EHP 2006年3月号 Correspondence
遺伝子組み換え食品の危険性 チャールス・マーグリスからの手紙(CFS) 情報源:Environmental Health Perspectives Volume 114, Number 3, March 2006 The Hazards of Genetically Engineered Foods Letter from Charles Margulis, Center for Food Safety (CFS), San Francisco, California http://www.ehponline.org/docs/2006/8602/letter.html 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2006年3月2日 参照:遺伝子組み換え食品:不確実性を作り出す/チャールス W. シュミット Genetically Modified Foods: Breeding Uncertainty by Charles W. Schmidt Environmental Health Perspectives Volume 113, Number 8, August 2005 / Focus http://www.ehponline.org/docs/2005/113-8/focus-abs.html ”遺伝子組み換え食品:不確実性を作り出す(Schmidt 2005)は、この新技術の持つ環境と健康へのリスクについての多くの深刻な懸念を見落としている。遺伝子組み換え作物に用いられる抗生物質耐性の遺伝子による潜在的な問題、遺伝子組み換えプロセスの意図しない影響によるリスク、遺伝子接合品種の広範な植え付けから生ずる農薬使用の増加−など、さらにはその他のいくつかの懸念は、冗長な記事の中で無視され、又はほとんど述べられていない。この件に関するさらなる情報は食品安全センターで入手できる(CFS 2000, 2004)。 シュミット(Schmidt 2005)の記事は、”GM農業は永久である”と述べ、安全と規制の問題は産業と政府により適切に対応されているという誤った印象を読者に与えているが、これは真実ではない。例えば、遺伝子組み換え食品によるアレルギーのリスクに関し、バイオテク会社は最も普通のアレルゲンによる遺伝子を避けることによりアレルギーの問題を回避しているとシュミットは述べた。しかし、『New England Journal of Medicine』の中でネッスル(Nestle 1996)はこのアプローチは、多くの不確実性を残すと指摘している:
シュミット(Schmidt 2005)は、アレルゲン導入の可能性を警告したある論文が1993年に出た後はバイオテク産業はより良い審査法を開発し、アレルゲン・フリーであるとみなすことができない品種は廃棄することを学んだと断言している。この研究が出てから5年後、リスクのある新しい一品種の破棄をせず、産業側は、人々にアレルギーを引き起こすかもしれないという警告の兆候があったにもかかわらず、新たな遺伝子組み換えトウモロコシの一品種を市場に出した。それは非食品用途としてのみ登録されたにもかかわらず、スターリンク(StarLink)と呼ばれるこの組み換えトウモロコシは、全米のスーパーマーケットで売られている数百の食品を汚染し、産業側と農家は浄化のために数億ドル(数百億円)を出費した。アベンティス社は、スターリンク汚染のために市場を失った農家を補償するために1.1億ドル(約120億円)を支払ったが、アナリストは農家、食品加工者、穀物取引者の損失のために同社はさらに5億ドル(550億円)の出費があったと見積もっている(Harl 2003; Jacobs 2003)。 このことや、Gillis (2002), Nichols (2002), and Greenpeace (2005)などによって報告されている汚染事件にもかかわらず、バイオテク産業は、潜在的なアレルギー性又はその他の食品安全性が全く評価されたことがない遺伝子組み換え薬事作物(実験用薬剤又は産業用たんぱく質を製造するための組み換え作物)のための開放型畑を増加し続けた。 シュミットらはまた、遺伝子組み換え食品に対する食品医薬品局(FDA)のアプローチについての科学的懸念を無視した。マイルストーンら(Millstone et al. 1999)は、FDAが遺伝子組み換え食品を評価するために用いる”実質的同等”の考え方を、”生物化学的及び毒物学的テストを要求しないことの言い訳をするために作り出された、本質的に非化学的”な概念であるとして、批判した。『Nature Biotechnology』で発表された手紙の中で、シェンケラーズ(Schenkelaars 2002)もまた、その概念を批判し、もっと適切なテスト手法なら、”毒物学的、免疫学的、又は栄養学的な懸念であるかもしれない変化など、・・・GM作物の成分中の意図しない変化を体系的に検出”するであろうということを指摘した。FDAを訴えた食品安全センター(Center for Food Safety (CFS))の訴訟で、FDA中のトップレベルの科学者らの文書が明らかにされたが、彼らはFDAの同等ベース政策は遺伝子組み換え食品中のこれら非意図的な変化を守るためには不適切であると警告した(Alliance for Biointegrity 2004)。 有益であるとうわさのある遺伝子組み換え品種は、食糧生産と環境の利益を証拠として示している他の農業アプローチとも比較して検証されるべきである。シュミット(Schmidt 2005)は、最近、中国の数十の農場で見た遺伝子組み換え米の畑での試作の研究を引用した。しかし、コメ生産に関するかつてない最大規模の調査のひとつにおいて、研究者らは農業生態学的手法を採用している数千の中国の農家が、彼らが最もよく使用していた農薬類のいくつかを完全に排除しても、収穫を89%増加させたことを報告した。他の大規模プロジェクトは、生態学的技術を用いた数千の中国農家が、高価で特許で縛られている遺伝子組み換え種子は使用せずに、著しく農薬使用を削減したことを示した(Yanqing 2002)。 最後にシュミット(Schmidt 2005)は、開発途上国において彼らの特許登録された種子を保護するための産業側の計画についての彼の疑問に答えが得られなかったと主張している。しかし、その答えは既に1998年に出ている。すなわち、家族農業推進者らが遺伝子組み換え品種を種子再利用不能にする産業側の”ターミネータ遺伝子”のバイオ技術を曝露した時である(Rural Advancement Foundation International 1998)。このターミネータ技術は開発途上国の農民が遺伝子組み換え種子を再利用できないようにするために開発されたものである(ETC Group 2002)。家族農業推進者らは同様な20以上の再利用不能種子の産業側特許を明らかにした(Rural Advancement Foundation International 1999)。この技術は、日々の食糧の必要のために貯蔵種子に依存する14億人以上の人々の生活を脅かすだけでなく、かつて”世界への食糧供給”を約束した遺伝子技術産業によって市場寡占がもたらされようとしている。 著者は、有害な食品製造技術に挑戦し持続可能な代替を推進する目的で設立された非営利の公衆の利益と環境を守る会員組織であるCenter for Food Safety に雇用されている。 Charles Margulis Center for Food Safety San Francisco, California E-mail: cmargulis@icta.org 訳注(参考資料) ターミネーターのからくり/非科学者のための、作物の第二次世代種子を抹殺する恐るべき特許の説明 References Alliance for Biointegrity. 2004. 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