Beyond Pesticides 2006年7月21日
係争中の米法案により
公衆の健康と州の権利がリスクにさらされている

情報源:Beyond Pesticides Daily News, July 21, 2006
Public Health Protections and States' Rights at Risk with Pending U.S. Legislation
http://www.beyondpesticides.org/news/daily.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2006年7月30日



 米下院共和党議員らは有害化学物質に関する法律の議論ある修正案を11月の選挙前までに成立させようと急いでいる。世界で最も有害な農薬と化学物質の一部である残留性有機汚染物質(POPs)を廃止する世界条約をアメリカが批准するためには、アメリカの有害物質法を修正する必要がある。

 環境、公衆健康、及び労働運動の唱道者らは、ストックホルム条約(POPs条約)を実施するために審議中の現在の修正法案では実際にアメリカが同条約の下でその義務を果たすことは不可能であると述べている。これらの法案は、”同条約の下に世界的禁止を目指す新規の化学物質にアメリカが廃止に取り組むためにばかげたハードルを設けるものである”−と農薬行動計画(PAN)のプログラム担当クリスティン・シェイファーは述べている。”もし、それらが成立すると、アメリカは国際的社会から数年の遅れを取り、同条約の目標をひどく損なうこととなる。”

 議会が解散する前に急いで、FIFRA(殺虫剤殺菌剤殺鼠剤連邦法)の修正案 HR 3849 に関する下院農業委員会の聴聞会を今週木曜日7月20日に開催することが予定されている。

 もし、FIFRA POPs 法案が農業委員会を通過すると、それは下院議員ポール・ギルモア(共和党−オハイオ州選出)が提案している有害物質管理法(TSCA)の非常に議論ある修正法案 HR 4591 と一組にされるであろう。HR 4591 は、全米11州の司法長官、アメリカ看護士協会、米鉄鋼労連、及び60以上の公衆健康及び環境団体が積極的に反対している。ギルモアの法案はストックホルム条約の根底にある重要な概念である予防原則を無視しており、POPs 化学物質から人々を守る州の権限をあらかじめ阻止にすることにより、危険な先例を作ろうとするものである。HR 4591 は、党派の方針に沿って意見が分かれ、7月12日の委員会の投票で採択された(訳注1)。

 木曜日の聴聞会でたった一人証言することが予定されている EPA 長官ステファン・ジョンソンは、最近、EPA の科学者が人体実験に関し、また、20以上の有害な農薬を適切な科学的検証をしないで承認を早める事に関し、農薬産業側に便宜を図ったことで非難されている(訳注2)。EPA の科学的健全性が問題にされている状況では、FIFRA POPs 法案 (HR 3849) 成立すれば、POPs 条約に新たな化学物質を加えることに関する国際的な公衆健康専門家、科学者及び政策専門家の結論を EPA は無視することが可能となる。

 ”農薬は EPA の規制の理想郷の中で長年の間に勢いをなくしてきたが、それでも危険な化学物質が市場に出ており公衆の健康を脅かしている”−とビヨンド・ペスティサイドの代表ジェイ・フェルドマンは述べている。”EPA は、この法案では無視されているプロセスである世界が高度に危険であり危害をもたらすと認めた化学物質に関する検証の手法を確立する必要がある。”

 残留性有機汚染物質 POPs は、環境中に残留し、我々の体内に蓄積し、地球上の大気や水を現在汚染している有害化学物質である。同条約の下に、ダイオキシン類、DDT、PCB類のような悪名高い12の化学物質が最初の廃止リストに挙げられている。さらに5つの化学物質が候補に挙げられており、すでに厳格な国際的な科学的検証プロセスを通じて評価されている。

 数十年間、EPA が検証を行っている農薬の例は、それぞれ、12年、17年、26年に及ぶ除草剤アトラジン(特別検証1994年から暫定登録2006年)、除草剤2,4-D(特別検証1988年から再登録登録完了2005年)、及び木材防腐剤ペンタクロロフェノール(特別検証1978年から予備的リスク評価2004年)があり、 ペンタクロロフェノール,ヘキサクロロベンゼン及びダイオキシンの”潜在的なリスクについて EPA が結論を出すには早すぎる”とい結論を EPA が2005年に出すにいたった(訳注3)。

 ストックホルム条約の次回の会議は2007年5月に開催される。一方、127か国が同条約を批准している。HR 3849 は下院議員フランク D. ルーカス(共和党−オクラホマ州)とコリン・パターソン(共和党−ミネソタ州)によって共同提案されている。法案の Expedited markup は、議会が夏休みに入る前の7月31日以前になされることが予測される。

インタビュー受付:
Kristin Schafer, Pesticide Action Network North America
http://www.panna.org
Jay Feldman, Beyond Pesticides
Andy Igrejas, National Environmental Trust
Daryl Ditz, Ph.D., Senior Policy Advisor, Center for International Environmental Law
http://www.ciel.org

For further information:
Global Treaty Targets Dangerous Pollutants
POPs Ratification Working Group
Stockholm Convention official site
EPA Scientists Protest Pending Pesticide Approvals, Public Employees for Environmental Responsibility Press Release


訳注1:
米上院委員会 POPs条約等の批准を可能にする法案を承認/民主党、環境グループはこの法案ではPOPs管理はできないと反対(当研究会訳)

曇天に青空のチャンスはあるか? アメリカの化学物質政策の改革の予測(当研究会訳)

訳注2:
PEER プレスリリース 2006年5月25日/EPA の科学者らが係争中の農薬承認に反対:容認できない子どもたちへのリスク及び科学者らへの政治的圧力を非難(当研究会訳)

訳注3:
IN THE UNITED STATES DISTRICT COURT FOR THE DISTRICT OF COLUMBIA



化学物質問題市民研究会
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