電子廃棄物の爆発的増加(その4)
電子廃棄物の規制

情報源:Environmental Health Perspectives
Volume 110, Number 4, April 2002
e-Junk Explosion / Regulating e-Waste
Charles W. Schmidt
https://ehp.niehs.nih.gov/doi/epdf/10.1289/ehp.110-a188
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
https://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2002年10月20日
このページへのリンク:
https://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_02/02_10/e-junk-4.html



 アメリカでは電子廃棄物についての各州の対応は一貫性のない各種規制の下にばらばらであり、整合性の取れた戦略の必要性があると専門家は指摘している。
 例えば、ネブラフスカ州ではCRTの販売時に前もって将来の廃棄処理費を課しているが、マサチューセッツ州とカリフォルニア州ではCRTの廃棄処理そのものを禁じている。
 今後2年以内に欧州連合(EU)各国では、電子機器製造者に製品の処理費用を負担させるという「電気及び電子機器の廃棄に関する指令」を採用する。
 またこの法案と対をなす「有害物質制限法 Restriction on Hazardous Substances (ROHS) 」により電子機器製品中のいくつかの有害化学物質は使用することを禁じられる。

 どのようにアメリカの電子機器廃棄物を規制するかという問いに対する答えは、有害物質が廃棄物処分施設から環境に放出される程度についてどのように考えるかの議論にかかっている。
 環境中の有毒汚染物質の濃度と埋立処分場や焼却処分場における電子機器廃棄物との関連を明らかにすることはほとんど不可能である。
 法律立法者にとっては、この問題はつまるところ環境に放出する前に処分場でこれらの化学物質を除去することができるかどうかという、ポイントのずれた本質的ではない科学的議論に陥りやすい。
 電子機器産業側は、埋立処分場及び熱回収焼却場で環境に放出しないよう十分な措置が採られていると主張する。一方環境活動家はまさにその反対のことを主張する。

 現在、EPAは毒物特性浸出法(Toxicity Characteristic Leaching Procedure (TCLP))という手法を用いて、埋立処分場から排出される有害特性を測定している。このテスト法は当該物質をすり砕いて酢に似た酸性溶液に浸した後、その溶液を分析して化学物質の有害レベルを判定するというものである。
 もし、有害レベルが基準値よりも高ければ、その物質はそのテストで不合格とされ有害廃棄物とみなされる。

 ほとんどの人はTCLPが電子機器廃棄物に関係しているということについて知らない−とフロリダ大学環境科学技術の助教授ティモシー・タウンゼントは述べた。彼は実験室で時間をかけてコンピューターの破片をすりつぶし均一な粉にしてTCLPテストにかけた。彼の実験結果は、EPAがカラーCRTを有害廃棄物と判定する資料として使われた。
 彼は現在、コンピュータのすべてをTCLPテストにかけようとしているが、そのためにはコンピュータを完全に粉砕して、55ガロン・ドラム缶中のTCLPテスト溶液に浸すことになる。彼はコンピュータは、テストで不合格になるであろうと予想している。「コンピュータの回路基板には多くの(有毒な)鉛が半田として使われている。今年の夏までには結論が出ると思う。我々はさらに、携帯電話、VCR、個人用電子機器、ノートパソコンなどもテストする予定である。回路基板や鉛半田を持つ電子機器は全てテストで不合格になると思う」とタウンゼントは述べた。
 EPA有毒物質部門カルフォルニア支局も各種電子機器のTCLPテストを実施中であり、今春にもその結果が判明する予定である。

 電子機器産業界は、TCLPテストは実際の埋立場を反映しておらず、テストされる高濃度金属を含む浸出液が、実際の埋立場の浸出液と同じだとは言えない−と非難している。
 タウンゼンド助教授も実際の埋立場と同じ条件でテストする必要性があることは認めているが、埋立場が金属を浸出させやすい条件である強い酸性の状態になることは珍しくないと反論し、「いずれにしても、TCLP法が実情に合っていようがいまいが、唯一の法定テスト手法であり、その妥当性を調べる必要性があるかどうかは疑問だ」と述べた。

 この有害性を判定するというアメリカの手法について、ヨーロッパでは批判がある。EUの電気電子機器における特定有害物質使用制限指令(RoHS指令)では、電気電子機器製造者は2008年1月1日までに2つの臭化難燃剤、ポリ臭化ジフェニールエーテルとポリ臭化ビフェニールをその代替物質と置きかえることを求めている。さらにこれらの難燃剤に加えて、鉛、水銀、カドミウム、6価クロムなどの重金属もターゲットとしている。これらの代替物質が見つからなかった場合にのみ、例外的にその使用が許される。

 また、アメリカの産業界は欧州委員会(EC)の”予防原則手法”を攻撃している。バージニア州アーリントンにある商取引団体で、全米電子機器産業5,500億ドル(約66兆円))の約80%以上を代表する電子産業連合会(EIA)の環境部会長ホリー・エバンスによれば、アメリカの電子機器関連各会社は、EUの政策は電子機器中の化学物質が環境汚染と関連があるということを”リスク評価法”により証明していないとして憤慨している−と述べた。

(その5に続く)

(訳: 安間 武)



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る