可欠用途消費量:アメリカ:8,942トン、日本:284トン(訳注3の環境省報道資料による



化学物質問題市民研究会
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