ES&T 2006年3月8日
アメリカ女性の5人に1人 頭髪の水銀濃度がEPA基準値を超える 全米水銀頭髪調査プロジェクト暫定報告 情報源:Environmental Science & Technology: Science News - March 8, 2006 One in five U.S. women has high mercury levels http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2006/mar/science/pp_mercury.html 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2006年3月15日 全国水銀頭髪調査の予備的結果が、魚を摂取する女性はEPAの水銀基準を超えていることを示した。 本年2月に環境品質研究所(Environmental Quality Institute)は、全米水銀頭髪調査プロジェクトに関する暫定結果を報告したが、それは母親になる可能性のある女性に懸念を及ぼすものである。 ![]() 同研究所の共同代表であるノースカロライナ大学アッシュビル校のスティーブン・パッチによって率いられたグループにより書かれたこの報告書は、妊娠可能年齢の女性の20%強が、アメリカ環境保護庁(EPA)の勧告基準である髪の毛 1グラム当り水銀 1μg(μg/g)という値よりも高い濃度であることが分かった。女性より多くの男性が高い水銀レベルであったが、妊娠中の水銀への曝露は子どもの神経学的異常を引き起こすということを示す研究があるので、専門家らは妊娠可能年齢の女性についてより多く心配している。 現在までのところ、パッチと彼の同僚らは、6,500人以上のボランティアから得た髪の毛のサンプルをテストした。研究者らは、彼らのデータが”毛髪中の水銀と魚介類の消費量との間には一貫した強い関係があることを示している”−と述べている。 約2,800のサンプルを16歳から49歳までの女性から入手したが、5人に1人の水銀レベルは 1μg/g 以上であった。同じ年齢グループの男性900人のうち約30%が同様なレベルを示した。この調査では、髪の毛の水銀レベルと、水銀を含む歯科用アマルガムとの間の関連は見出されなかった。この調査は参加者を募集した環境団体の支援により行われた。 訳注1:(参考資料)EHP 2006年2月号 フォーカス/神経系発達に関する新たな考察(当研究会訳) 現在の米環境保護庁(EPA)のメチル水銀(有機有毒水銀)の参照用量は、0.1μg/kg/day である。人はメチル水銀に対し、主に汚染された魚を食することで曝露する。この汚染の70%以上は、石炭焚き火力発電所からの排出のような人為的汚染源からのものである。子宮中でのメチル水銀への高濃度曝露は、精神遅滞、脳性麻痺、発作、聴覚障害、視覚障害、言語障害などを含む多くの障害に関連している。『環境健康展望(EHP)』2005年5月号の記事は、アメリカにおけるメチル水銀の有毒性に起因する経済的コスト(生産性の損失)は年間87億ドル(約9,600億円)であるとしている。 訳注2:報告書中のデータの一部の紹介 表1 今回の調査とNHANES 1999-2000 調査の魚の消費量比較(16歳〜49歳までの女性) 魚消費カテゴリー:ひと月に摂取する回数
表2 推定中央値(95%信頼区間)、EPA毛髪中水銀基準値 1.0μg/g を超える 推定パーセンテージ(標準誤差)、年齢カテゴリー別、性別、及び魚摂取量による重み
訳注3:日本の水銀問題についての状況 1.メチル水銀と魚について ■魚介類等に含まれるメチル水銀について/厚生労働省2005年8月 ■妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて 【Q&A】(平成17年11月2日)/厚生労働省 各ページに「本注意事項については、いわゆる風評被害が生じることのないよう正確な御理解をよろしくお願いします」との注意書きがある。業界の方ばかり気にして、人の健康を最優先にしているようには見えない。 ■毎日新聞2003年10月27日 妊婦向け水銀含有7種 厚労省なぜマグロ除外 鉄火丼週1回で基準超す? 委員、水産業界の影響考慮 微量汚染 「議論は霧の中」 厚生労働省は今年(2003年)6月、水銀を含む魚介類等の「摂取注意事項」を発表した。水銀は元々火山ガスなどに含まれており、海など自然界にある。マグロなど大型魚の含有量は多く、近年は微量な水銀による胎児の脳への影響を指摘する研究報告があり、各国で妊婦や乳児への摂取制限の動きが広がっている。ところが、同省薬事・食品衛生審議会の乳肉水産食品・毒性合同部会は、マグロを注意7種の中に入れなかった。さらに、妊婦の摂取許容量の根拠の一つにした国際基準が、発表直後に変更された。「注意事項」の妥当性が揺らいでいるのだ。 ■毎日新聞2003年6月4日 メカジキなど7種類 「水銀が胎児に影響」 厚労省部会 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会乳肉水産食品・毒性合同部会は3日、メカジキやキンメダイなど7種類の魚やクジラ類について「人の健康、特に胎児に影響を放ぼす恐れがある高いレベルの水銀を含んでいる」として、妊婦が食べる際は一定量以下に抑えることが望ましいとする注意事項をまとめた。同省はホームページで情報提供する方針で、国が特定の魚などを指定して摂食指導をするのは初めて。 注意事項はこれまでに行われた魚介類の水銀濃度に関するデータを基に、妊娠かその可能性がある人は▽バンドウイルカは1回60〜80gとして2カ月に1回以下▽ツチクジラ、コピレゴンドウ、マッコウクジラ、サメ(筋肉)は同週1回以下▽メカジキ、キンメダイは同週2回以下−に摂食を抑えることが望ましいとしている。 2.自閉症とチメロサールについて ■チメロサールとワクチンについて/横浜市衛生研究所感染症・疫学情報課 「チメロサールとワクチン」および「メチル水銀と魚」の二つの話題についてわかりやすく解説している。 ■自閉症における水銀・チメロサールの関与に関する声明/日本小児神経学会、日本小児精神神経学会、日本小児心身医学会 自閉症における水銀・チメロサールの関与はないとしている。 |