EWG in the News, December 15, 2005
テフロン化学物質
デュポン−EPA 危険報告義務違反訴訟
史上最高の過料で和解


情報源:EWG in the News, December 15, 2005
DuPont, EPA Settle Chemical Complaint Firm Didn't Report Risks, Agency Says
http://www.ewg.org/news/story.php?id=4847

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2005年12月19日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_05/05_12/05_12_15_EWG.html


 米環境保護局(EPA)は、デュポン社のテフロン製造に用いられる化学成分パーフルオロオクタン酸(PFOA)に関する可能性ある健康リスクの報告義務違反の件で、同社に1,650万ドル(約18億円)の罰金を科すことで、昨日和解した。EPAがかつて得た最高額のこの民事過料は、1,025億円(約11億円)の罰金と、デュポンによる環境プロジェクトへの保証金625万ドル(約7億円)からなる。EPA環境上訴審の承認を条件とするこの合意は、1981年以来、PFOAとして知られる化学物質についてデュポンが政府に証拠を引き渡さなかったことに対する説明責任を16ヶ月にわたってEPAがデュポンに要求していたことが終了することを意味する。その証拠書類は、こげつき防止(テフロン)や防汚物質の製造に用いられるこの成分が、胎盤を通って母親から胎児に伝わり得ることを示すものであった。他の研究は、この物質を吸引したラットが死んだことを示していた。

 ”この和解は、企業は自分達の化学物質に関連するリスク情報についてEPAに速やかに連絡する責任があるという強いメッセージを伝えるものである。これは民事訴訟では空前の罰金である”−とEPAの法律実施順守保証室の副室長グランタ Y. ナカヤマは述べた。

 合意の一部として法的義務を認めないデュポンの担当者は、彼らは故意に政府への情報を留めておいたわけではなく、長く金のかかる法廷闘争を回避するというだけの理由でEPAとの調停に応じたと述べた。EPAは、最大3億1,300万ドル(約344億円)の罰金を科すこともできた。
 EPAがかつて科したことのある最大の罰金は、1994年のテネシー・ガス・パイプライン社への640万ドル(約7億円)である。

 ”実際のところ、我々はこれを法廷で争うこともできたし、私の部下の何人かは、我々は何も悪いことをしていないのだからそうすべきであると考えていた。しかし我々はこのことは済んだこととして忘れ、前に進む。我々はEPAが何を望むのかについての指針が必要である。和解したのだからこれ以上話すことはない”とデュポン社の副社長ステイシー J. モブレーは述べた。

 和解の一部として、同社は今後3年間にわたり、ウェスト・バージニア州ウッド郡の学校におけるある化学物質が及ぼすリスク削減のための”グリーン・ケミストリー”プロジェクトに125万ドル(約1億4,000万円)、そしてデュポン社製品9種類が経年とともにPFOAに分解するかどうかを測定するために500万ドル(約5億5,000万円)を提供することに合意した。

 デュポン社は今年、同社のウェスト・バージニア州パーカースプリング工場の近くのオハイオ州とウェスト・バージニア州の飲料水をPFOAで汚染したとして訴えられていた集団訴訟を和解したばかりであった。司法省はまだ刑事上の捜査を行うかもしれない。

 EPAはPFOAがヒトの健康に健康リスクを及ぼすかどうか、そして規制されるべきかどうか検討中である。この化学物質は動物実験ではがんと先天性障害に関連があり、EPAの科学諮問委員会は、まもなくヒトへの発がん性が”あり得る(possible)”、又は”あるらしい(likely)”とみなすかどうか発表することになっている。


(訳注):EPA独立科学委員会は2005年6月にデュポン社のテフロン化学物質 PFOAは”ヒト発がん性であるらしい(ikely human carcinogen)”とEPAに報告している。
EWG プレスリリース 2005/06/28 テフロン化学物質 PFOA は”ヒト発がん性であるらしい”とEPA独立科学委員会がEPAに報告書(当研究会訳)
(訳注):EPAの発がん性分類
Guidelines for Carcinogen Risk Assessment and Supplemental Guidance for Assessing Susceptibility from Early-Life Exposure to Carcinogens
Guidelines for Carcinogen Risk Assessment Page 2-54 (PDF, 166p, 461K)

 ”ヒト発がん性である”(Carcinogenic to Humans)
 ”ヒト発がん性であるらしい”(Likely to be Carcinogenic to Humans)
 ”ヒト発がん性がありそうな証拠がある(Suggestive Evidence of Carcinogenic Potential)
 ”ヒト発がん性があると推定するにはデータ不適切”
 (Data are Inadequate for an Assessment of Human Carcinogenic Potential)


 EPAの農薬有毒物質防止室の主席副室長スーザン・ハゼンは、PFOAへの曝露経路についてもっと良く知るためにさらなる調査が重要であると述べた。彼女は、いくつかの動物実験がこの物質が健康リスクに関連しているということを示唆しているが、EPAとしては現時点では著しいヒトへの健康影響があると信じる理由はないと述べた。

 巨大化学会社に対する行動をEPAに取らせることとなった発端の情報をEPAに与えたエンバイロンメンタル・ワーキング・グループの代表ケニス A. クックは、罰金の額はデュポンが公衆から得ている利益の内のわずかな一部分であると述べた。彼は、罰金の額は過去20年間にわたりテフロン関連製品から得た税引き後の利益の1%の半分以下であると述べた。

 ”250億ドル(約2兆8,000億円)企業が数十年間にわたって、現在、アメリカの全ての男性、女性、子どもを汚染している有毒化学物質についての重要な健康情報を隠していたことに対する適切な罰金はいくらであろうか?”とクックは述べている。”決して分解するこがなく、現在、北極のホッキョククマやヒトの母親の子宮内にすら入り込んでいることが見出される汚染物質の罰金はいくらになるのか?”

 ”だれでもが非常に軟弱であることを知っているアメリカの法律の下において、たとえ過去最高額であっとしても、それは1,600万ドル(約(約18億円)というわずかな金額では決してないと我々は確信している”と彼は述べた。。

 デュポンの株価の昨日の終値は10セント安の43.18ドル(約4750円)であった。

ジュリエット・エイルパーリン(Juliet Eilperin)


■関連記事(訳注)


■化審法等での取り扱い(訳注)


化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
 日本の化審法では PFOS と PFOA は第二種監視化学物質(既存、新規化学物質、難分解性あり、高蓄積性なし、人への長期毒性の疑いあり)に、2002年12月26日に指定されています。
NO.官報告示番号CAS官報告示名指定年月日備考(当研究会調べ)
6812-1595 ペルフルオロオクタンスルホン酸2002/12/26CAS No.1763-23-1
6822-2659 ペルフルオロオクタン酸2002/12/26CAS No.335-67-1

特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR 法)
 PRTR 法の第一種指定化学物質/第一種指定化学物質に PFOSと PFOA の指定はありません。

官民連携既存化学物質安全性情報収集・発信プログラム(Japan チャレンジプログラム)
 2005年6月に厚生労働省、経済産業省、環境省によって立ち上げられたJapan チャレンジプログラムの優先情報収集対象物質リストにも PFOS と PFOA は挙げられていません。



化学物質問題市民研究会
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