麻薬撲滅のための除草剤空中散布
コロンビア政府 行政裁判所の停止命令を拒否


情報源:Environmental Health Perspectives Volume 112, Number 1 January 2004
Colombia Defies Court on Coca
http://ehp.niehs.nih.gov/docs/2004/112-1/forum.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2004年1月3日


 アメリカのコロンビアにおける麻薬撲滅作戦の一環として行われているグリホサートをベースとした除草剤の空中散布は、コロンビアの広大なコカイン栽培農場の多くを壊滅することに成功した。しかし、この除草剤空中散布作戦の批判者らは、環境と健康に与えた影響については十分に省みられていないと述べている。
致命的な破壊:農業へのダメージ、人間の健康への影響、法廷の命令にも関わらず、コロンビア政府は不法な麻薬栽培を撲滅するとして、除草剤の空中散布を続けている。(写真提供:Witness for Peace)
 そして、コロンビア第2の高等裁判所であるクンディナマルカ行政裁判所が2003年6月に、散布作戦は非常に危険であり、コロンビア政府が環境と健康への影響調査を実施するまで延期すべきと宣言したにもかかわらず、コロンビア政府はこの命令を拒否し、散布作戦を続行している。

 昨年、議会は州当局にコロンビアにおけるグリホサートの使用の評価についてアメリカ環境保護局(EPA)に相談するよう命じた。EPA の副長官ステファン L.ジョンソンは州当局に対し、アメリカでポピュラーな商業製品ラウンドアップに使用されているグリホサートには ”ひどい有害影響はない” が、コロンビアで使用されているグリホサート調剤は急性の目の炎症を引き起こすことがあると述べた。彼は散布を緩和する措置をとるよう示唆した。

 タフツ大学地球開発環境研究所のレイチェル・マッセイは、コロンビアで行われているような方法と大規模な散布の影響は未知であると主張した。さらに、コロンビア人の弁護士で現在カリフォルニア州オークランドにある ”環境保護のためのアメリカ大陸間連合” のアストリッド・プエンティスは、EPA はコロンビアで散布されている特定のグリホサートの混合液が EPA のラベル表示要件に準拠して使用されているということについて、議会が求めている様には、保証しない、と述べている。

 散布は固定翼機によって行われており、その結果、不正確な散布となっている。マッセイは、散布により、コカイン農場の近くで農作物を栽培するに農民にダメージを与えていると述べている。さらに彼女は散布が周辺の固有の生物種を殺しているとして、「その地域だけに生存する、珍しい、繊細な、貴重な生物種がある」と述べている。

 プエンティスは、散布が人間にも影響を与えていることを示す多くの証拠があると述べている。彼女の組織は、非政府組織、例えばコロンビアに事務所を持つ国際的人権団体である ”平和の立会人(Witness for Peace)” などから現地の情報と写真を受け取っている。「人々は、『皮膚の障害やその他の健康への影響を受けている。特に子どもたちが』と述べている」と彼女は語っている。

 プエンティスは、政府は裁判所の命令に従って散布を中止すべきであると主張する。彼女はさらに、政府は散布作戦による真の環境と健康への影響を調査しなくてはならないとして、「これらの調査を実施しないことに対する政府の言い訳の一つとして、コロンビアで現在、内戦が行われていることを挙げているが、そのことを理由に、政府には全ての無実の人々、特に子どもたちを傷つける権利はない。人間の健康と環境を守ることを政府は第一に行わななければならない」と彼女は述べている。

(リチャード・ダール Richard Dahl )


当研究会で翻訳紹介した下記レポートもご一読ください。
■アメリカによるコロンビアでのコカ栽培撲滅のための除草剤散布の危険性 (Environment News Service (ENS) October 1, 2002)
■農薬空中散布による麻薬撲滅作戦 大地と水を汚染する (Environment News Service (ENS) January 15, 2002)


化学物質問題市民研究会
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