アメリカ 2000年度 有害廃棄物発生量 36万トン増加
新たなダイオキシン データ 危険な汚染を示す 情報源:PIRG Newsroom, May 23, 2002 Toxic Waste Production Increased By Eight Billion Pounds In 2000: New Dioxin Data Show High Amounts Of Hazardous Pollution http://uspirg.org/uspirgnewsroom.asp?id2=7030&id3=USPIRGnewsroom& 掲載日:2002年5月26日 【ワシントン DC】 本日、アメリカ環境保護局(EPA)が発表したデータによれば、アメリカの産業が排出した有害廃棄物の量は2000年には25%以上増大した。 1986年、議会により”公衆の知る権利プログラム”の一環として制定された有害物質排出目録(TRI)のデータによれば、2000年には約380億ポンド(約170万トン)の有害廃棄物が発生し、それ以外に71億ポンド(320万トン)が直接、大気中、土中、水中に排出された。 ルイジアナ州は有害廃棄物発生量が全米一で90億ポンド(41万トン)、これは全米の有害廃棄物発生量の約4分の1に当たる。環境への直接排出ではネバダ州が全米一で、全米の直接排出量の14%を占めるが、これらの大部分は鉱山から排出されたものである。 公益擁護団体であるUS.PIRG(Public Interest Research Groups)の分析によれば、現在のブッシュ政権による環境保護を弱体化させる政策が有害化学物質による汚染の削減を妨げ、場合によってはむしろ汚染を悪化させている。 数十億ポンド(数百万トン)の有害化学物質が排出されているということは、市場から有害化学物質を取り除くことをほとんど不可能にするような現在の法規制のあり方に問題があるとPIRGは主張している。 「本日、示された数十億ポンド(数百万トン)の有害化学物質汚染と有害廃棄物が存在するという事実は、我々の意志決定者(政治家)に対し、有害化学物質の使用を廃止・、削減する法律が必要であるということを示すものである」とUS.PIRG の環境健康弁護士ジェラミア・バウマンは述べ、「それにもかかわらず、ブッシュ政権は環境と公衆の健康を守ることをせずに、企業がこのような有害化学物質を環境に排出することを許している」と付け加えた。 2000年に初めて、数千の施設が、ダイオキシンや水銀のように生態系に残留し、人間の体内に蓄積し、健康に非常に悪影響を与える化学物質の排出量を報告するよう義務づけられた。企業は、2000年にこれらの残留性化学物質を1,200万ポンド(約5,400トン)排出し、これらの化学物質を含む有害廃棄物を約7,200万ポンド(約3.3万トン)を出している。 「これではダイオキシンや水銀の様な化学物質汚染への曝露は保証されたようなものだ。これら数百万ポンド(数千トン)の有害汚染物質を排出したということは現在の主要な法規制に欠陥があるということを示している。化学物質はほとんどテストされないまま市場に出され、当局にはそれらを市場から取り除く能力がない」とブラウマンは述べた。 ”有害物質規制条例”は有害化学物質を市場へ出す前のテストを義務付けておらず、このことがEPAにとってこれらの物質を廃止・削減あるいは禁止することを難しくしている。 最近合意された国際条約により、残留性有害化学物質からきちんと保護するための科学ベースの手法が構築されるはずであった。しかしブッシュ政権は、ほんの一握りの化学物質だけに適用し、残りの残留性有害化学物質には適用しないというやり方でこの国際条約に対処するという提案を行っている。 今年の有害化学物質排出目録(TRI)の報告書には新たにダイオキシン、水銀、PCB類のような残留性生体蓄有害化学物質(PBT)に関するデータが加えられた。 ダイオキシンは塩素や塩素化合物を焼却あるいは使用するプロセス中で生成される猛毒の化学物質であり、強い発がん性があり、また生殖系、免疫系、神経系にダメージを与えると言われている。また単に有毒であると言うだけでなく、環境中で残留性があり、体内に蓄積し、世界保健機関(WHO)の推定によれば、安全であるといえる1日の摂取量は体重1キログラム当たり1〜4兆分の1グラム以下である。 汚染者達の報告によれば、495キログラムのダイオキシンが環境中に排出、あるいは有害廃棄物として生成され、そのうち100キログラムは大気中、水中、陸地に直接排出されている。 ブッシュ政権は長く待ちわびているダイオキシンの健康に対する脅威の最終評価の発行を遅らせているが、もしそれが発行されれば、ダイオキシンへの曝露からの保護を新たに開発するための第一歩となるはずであった。 水銀汚染もまた特に新たな汚染データとして目を引くものである。430万ポンド(190トン)の水銀と水銀化合物が環境中に排出され、490万ポンド(220トン)の水銀化合物が有害廃棄物として生成された。 比較までにあげると、スプーン1杯の水銀が毎年排出されると20エーカー(約80,000m2)の広さの湖の魚は食べるためには安全でなくなる。 US.PIRGとEWG(環境ワーキング・グループ)による2001年報告書によれば、魚はすでに相当汚染されており、妊婦の4人に1人は胎児に脅威を与えるレベルまで水銀に曝露している。ブッシュ政権の”空をきれいにする運動”では、現在の”大気浄化条例”を強化しても、その3倍の水銀汚染を許すことになる。 この新たな有害物質汚染データにより、地方の有害廃棄物汚染地域に関する不安が増幅することになる。何故なら多くの化学物質がこのように大量に環境中に排出されているということはすでに有害廃棄物汚染地域では問題になっていたからである。ブッシュ政権は、有害廃棄物汚染地域の清浄化”を進めるための資金として汚染者が支払う”汚染者税”制度を再度設けることに反対の姿勢である。むしろ、ブッシュ政権は納税者に清浄化の資金を負担させ、有害廃棄物汚染地域の清浄化作業を大いに遅らせている。 金属鉱業と電力が最大の汚染者であることが分かった。金属鉱業は34億ポンド(約150万トン)の有害化学物質を環境中に排出しており、これは全環境排出量の約半分の量である。電力は12億ポンド(約54万トン)の排出量である。 ブッシュ政権は、老朽化した発電所を改造する時には汚染防止装置を新たに設置しなければならないという”大気浄化条例”の要求を緩和するような提案をしている。このようなことになれば、発電所による大気汚染はますます増大することになる。さらに同政権は、水質浄化条例を緩和して鉱山の排水を河川に放出することを合法化することを提案している。 「毎年、数十億ポンド(数百万トン)の有害汚染物質が排出されていることが分かったが、ブッシュ政権は最悪の汚染者がさらに汚染することを許している」とバウマンは述べた。 有害物質排出目録(TRI)は環境中の有害危険物質の一部を反映しているに過ぎない。TRIは、原油井戸、空港、焼却炉など重大な汚染源を含んでいないし、製品中に存在する有害化学物質など、重大な曝露源も含んでいない。さらにTRIは市場に出回っている化学物質のほんの一部しか対象としていない。市場には80,000種類の化学物質が存在しているが、EPAとアメリカ化学協議会の調査によれば、各種有害物質法は必ずしも整合性がとれていないので、健康と環境に対する影響について基本的なチェックを行うために必要なデータが開示されていないものが90%以上をあるということである。 U.S. PIRG は意志決定者(政治家)に対し、ブッシュ政権の環境法の後退に反対し、有害危険化学物質に関するすべての情報について知る権利の拡大や製造者に危険な化学物質を使用させないなど、環境保護の施策に賛成するよう要請してきた。 U.S. PIRG は、各州のstate PIRG のロビー活動のための統一団体であり、非営利、非党派の公益擁護団体である。 (訳: 安間 武) |