EHP 2006年7月号 Forum
子宮内膜症と PCB 暴露 情報源:Environmental Health Perspectives Volume 114, Number 7, July 2006 Endometriosis and PCB Exposure http://www.ehponline.org/docs/2006/114-7/forum.html#endo 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2006年7月1日 『Chemosphere(化学物質分野)』2006年5月号に発表された研究によれば、子宮内膜症は、ポリ塩化ビフェニール(PCB)のような残留性汚染物質への暴露に関連するかもしれない。この不妊症と関連する婦人病はアメリカの生殖可能年齢の女性の10%を悩ませている。研究者らは子宮内膜症又はその他の婦人病の疑いで検査を行っている女性たちの血中 PCB 濃度を測定した。組織学的に子宮内膜症であると確認れた女性の PCB類の血中レベルはコントロール群の女性に比べて高かった。 ローマにある Istituto Superiore di Sanita の毒物学者エレーナ・デ・フェリプと彼女の同僚らは、ヒトの組織中に最も多い 11種の PCB の同属(congeners)を測定した。20歳〜40歳までの女性80人の中で、子宮内膜症の診断のある40名の女性は全ての同属の合計がコントロール群より1.8倍高かった。3つの同属である PCBs 138、153、180 は子宮内膜症の女性に特に高かった。これら3つの同属は女性ホルモン様作用を持ち、ホルモン制御プロセスを妨げると報告されている。 PCB類は1930年代から主に電気機器で使用されてきた。現在では最早製造されていないが、これら残留性の化学物質は食物連鎖中に蓄積し、今日では、肉、魚、卵、及びミルクが PCB類の主な経路である。しかし、女性の食事習慣は基本的には同じなので、食事では二つの女性グループで検出されたPCBレベルの相違を説明することはできない−とデ・フェリプは述べている。 デ・フェリプは、女性がどのように解毒し、PCB類を体内から除去するかの違いが両グループの相違を説明するかもしれないと考えている。これらのプロセスには様々な酵素が介在している。したがって、体内毒性動態(toxicokinetic)作用の相違は、子宮内膜症の女性がより高い濃度で検出されるベースをあらわしているかも知れず、また、この病気への罹りやすさがより高い又はより低いことに関連しているのかも知れない。 PCB類と子宮内膜症の研究はいくつかの限界に直面している。研究者らは一般的に、動物モデルで示されたがんとの関連性を含んで、その毒物学的作用のために選択されたいくつかの広く存在する同属だけを測定する。”したがって、我々は全体像の一部だけを見ている”−と国立子ども健康人間発達研究所疫学部門の主任、ブック・ルイスは述べている。 『Human Reproduction(ヒトの生殖)』2005年1月号に掲載された研究で、ブックのチームは子宮内膜症の検査を受けた84名の女性から82種の同属を測定した。4つの抗女性ホルモン様同属のレベルはコントロール群の女性より子宮内膜症の女性の方が3.77倍高かった。”我々は、女性ホルモン様及び抗女性ホルモン様PCB類の役割を完全には理解していない”−と彼女は述べているが、他の化学物質と同様に、多くのPCB類の複雑な相互作用が子宮内膜症の発症に関与しているかも知れない。 最近のPCB検出手法の進歩は、より低い濃度でより多くの同属を検出することを可能にしている。”子宮内膜症の女性は、他の女性には見つからない低レベルのある特定の同属を持っているかの知れない”−とルイスは述べている。さらに、授乳が女性のPCBレベルを下げるので、子宮内膜症ではない女性はよりしばしば妊娠し授乳するために PCB類の血中レベルが低いのかも知れない。”子宮内膜症のための理想的な比較グループはなく、容易な答えはない”−とルイスは述べている。 キャロル・ポテラ(Carol Potera) |